
文芸誌「新潮」2020年12月号に掲載された尾崎世界観の「母影」が、第164回芥川賞候補作にノミネートされたことが分かった。
人気バンド「クリープハイプ」ヴォーカル・ギターの尾崎世界観(36)は、2016年6月に初小説「祐介」を発表。自身の本名をタイトルに冠して、売れないバンドマンを主人公にした作品が大きな話題となった。以降、音楽活動と並行しながら、エッセイや対談、小説などの執筆活動を行っている。
「母影」は、尾崎が初めて文芸誌「新潮」(2020年12月号)に発表した中篇小説。デビュー作から一転、小学校低学年の少女の視点から見た世界を描いた作品で、掲載直後からその文学性がSNSや文芸時評などで話題を呼び、第164回芥川賞の候補作に選出された。
芥川賞を含め、尾崎が文学賞にノミネートされるのは今回が初。選考会は2021年1月20日(水)に都内で行われる。

尾崎世界観
「母影(おもかげ)」
2021年1月29日(金)発売
128頁/四六判ハードカバー
予価1300円(税別)
<あらすじ>
私は書けないけど読めた――お母さんの秘密を。
行き場のない少女は、カーテン越しに世界に触れる。
小学校でも友だちをつくれず、居場所のない少女は、母親の勤めるマッサージ店の片隅で息を潜めている。お客さんの「こわれたところを直している」お母さんは、日に日に苦しそうになっていく。カーテンの向こうの母親が見えない。
少女は願う。「もうこれ以上お母さんの変がどこにもいかないように」。
尾崎世界観プロフィール
おざき・せかいかん
1984年11月9日生まれ。東京都出身。2001年結成のロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル・ギター。12年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。16年、初小説「祐介」(文藝春秋)を書き下ろしで刊行。他の著書に「苦汁100%」「苦汁200%」(ともに文藝春秋)、「泣きたくなるほど嬉しい日々に」(KADOKAWA)。千早茜との共著に「犬も食わない」(新潮社)。対談集に「身のある話と、歯に詰まるワタシ」(朝日新聞出版)。