1月6日(月)放送の『テレビ東京開局55周年特別企画 新春ドラマスペシャル「最後のオンナ」』(テレビ東京系)に出演する藤山直美、岸部一徳、深津絵里、香川照之、千葉雄大による座談会の模様が公開された。
◆台本を読んだときの感想をお聞かせください。
岸部一徳:ひと言で言うと“面白い”。面白いの中には、藤山さんと久しぶりにまたやるっていうことが最初にあるので、その楽しみの中で台本を読んで、これはかなり面白いなというのが第一印象でした。
深津絵里:とても手強い台本だなぁと思いました。最近には珍しいホームドラマで、何でもないことをさりげなく伝えなくてはいけないので、そこがとても難しく四苦八苦しています。
藤山直美:台本を読んで、自分が出るのは別にして楽しかったです。本当にちゃんとまとまってみんながバランスよく、その場所その場所の主人公として登場される面白いドラマやなと思いました。
香川照之:藤山さんがお出になるということで台本を読むと、藤山さんはそこにいらっしゃって何をどうしゃべられるのか、一徳さんとのいつもの相性だとどう来るのかとか、撮影しなくてもいいんじゃないかってぐらい、既に三次元に立ち上がって来て想像できるんです、ニュアンスが。でも撮影しなきゃいけないですけどね(笑)。深津さんと夫婦役ということで、今回初めて共演させていただきました。深津さんとのやりとりも読んだだけでワクワクする場面ばかりで、そういうことを含めて素晴らしい楽しい台本だなと。(藤山演じる美奈子が営む)スナックと皆川家の関係もチャーミングだし、平成が終わりましたが、昭和にもう1回戻ったいいドラマだなと思いました。
千葉雄大:すごく面白かったですし、あといい悪いとか、そういうのは一概には測れないものだなというのを最終的に思いました。
◆藤山さんがテレビ東京初出演となるこの作品ですが、ドラマの話を受けたときはどう思われましたか?
藤山:一徳さんも香川さんもいてくれてはるし、深津さんは初めてお会いするんですけども、本当にもたれかかっていて。お話が来たときは「私は普通にいてたらいいんやな」っていうことで、変な不安はなかったです。こうやってテレビの仕事の機会を頂けたことは、良かったかなと思います。
岸部:直美さんと何年かに1回、ずっとやってきてるっていうのもあるんですけど…直美さんが主演でやるとなると、ちょっとコメディタッチとか、そっちのほうのドラマかなと思われると思うんですけど、意外とコメディとか喜劇って普通のドラマよりむつかしいんですよね。この“むつかしい”というところに挑戦するという楽しみがあるんです。普通のいわゆるシリアスなドラマ以上の何かが必要になってくるので、そういう意味では藤山さん、香川さん、深津さんの力がここに集まって、そういった面白いドラマになればいいなと思っています。
深津:お話を頂いて本当にうれしかったです。いつか直美さんとご一緒したいとひそかに思い続けていたので…。こういうことをご本人を前にして告白するのは恥ずかしいんですけど、やっとかないました(笑)。
香川:キャストの名前を見たときに、テレビ東京ってすごいんだなって。だってこんなに(豪華なキャストを)集められないですよね?…という気がするぐらいのドキドキするような企画でしたし、最初に聞いたときは本当に直美さんと共演させていただくのも久しぶりで、ただただうれしいと思いました。昔の若い時のような…台本をもらって「あ、うれしい!こういうのができる!」という感覚が久しぶりに戻ってきたような錯覚を味わえましたね。
千葉:最近は、現場で最年少というのはあまりなかったので…。そうそうたる皆さんとご一緒できるというのは、緊張が一番ありましたが、やっていて楽しいです。
◆今回演じられる役柄の役作りで意識されていること、心がけていることがあれば教えてください。
藤山:えっと…ヒョウ柄とアメは出てこないですね(笑)。たぶん東京の方がイメージされている“大阪の人”ってあると思うんですけど、ヒョウ柄もアメも出てこないし、たこ焼きも出てこないし、何って出てこないですよね。大阪大阪していない。ただ、私が関西人であるっていうことのお芝居であって、もし東京の方がやられても成立するようになっていますので。偶然、私は関西弁しかしゃべれなかったことで、普通の“大阪の年いったおばさん”という感じです。意気込みとか役作りは考えたことない。もう監督さんがせっかちでパパパってやっているので、ついて行く感じです。
岸部:僕にとっては久しぶりの恋愛だったので(笑)。藤山さんとそういう関係の役はなかったかな?夫婦はあったかな。久々にあってドキドキしながら言葉がうまく出ないみたいな気分を味わって楽しんでいます。
深津:父と娘を描いた作品は、いつかきちんとやりたいなと思っていました。一徳さんと親子を演じられるなんてとてもすてきだなぁと。先ほどと繰り返しになりますが、さりげなくを心がけています。あとは撮影現場のライブ感。そこで生まれるもの、それだけを大事にして、とにかく集中したいです。
香川:直美さんと一徳さんのコンビはすごい憧れで。それぞれと共演させていただいたことはあるんですけど、このお二人が一緒の現場っていうのは初めてだと思うんです。そこの現場に一緒に入れるということで、深津さんもおっしゃいましたが、お二人が作る世界観に反応することが第一で、役作りはいらないとすら言えるかもしれない。直美さんとのお芝居は、今までの経験では完全に「スポーツ」なので、反応と、一瞬のアイデア、そこに向かっていくスピードと、いつ蹴り込むかシュートだけを狙っている。ブラジル人のサッカーの中に日本人がひとり放り込まれてる感じなので、どこにボールが出てくるかっていうのが、もうわからないわけですよ。でもそれについていくこと、つまり作るというより反応する、ライブ感のほうに神経を傾けるのがこの現場では最優先すべきことかなと思いました。
千葉:合間に相づちを打つシーンが多いので、そういうところこそトチらないようにやっております(笑)。一生懸命やってます!
