『月とシネマ』あらすじ
とある地方都市。駅前の映画館「ムーン・シネマ」は閉館の危機。そこへ館長の息子並木憲次(中井貴一)が「ムーン・シネマ」に現れた。彼は五十代のフリーの映画プロデューサー。今までにヒット作を何本も世に送り出していているが、賞には恵まれない。同じ映画関係の仕事だが、父子の交流はほとんどないというか絶縁状態だった。
並木とのタッグでヒットを飛ばすことを夢見る大手映画会社の新米プロデューサー・小暮涼太(藤原丈一郎)、並木の娘・彩矢(矢作穂香)と共に、映画館の相続のために集まったのだが、驚いたことに、父が残した遺言状には映画館は、ある女性に継がせる、とあった。まさか親父のやつ……、老いらくの恋か?と 邪推をするが、その推測は見事に外れた。
その女性は、知る人ぞ知る、女流映画監督三城麻衣子(貫地谷しほり)だったのである。4、5年に一度しか作品を発表しないし、映画は大ヒット、というわけでもなかったが、発表ごとに映画賞を総なめすることで有名な監督で、ちょっとやそっとでは大手のオファーを受けないのでも有名である。
正当な権利を主張するべく、並木たちは三城に会うことにする。こんな古い映画館で借金もある、相続しても負債を抱えるだけだと放棄を迫る並木。すったもんだの末、三城は提案する。この映画館を使って映画を撮影したい。その後であれば、映画館の権利は放棄すると。そして、その条件として「撮影する映画は並木憲次がプロデューサーを務めること」を要求する。
こうして、商業主義のプロデューサーとアート系の映画監督、水と油のはずの二人が一緒に映画を作ることになった。
大手映画会社の看板を背負い、小暮は何かというと意地を張る並木に手を焼きながら映画完成に向かってひた走る。
そこに並木の娘も、映写技師の黒川(たかお鷹)も、そしてなぜか街金の児島(村杉蝉之介)も巻き込まれて、映画館の存続を巡って右往左往が始まっていく。
そして次第に、驚くべき父の秘密が浮かび上がってくるのだが……。