映画「ひとよ」の公開記念舞台あいさつイベントが行われ、佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、MEGUMI、佐々木蔵之介、白石和彌監督が登壇した。
佐藤は「あらためて、人ひとりの力はちっぽけで、映画はたくさんの人に支えられて作られていると感じました。特に今回、僕は助けられました。鈴木さんと松岡さんたち共演者の皆さん、白石監督に頼って、撮影で向き合った時に感じるものを活かそうと思って、あえてノープランで臨みました。本当に公開を迎えてうれしいです」と、撮影を振り返って、満面の笑顔であいさつした。
反響について聞かれると、白石監督はたくさんの感想のメールが来ていることを紹介。佐藤は「僕は『このキャラクターたちとお別れしなければならないのか』と、寂しくなるような映画が好きなんです。そういう意味で、『この先、稲村家はどうなるのか気になる』というような感想をもらうことが多いですね。共感しやすいポイントが多いからかもしれません」と語った。
共感したシーンやせりふについて、佐藤は「園子が仕事帰りベロベロに酔っぱらって、堂下の運転するタクシーに送ってもらったところで、リバースして、『まだ吐くよ』っていうせりふが好きです。あれめちゃくちゃいい。一番良かったよ(笑)」と、まさかのポイントで松岡をべた褒め。
白石監督が、そのせりふは脚本にはなく、松岡のアドリブだったことを明かすと、会場はどよめきに包まれた。佐藤は「さすがですね(笑)。せりふを変えることをどこまで許してくれるかというのは監督によって違って、こだわりが強い方も多いですが、もはや白石監督は意味合いが変わってもいい、という懐の大きさがあります(笑)」と暴露。すると、白石監督は「皆さんが知らないとこでどうにかしています(笑)。キャストさんたちを信頼してるんです」と、白石流の撮影術を明かした。
佐々木は「こはるが夫を手にかけて自首する前に、子供たちを抱きしめないんです。『今しか抱きしめられないよ!?』って観客の皆さんも思ったと思うんですけど。でも15年たって帰ってくると、ガシって抱きしめる。あれはたまらないですね」と語った。
クライマックスの大きな見せ場であるカークラッシュのシーンは、家族というテーマに初めて真正面から向き合った白石監督たっての希望で、撮影直前に変更されたという。どうしてもこのシーンを入れたかった理由について、白石監督は「準備していく中で、稲村家をはじめとしたキャラクターたちがちゃんとコミュニケーションを取れていないと感じました。この家族が前に進むためにはちゃんとぶつからないとと思って、その象徴としてクラッシュさせました。『雄二はこんなに運転がうまいんだ』と思いましたね(笑)」と。
佐藤が「一部のシーンではありますが、本当に運転しました(笑)。車酔いしましたよね?」と、一緒に車に乗っていた鈴木と松岡を気遣うと、松岡は念のため酔い止めに梅干しを食べていたと明かし、鈴木や白石監督は、佐藤のドライビングテクニックを称賛した。
松岡は三兄妹がスナックでけんかするシーンについて疑問があったようで「気付いたか、観客の皆さんに聞きたいです。あそこで園子は、怒りのあまりピーナッツを雄二に投げるっていうシーンなんです。何カット目かで健さんの髪にピーナッツが頭に付いていたので、リテイクになったんですけど、実際本編に使われてたのはピーナッツが付いているカットでした。あれはなぜですか?」と白石監督に質問。すると白石監督は「ピーナッツ付いてるのにこんなにカッコいい人いるんだと思って…(笑)」と返し、会場は大きな笑いに包まれた。
大樹と二三子の夫婦げんかのシーンについて、MEGUMIが「大樹を怒るシーンばっかりなんだけど、パッと監督の方を見ると笑ってるんですよ」と暴露すると、白石監督は「いい追い込み方してるなと思って(笑)」と愉快そう。
大樹が二三子を思わずビンタしてしまうシーンについては、MEGUMIが「痛いと痛くないのギリギリの、良いさじ加減のビンタをしてくれるんですよ。あれはぐっと来ました(笑)」と振り返ると、鈴木は「いつも他の現場でも『あなたは自分が思っているより力が強いんです』と言われるんです…」と恵まれた体格故の苦労を明かした。
トークは「“家族”とは何か」というテーマになり、白石監督が「最も大切なものです。子供としては親から頂いたものでもあるし、親としては、子供には無償の愛を捧げたいと思う。めんどくさいけど、だからこそいとおしいと思います」と。MEGUMIは「時としてめんどくさいことも多いですが、そこが崩れると自分にとっても一番良くない。だからこそ、めんどくさいときもあるけど、最も大事にしなければならない存在」、佐々木は「共鳴し合えるものかな。悲しいこともうれしいことも一緒に響き合える存在」と、それぞれの家族観を語った。
松岡は「学校も会社も、他人と向き合わなければならない。そういう時に土台になってくれる。友達とか恋人は時期によって移りゆくこともあるけど、家族はそういう時に踏ん張らせてくれる存在だと思います」と。
鈴木は「最も濃い人間関係だと思います。一緒に過ごした時間や、血がつながっている・つながっていないも含めて、良い意味でも悪い意味でもすごくつながっていると思います」と。
佐藤は「大切な存在であることは揺るがないです。僕は30歳で、これから家族を築いていく立場ということを考えると、憧れでもあります」と、かみしめるように語った。
最後に佐藤は「素直になれなかったり、家族と向き合わなければならなかったりするとき、一度クラッシュしなければならないかもしれないと、白石監督も取材でいつもおっしゃってました。僕もあんまり素直に物事を伝えられないタイプです。皆さんもクラッシュするぐらいの気持ちで向き合ってもいいのかもしれません」と呼びかけた。
映画「ひとよ」
公開中
©2019「ひとよ」製作委員会