TRUMPシリーズの最新作「COCOON 月の翳り星ひとつ」が開幕し、初日コメント、舞台写真が到着した(ネタバレあり。閲覧注意)。
「TRUMP」シリーズは、劇作家・末満健一がライフワークに掲げ、2009年より展開する作品。不死を失った吸血種《ヴァンプ》たちの絢爛な社交界を舞台に、永遠の命を持つとされる吸血種《トランプ》の不老不死伝説に翻弄されていくゴシック・サスペンスだ。
記念すべき10周年を飾るのは、「COCOON 月の翳り星ひとつ」。本作では「月の翳り」編・「星ひとつ」編という2作を同時期に交互に上演する。
<「COCOON」月の翳り・星ひとつ 初日コメント>
■安西慎太郎
舞台「COCOON」に出演致します、安西慎太郎です。
本日幕が開くということで、とてもワクワクしております。
今までたくさんの方に愛されてきたTRUMPシリーズがさらに愛されるよう務めていきたいと思っております。
TRUMPチーム一同最後まで全力で挑みます。
よろしくお願いいたします。
■宮崎秋人
月の翳りでエミール役、星ひとつでウル役を演じます宮崎秋人です。
2作同時上演ということで、なかなか大変な稽古期間ではありましたが、
末満さんの作品へ注ぐ思い、お客様の期待の高さを、強く感じたからここまでは来られたのかなと思います。
あとはカンパニーが一丸となって、末満さんが作ったこの物語で、劇場に足を運んでくださった方、ライブビューイングを観てくださる方の心を動かすのみです。
きっとTRUMPシリーズの新しい可能性が見えると思います。
■末満健一
医者になるには免許がいる。役者に免許はない。飛行機を飛ばすには知識と技術がいる。役者と名乗るものには知識も技術もないやつがいる。そんなピンキリな役者世界の中で、「この人たちは紛れもない役者だ」と思える人たちと、創作の時間を共にすることができた。そんな自分は、脚本家と言えるのか? 演出家と名乗る資格はあるのか? そんなことを自問自答しながら。演劇の可能性はまだまだ無限で、僕のやっていることはその一欠片でしかない。それでも僕は、演劇が好きだ。役者が好きだ。そう思うことが許されるよう、自分なりのやり方で過ごした時間に尽くしたつもりだ。その結果出来上がったものが今回の作品だ。『COCOON 月の翳り星ひとつ』は、やっていて苦しいのだから観るのも苦しいはず。でもとても遠いところまで来られたと思う。想像すらできていなかったような場所に。ひとりの力などちっぽけで、ここまで来られたのは役者とスタッフと観客のおかげだ。せっかくここまで来られたのだから、このままどこにも帰らずに、進んでみよう。
<COCOON「月の翳り」編 配役>※ネタバレあり。閲覧注意
アンジェリコ:安西慎太郎
ラファエロ:荒木宏文
ディエゴ:碓井将大
エミール:宮崎秋人
ジュリオ:田中 亨
グスタフ:郷本直也
ミケランジェロ:鬼頭真也
ジョルジュ:大久保祥太郎
モロー: 池村匡紀
ドナテルロ:細貝 圭
コロマン 他:奥田一平
生徒 他:小原悠輝
マルク 他:菊池祐太
エミール(越繭) 他:小比類巻諒介
若きドナテルロ 他:竹鼻優太
生徒ピエール 他:夛田将秀
シャルダン 他:星賢太
ティーチャー 他:本多釈人
声の出演
ダリ:染谷俊之
フリーダ:愛加あゆ
ディエゴの父:川原和久
<COCOON「月の翳り」編 ストーリー>
繭期の吸血種を収容する施設《クラン》に、アンジェリコ、ラファエロ、エミール、ジュリオ、ディエゴという、貴族の子息5人が在籍していた。特別な貴族階級の出自を持つ彼らは、クランの周囲の生徒たちから《高貴なる五家》と呼ばれ、羨望の対象となっていた。
幼なじみであったアンジェリコとラファエロは、クランで久しぶりの再会を果たす。だが、子供の頃は温和で臆病者であったラファエロは、どこか人を寄せつけない尖った空気をまとっていた。
ラファエロは、父親であるダリ・デリコから名門デリコ家の家督相続者として厳格な教育を受けており、父のような立派な貴族にならなければという思いを強迫観念的に抱えるようになっていたのだ。
アンジェリコもまた、父への複雑な思いを抱いていた。父親であるゲルハルト・フラは、デリコ家と同格の家柄であるフラ家の家督者であった。だがアンジェリコは、ラファエロとは裏腹に、父から期待の言葉をかけられることはなかった。それでもアンジェリコは、父親たちの跡を継ぎ、ラファエロとふたりで血盟議会を昇りつめていくことを夢見ていた。
