2020年11月に発売された加藤シゲアキの最新長編『オルタネート』が、発売から2カ月も経たない異例のスピードで10万部を突破したことがわかった。
加藤は2012年1月に『ピンクとグレー』(KADOKAWA)で、小説界に鮮烈なデビュー。以降もNEWSのメンバーとして芸能活動をする傍ら、作家としても活動を続け、数々の話題作を世に送り出してきた。
そんな加藤の3年ぶりの新作長編となる『オルタネート』は高校生限定のSNS「オルタネート」が存在する世界で、インターネットと現実の2つの社会に翻弄されていく少年少女を描いた青春群像劇。
刊行直後から話題を呼んだ本作は11月17日の配本日(発売日は11月19日)、いわゆる「フラゲ」日の時点で完売する書店も相次ぎ、発売から5日目にして緊急重版。紀伊國屋書店やくまざわ書店、TSUTAYA・蔦屋書店など主要チェーン店で軒並みランキング1位を獲得した。
昨年12月18日には、本作の第164回直木賞へのノミネートが発表。この快挙にあらゆるメディアから取材が殺到し、即座に3万部の重版(4刷)が決定した。その後も勢いはとどまることなく、2021年早々に1万部の追加重版となり、このたび累計10万部(5刷)を達成したとのことだ。
加藤は『オルタネート』について、かつて「『生徒』だった頃の光景が薄れないうちに書かなければと思っていました。創作なのに、これは間違いなく僕の物語です」と語っているが、その反響は若年層にとどまっていない。
作品を読み終えた書店員からも「夢を追う若者たちはもちろん、夢を持つ大人たちに紹介したい」「もう一度、若いことに戻ったような感覚」「自分だけのたいせつな物語になりました」など、世代・性別を問わず多くの共感を集めているという。
マッチングアプリ、LGBT、SNSや動画配信、遺伝子相性診断など、現代社会に接続される題材を克明に描いているものの、あくまで加藤が『オルタネート』で描きたかったのはリアルで切実な人間ドラマ。
そんな誰しもが楽しめる普遍性を備えた青春小説に仕上がっている点も、話題性だけにとどまらずにヒットを続けている背景にあるようだ。
書誌情報
『オルタネート』(加藤シゲアキ・著)
2020年11月19日発売
定価:1,650円+税
発行:新潮社
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