映画「さよならくちびる」の初日舞台あいさつに、小松菜奈、門脇麦、成田凌、塩田明彦監督が登壇した。
レオ役の小松は「お話を頂いてから、ギターと歌をずっと練習してきて、正直『3曲も成立するのかな…』という不安な日々もありました。でも、撮影中に地方を巡る中で、この3人でいる楽しい時間であったり、幸せな日々がたくさんあったので、初日を迎えられてとてもうれしいです」と笑顔であいさつ。
ハル役の門脇も「とても感慨深い想いです。プロモーション期間中も、3人でいる時間がすごく好きなことをあらためて感じました。この3人だからこそ作り出せたハル・レオ・シマだったのかなと。皆さんにも、この3人を愛してもらえるとうれしいです」と。
2人を支えるシマ役を演じた成田も「みんなの想いの詰まった映画」と語った。
撮影を振り返った小松は「北海道でのライブシーンの撮影中、空き時間に3人でなんとなく演奏と歌を合わせたんです。その時は、リラックスしていたこともあって、ささやかながら感動したのを覚えてます。最初の頃は何にもできなかったので、頑張って良かったなって」と。
この時間は小松以外の2人にとっても思い出深い瞬間だったようで、成田が「3人だけの空間だったよね。僕も感動したのを覚えています。小松さんとの初対面の時、お互いギター初心者としての苦しい想いを感じながら、練習後に『お疲れ様です』って言い合ったのを思い出したりしました(笑)」と明かすと、門脇も笑みを浮かべた。
そんな門脇は、思い出深いシーンとして、ハルレオのライブシーンを挙げ「会場にお客さんが入った瞬間に、1人で練習している時とは全く“歌う意味”みたいなものが変わった気がして。『来てくださった方のために歌うんだ』って感じた瞬間が、とても印象的でした」と語り、小松も「ライブはお客さんの反応がリアルに見える気がしました。アーティストさんはこんな思いだったんだ、と少し感じさせてもらった気がします」と明かした。
監督・脚本・原案を務めた塩田監督は「印象的なエピソードをどれか1つを挙げるのは難しいですね…」とうなりつつ、「音楽の話で言うならば、ギターを弾けない方々に、3曲もむちゃ振りしたことでしょうか(笑)」と回答。「実は、そのむちゃ振りに各所から悲鳴も聞こえていて…。僕自身『そりゃ難しいよな』って思った瞬間もあったのですが、極めて厳しく、妥協せず、3曲のままでお願いしますと押し通したんです。御三方に『1分1秒惜しまず練習しろ』と間接的に言い続けたのも、実はつらかったんですよ」と。しかし、成田が「もう少し簡単にしてもらえないかと注文したら、かえって難しくなって戻ってきたじゃないですか(笑)」とツッコむと、会場からは笑いが起こった。
トークは、ハル(門脇)、レオ(小松)、シマ(成田)による劇中の“三角関係”についての話題へ。複雑な男女の三角関係について、小松と門脇は「愛おしい」と口をそろえ、「ずっとけんかはしているんだけど、3人でいるからこその空気感、三角関係がハル、レオ、シマにはあって。そういう関係性はいいなって思います」(小松)、「ハル、レオ、シマを観ていて、大事すぎるから難しい、うまくいかないこともあるんだなって感じました。3人とも不器用ですし、簡単な一方通行の三角関係じゃない。だけどすごく愛おしいんです」(門脇)と3人の関係性の魅力を語った。
成田も「ハル、レオ、シマは“1対1対1”だから、不器用で特殊な愛情同士の関係性だけど、成立しているのかなって思います」と話しつつ、「最近『テラスハウス』を観ているんですが、あんまり“男1対女2”の構造はうまくいっていない気がするんですよね(笑)」と独自の理論を披露し、観客の笑いを誘った。
さらに「劇中のような三角関係に自身が置かれたら?」と聞かれると「好きな人がいても、安定性を求める気がする」(小松)、「私も引きますね。3人の関係性を大事にしちゃいます」(門脇)と答えた女性陣。
これに対して、成田は「性別の違いもあるし理解できないところもあるとは思うけど、やっぱり自分もシマのように2人の間に入って中立になる気がします。2人にちょっと小馬鹿にされる感じになるかなと。現に、小松さんと門脇さんにはちょっと小馬鹿にされていると思います(笑)」と話すと、小松と門脇は笑顔で否定した。
最後に小松は「この映画は、秦さん、あいみょんさんが一から作り上げた素晴らしい曲があったからこそ、生まれた作品。何度聴いてもいい曲です。最初に聞いた時の感動を今でも忘れません。淡々とした中で感じられるリアルな感情であったり、いろんなことを感じられる映画です。この作品を通して、前向きな気持ちになってもらえたらうれしいです」と呼びかけた。
門脇は「青春映画であり、音楽映画であり、多面的に楽しめる映画だと思います。大事な人を大事にする難しさ、普段忘れがちな感情のすれ違いみたいなものを、塩田監督の優しいまなざしで丁寧に丁寧に描いています。皆さんに愛してもらえるとうれしいです」と。
成田は「ジャンルを1つに絞るのがもったいない作品。ただやっぱり音楽映画かな。3人の軸ができたのも音楽ですし、今回、音楽の持つ力をあらためて実感しました。シマは夢をあきらめた役ですが、僕自身も過去夢を諦めたこともあるので、そういういろんな思いを込めて作られた本作は、共感とは少し違うかもしれないですが、皆さんが好きに感じて、好きに観てもらえるとうれしいです」と語った。
塩田監督は「小松さん、門脇さん、成田さんのこれまでとは違った魅力を惹きだせている作品だと思う」と自信を見せ「本作は“不器用な人たち”というのが重要。世の中を見つめる時に、生きるのがへたくそな人の立場に立ちたいという想いがありまして。実は、自分もこう見えて人見知りだし繊細なんです(笑)。ハル、レオ、シマも何かを手に入れようともがいているんだけど、そのやり方がすごく不器用なんです。でも、生きるのが下手くそなんだけど、七転八倒して頑張っている姿に共感してほしいし、彼らの生きざまを愛おしく感じてほしい」とのメッセージを送った。
さらに「この映画は決して大きな声で皆さんに何かを訴える映画ではなくて、静かにささやくように語りかけるもの。そのささやきに込めた想いや魂が、少しでも皆さんに届けばいいなと思います」と締めくくった。
映画『さよならくちびる』
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー中
<ストーリー>
音楽に真っすぐな思いで活動する、インディーズで人気の女性ギター・デュオ「ハルレオ」のレオ(小松菜奈)とハル(門脇麦)だが、付き人シマ(成田凌)が参加していくことで徐々に関係をこじらせていく。全国ツアーの道中、少しずつ明らかになるハル・レオの秘密と、隠していた感情。すれ違う思いをぶつけ合って生まれた曲「さよならくちびる」は、3人の世界をつき動かしていく――。
監督・脚本・原案:塩田明彦
キャスト:小松菜奈 門脇麦 成田凌
篠山輝信 松本まりか 新谷ゆづみ 日髙麻鈴 青柳尊哉 松浦祐也 篠原ゆき子 マキタスポーツ
主題歌:うたby ハルレオ Produced by秦基博
挿入歌:作詞作曲 あいみょん
製作幹事・配給:ギャガ
制作プロダクション:マッチポイント
公式サイト:gaga.ne.jp/kuchibiru/
©2019「さよならくちびる」製作委員会