ある日ふたりは不良グループのジョルジュ、モローらによる《貴族狩り》に遭い、上級生であるディエゴ、エミール、ジュリオに助けられる。その出来事をキッカケに彼らと交流を深めていくふたり。やがてラファエロは、自由奔放に生きるディエゴに憧れに近い感情を抱くが、アンジェリコはその様子に嫉妬心を募らせていく。そのことにより、ふたりの友情に亀裂が生じていくのだった。
クランでは、生徒たちの繭期の症状が著しく悪化していることが問題とされていた。繭期の症状を投薬制御する《抑制プログラム》の担当であるティーチャードナテルロは、抑制剤の調整を試みる。だが事態は一向に解決する気配を見せなかった。
繭期を深刻化させたディエゴは激しい暴力衝動に襲われ、ジョルジュたちに必要以上の暴行を加える。自らの繭期の状態に不安を覚えたディエゴは養護室を訪れる。そこでドナテルロから聞かされたのは、彼がクラン時代に体験した《美しき繭期》の思い出話であった。
──繭期なる刹那に築かれつつあった友情は脆くも崩れ去り、高貴なる五家と呼ばれた彼らはついに決定的な決裂の時を迎える。
<COCOON「星ひとつ」編 配役>※ネタバレあり。閲覧注意
ウル:宮崎秋人
ラファエロ:荒木宏文
アンジェリコ:安西慎太郎
ソフィ:三津谷亮
臥萬里:木戸邑弥
グスタフ:郷本直也
ミケランジェロ:鬼頭真也
ジョルジュ:大久保祥太郎
モロー:池村匡紀
クラウス:陳内 将
ダリ:染谷俊之
ダリの取り巻き 他:奥田一平
レイン 他:小原悠輝
血盟警察 他:菊池祐太
マルコの影 他:小比類巻諒介
アレン 他:竹鼻優太
養護院の職員 他:夛田将秀
貴族 他:星賢太
ノーマン 他:本多釈人
声の出演
マルコ:栗山航
フリーダ:愛加あゆ
<COCOON「星ひとつ」編 ストーリー>
14年前、人間種と吸血種の間に生まれ、「死を迎えるその日まで絶望しろ」というイニシアチブと、「その絶望に負けるな」という《ふたつのイニシアチブ》を受けた赤子がいた。赤子の名はウル。生まれてすぐに実の両親を亡くし、ある事情から特級貴族であるダリ・デリコに引き取られ育てられた《ダンピール》であった。
成長して繭期を迎えたウルは、兄ラファエロがいるクランへ入ることとなる。名門デリコの家名を護るために表向きは《純血種》として生きることを命じられたウルは、自分がダンピールであることをひた隠して生きてきた。
やがてウルは、同じクランにやってきたダンピールの少年ソフィと出会う。ダンピールであるにもかかわらず毅然と生きるソフィの姿に、心惹かれていくウル。自分も彼のように生きられたらどれだけよかったか……ウルはソフィを《ともだち》と呼び、いつも彼と一緒に行動するようになる。しかしラファエロは、弟がダンピールであると露呈することを恐れ、ふたりを引き離そうとするのだった。
一方、TRUMPを監視・守護する《ヴラド機関》の任務にあたるダリは、ソフィがこのクランに入所していることを問題視していた。なぜならそのクランには、永遠の命を持つ吸血種TRUMPであるティーチャークラウスがいたからだ。ソフィには、クラウスの精神状態に悪影響を及ぼしかねない秘密があった。ソフィの育った養護院を訪れたダリは、そこで《ダミアン・ストーンの意志》と再び対峙することとなる。
自らクランへと赴いたダリは、息子らと接見。ラファエロに、ウルをソフィに近づかせないよう命じる。またダリは自らが守護する対象であるクラウスと対話する。ダリはそこで、クラウスから《アレンの血族》であるソフィに手出ししないよう警告される。
月日が経ち、クランは年に一度の祭典《クランフェスト》を迎えていた。ラファエロに敵対心を抱くアンジェリコの策略により負傷したラファエロは、クランフェストの催しである剣術試合においてソフィに敗北。父からの重圧と弟の守護者たる使命感から、焦燥に駆られたラファエロはソフィに咬みつくという凶行に走る。ラファエロがソフィにとどめを刺そうとしたそのとき、ラファエロの体が自然発火するとともに跡形もなく消し飛ぶ。それは、すべての吸血種のイニシアチブの頂点にあるクラウスの仕業であった。
──やがて、呪われた少年ウルは慟哭の結末を遂げることとなる。その結末は、父であるダリに、そして、友と呼んだソフィになにをもたらすのか?
撮影:遠山高広