山田孝之主演で送る感動作「ステップ」が4月3日(金)より全国公開される。それに先駆け、山田をはじめ、國村隼、広末涼子、伊藤沙莉、飯塚健監督が登場し、本作の完成を記念したトークショーが行われた。
本作で、大切な妻を失い、仕事と育児の両立に悩みながら、小さな娘を育てるシングルファザーの健一を演じた山田。個性的な役柄を数多く演じてきた山田にとって、新鮮味すら感じられるキャラクターだが、本人は「今回は演じていません。20年間エキセントリックな役を演じ続けてきましたが、今回ついに“素”の山田を出しました!」と。
さらに、健一役を引き受けたことについては、「単純に、妻を失って娘を育てるというのは経験したことがないので、どんな気持ちになるんだろうと。飯塚監督とは過去もご一緒していますが、笑いの要素が多かったので、そうではない作品を一緒に作ったらどんな映画になるんだろう、どんな現場なんだろうというところに興味があった」と理由を語った。
健一の同僚であり、過去に関わる秘密を抱えた奈々恵を演じた広末は、「抱えているものがあると慎重になりますし、だからこそなるべくフラットに演じたいと思っていました」と。また、事前に役者陣と顔を合わせる機会がなかったことから、役を作り込まずに現場に飛び込もうといざ行ってみたところ「山田さん演じる健一が戸惑っている感じとか不器用な感じとか、それが役作りなのかご本人の性質なのか分からないですけど、すごく伝わってきて。それが自分の緊張感なのか、奈々恵としての戸惑いなのか?という空気が生まれたので、私も素に近かったかもしれないです」と、山田の影響で自身も “素”の状態を意識することがあったことを明かした。
さらに、健一役に挑戦した山田について「イメージと違う役だったのですごく楽しみだったんですけど、この役が素だったというのをここで初めて聞いて、うれしかったです!」と笑顔を見せた。広末とは初共演となる山田は「お会いするのはこの作品が初めてだったので、『広末涼子いる!』って本当に緊張してたんです。だから、素です!」とあらためて“素”をアピールした。
飯塚監督も、今回の山田を「初めて見る山田君でした。すごく大切な人を亡くしたということを撮影中ずっと考えてくれているたたずまいで、大変そうでした」としみじみ振り返った。
幼少時代の美紀が通う保育園のケロ先生を演じた伊藤は、初めて脚本を読んだ時からこの役を演じることを熱望していたことを告白。「ケロ先生がやりたいですってずっと言っていて、言ったからには絶対にがっかりさせられないと思ったし、出番はそこまで多くないけど、健一さんと美紀ちゃん親子に伝えらえることってなんだろうと考えながら演じました」と思い入れの強さを語った。
山田との共演については「保育園のシーンでは、山田さんは見たことのないやわらかい顔をしていました。その前の作品では、やわらかくない人の役だったから(笑)初めて見る孝之さんでちょっと緊張しました。でもパパの顔をしているのってあまり見られないから、それはすごく新鮮で、陰からずっと見ていました」と、本作でのレアな山田と楽しんで向き合っていたことを語った。
これに対し山田は、「20代の頃エキセントリックなことをいろいろやってきて、そろそろキャラの限界を感じてきたので…柔軟剤のCMとかも取りに行かなきゃいけないということもあり、今回オファーを受けさせていただきました」と会場を笑わせた。
メガホンを取った飯塚監督は、もともと重松清の原作小説「ステップ」の大ファン。熱い思いをつづった手紙を重松に送り、長い時間をかけて映画化を成し遂げたという。「特別な出来事はあまりないですが、子育てをしていく中で、子供が寝がえりをうったりするだけでも劇的な変化だし、そういうことを丁寧に描ける作品だと思って、絶対映画化したいと思いました」と明かし、「悲しい出来事があって、それを軸に主人公たちが育っていくお話ですが、悲しみを解決するような物語ではなく、悲しみともうまく付き合っていくしかない、というところがとても響いて。ずっと付き合っていくということはどういうことかなど、考えながら脚本も書かせていただきました」と本作への思いを語った。
トークの終盤では、本作が“大切なものを失った人たち”が一歩一歩前を向いて歩いていく、10年間の足跡を描いた物語であることにちなみ、登壇者が「この10年間でステップアップしたと思うこと」をそれぞれ語り合うことに。
山田は「ステップアップしてるかな…」と考えた後で、「プロデューサーや監督に挑戦したこと」をピックアップ。國村は、映画に力を入れて取り組んでいく中で「日本だけでなく外国の映画人たちとも一緒に映画を作る経験が増えたこと」を挙げ、その喜びを語った。
広末はトーク中の山田のコメント受けながら、「山田さんが柔軟剤のCMに出るって想像つかなくて、また新しい世界だと思うんですけど。私はこの10年で、子育てに関しては相当ステップアップしたと思うので、私のほうが柔軟剤のCM、いいかな(笑)」と語り、これに対して山田は「一緒にやりましょうか!」、國村は「隣のおじさんはいりませんか?」、飯塚監督も「お仕事お待ちしています!」と、息の合ったチームワークを見せた。
最後に山田は「健一はシングルファザーという設定がありますが、彼ひとりではなくて、家族や同僚、出会っていく多くの人に救われながら生きていく人生の物語です。見る人の年齢とか性別、職業と関係なく誰でも見られて、誰にもどこか刺さる部分があると思います。映画の中で成長を描いているように、自分が変わった時に見たらまた見え方が変わる作品だと思うので、ぜひ公開してからも、5年後、10年後と、この作品を大事にしてもらえたら。素の、山田が見られます!」とメッセージを送った。
映画「ステップ」
4月3日(金)より全国公開
©2020映画『ステップ』製作委員会