◆藤山さんと共演されてみて現場の手応えや気持ちはいかがですか?
藤山:(岸部には)19歳の時から面倒見てもらってるから…。
岸部:面倒は見てないんですけどね(笑)。長い付き合いですけど、世の中の見方とか、芸能界や俳優さんなど、いろんな物の見方が一貫して変わらない、本物と偽物っていうものを常に持っていらっしゃる人。本物は一体何だろうとか、これは偽物だってものがすごく鋭いんですね。たまに会っても1年前に言っていたことと違うというのはありえない。40年ぐらい前に言っていたことも今も同じなんですよね。
深津:こんな年下の私があれこれ言うのもおこがましいですけれど…とにかくすさまじいです!(笑)存在というか、魂が。その存在に毎日衝撃を受けています。このタイミングで直美さんや一徳さんや香川さんとご一緒できるというのは、本当にご褒美のような時間だと思っています。すごく大切にしたいですね。
香川:一徳さんほどの時の長さを共にさせていただいているわけではないですけど…思い起こせば28年前に初めて共演させていただいてからのお付き合いなんですけど、とにかく目がいい。一徳さんがおっしゃられた、本物であるかどうかを、常にはおっしゃられないけど不断に判定し続けられて。しかし、それを上から目線ではなく本当にご自身の優しさと感謝をもって判断しつつ、いいようにするにはどうしたらいいかという。チームを外から全部見ている監督でもあり、トッププレーヤーでもあるような巨大な方なので、僕もいつもその目にさらされていて、しっかりしなければ怖いなと思うんです。それは28年前から変わらず…。考えてみれば直美さんの年齢から28を引くと32になるんですね。…あの時32歳だったんですね!僕にはあの時、既に60歳に見えた!32で既に60みたいな貫禄を持ってらっしゃったんだなと思って!そう考えると28年前から何も変わられてないなと僕も再確認した次第です。
千葉:僕なんかがあれですけど…。藤山さんとご一緒するのは2作目なんですけれども、前作のときはあまりご一緒できなくて、2日間だったんです。でも今回は3日間あるので1日増えたなと(笑)。1日分ご一緒できるのでうれしいです。
藤山:いいことも悪いこともあまり変わっていないんだと思いますわ。いいとこも変わってなかったら悪いところも変わりにくい人間やと思うんですね。私やっぱり上方喜劇の役者ですので、どうしても根本的なものというのを個展の歌舞伎や新派から持ってきてしまうので、本物とか偽物の線引きっていうのは私の中で勝手にあるだけであって、これが世間の常識でもなんでもない。最終的なジャッジはお客さんです。一番自分が大事にしてるのは、こっち側だけで盛り上がるのはやめようということ。決めるのはお客さんですから。それから、こういうドラマで一番大事にしたいのは、皆さんもそうされているのでうれしいんですが、まず日常。日常がちゃんとあって、それからハプニングが起こる、そっから事件が起こる…ということを大事にしたいなと。こういうドラマであればあるほど2時間で表すのはすごく短い。でもこの人の日常…朝起きて、歯を磨いて、普通にご飯食べてっていう日常をまず大事にして、そっから何か事件性なことが発生したりとか、人とめぐり合うとか、恋をする、けんかする驚く…というのを大事にしたいなとずっと思っています。
◆ドラマの見どころをお聞かせください。
藤山:テレビ東京さんが、こんなにドラマを大事にしていただける局さんやと思わなかったんですよ、ほんまに!うち、家が京都の山科なんですけど(テレビ東京が)映らへんのです(笑)。だからドラマに力を入れられているというのは役者から見てうれしいなと思います、いちテレビを見ているおばちゃんファンとして。(このドラマは)分かりやすいのが見どころです。途中で帰って来ても違うことしながらでも、耳で聞いてても分かるようなお芝居じゃないかと思います。
岸部:テレビのドラマって今売れている人、はやりの人っていうのがどうしても中心になるんですけど、キャスティングが似てくるんですよね。そのストーリーとか話の面白さの上に、いつも見る人たちでドラマを作るっていうのが多くなってきている。だから、このドラマの何が一番って言ったらキャスティングですかね。このメンバーが集まることって意外とない。藤山さんを中心にして集まったということですが、どんな話をするのか、この人たちがどんなドラマを見せてくれるのかっていうのが楽しみかも分からないですよね。(この人たちの中にも)僕も入れておきました(笑)。
藤山:抜け目ないわー!(笑)
深津:こういう思い切ったホームドラマは最近あまり見ないので、そこが1番見どころだと思います。あとはラストシーンかなぁ…ぜひ見ていただきたいです。
香川:僕も年齢が上のほうに見られる現場が多いんですけど、この現場って本当に真ん中より下なほうで。スタッフ含めて僕より年上が多いという、すごく珍しい現場。その意味では、先ほど申し上げましたけど、キャストも含めてその昭和の一番生きがよかった時代の、スタジオをガーガー移動するカメラで撮ってきたあの世代が、すごくせっかちに撮っているという(笑)。だから、本当に撮れている?っていうぐらいすぐ終わるんです。こんな撮り方してたな昔ってという意味では、昭和の逆襲のような、昭和の底力のようなものが、このドラマに宿るんではないかなと思うんですね。この撮り方で撮り切ったらすごいなと。平成の、テストからまわしていくようなご時世に、昭和のやり方でずっとやって、内容もホームドラマという、昭和のいいところを全部切り取って時代を戻した感じがするので、そこも見どころの一つになっているのかなと思います。
千葉:本読みのときに、皆川家の皆さんのやりとりやゴタゴタしてもめごとのはずなのに少しクスっとくる温かさがあって、すごく魅力的な家族だなと思いました。
香川:(千葉に)昭和の話になったんだから、「すみません、僕は平成で」っていう入りでいかないと!
千葉:(笑)。僕あの……平成元年生まれでして!平成も終わるし、そういった昭和の時代の話とかスタッフさんを見ていて、平成が終わった次の年号(令和)で育つ人たちにどうみられるのかな、そしてもうちょっと頑張らないとなっていうのは、諸先輩方を見てひしひしと思いました。
◆最後に視聴者へメッセージをお願いします。
岸部:藤山直美さんを楽しんでいただきたいと思います。
深津:見てくださる方が、その時間ちょっとでもイヤなこととか面倒くさいことを忘れて、椅子の背もたれに背を付けて「あぁ~」ってなれる。そんなホッとできて楽しんでいただける作品になるように頑張りたいと思います。
香川:本当にたくさんの方に見ていただきたいので…テレビ東京のドラマ視聴率の最高は何%ですかね?それを超えるのを目標にしたいです。…(最高が)『ハレンチ学園』?じゃあ、越えなくていいや(笑)。
千葉:『ハレンチ学園』を超えたいと思います(笑)。本当に温かいお話なので、ぜひたくさんの人に見てもらいたいです。
藤山:開局55周年ですか?私が5歳の時に開局したんや。今、主人公の年が若いですやんか。2倍以上ですからね、平均年齢高いですよね。会うと検査したとか、そういう話ができるのが楽しい。いい集まりだと思いますし、その和やかさが出ていると思うので、よろしくお願いします。
<あらすじ>
創業95年を迎えたおかきの老舗「皆川堂」。現社長・皆川雄一郎(岸部一徳)は、外面はいいが家では無愛想でケチ。そんな父の立ち振る舞いにイライラする、雄一郎の娘・小百合(深津絵里)もまたかなりの毒舌で見栄っ張りな性格だ。似た者同士の親子に、婿で専務の大介(香川照之)はいつも気をもんでいる。そんな折、雄一郎は亡き妻の墓参り中に、浅草でスナック「ビーナス」を営む山田美奈子(藤山直美)と出会う。そこで、“昭和な男”の雄一郎が、お茶に誘うという意外な行動に。そんな運命の出会いから1か月。大介は、スナックに入り浸り、美奈子と仲良さげにする雄一郎を偶然目撃。やがて美奈子と雄一郎の交際が発覚する。ショックを受けた小百合は、財産目当てを疑い、2人の関係を認めようとしない。“最後の女”だと宣言する父の恋を、娘は応援できるのか。その先に待ち受ける意外な結末とは…。
テレビ東京開局55周年特別企画
新春ドラマスペシャル「最後のオンナ」
テレビ東京系
1月6日(月)後8・00
脚本:吉田紀子
監督:松田秀和
出演:藤山直美、岸部一徳、深津絵里、千葉雄大、岸本加世子、香川照之ほか
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