板垣恭一 コメント
「新作ミュージカルを一緒に作りましょう」と持ちかけられた僕は、どうせなら今までのミュージカルにないような題材をと考え、才人・京極夏彦氏の小説「魍魎の匣」を提案しました。ファンの方には「レンガ」と称される、あの分厚い小説です。複雑で多彩な人間関係、重厚な謎解き、そして昭和27年の日本。この傑作小説をミュージカルにしてみませんかと伝え、企画が動き出しました。
見どころは大きく3つ。1つ目はスピード感。長大なストーリーを素早く展開させるノンストップ・ミュージカルを目指します。2つ目は原作世界観の再現。映像で投写されるのは、ひたすら「文字」です。聞きなれない言葉、難しい漢字をビジュアル化して、小説のページをめくっているかのような観劇体験を目指します。3つ目はキャストの妙。主演の小西遼生氏、元劇団員の駒田氏を中心とする豪華な外部出演者と、劇団員が混ざり合って演技の火花を散らします。
「魍魎の匣」は「百鬼夜行シリーズ」の2作目にあたり、時代設定は前作「姑獲鳥の夏」同様、昭和27年(1952年)です。同年4月、サンフランシスコ平和条約が発効され、日本は主権を回復したと言われています。つまり現代日本がスタートした年なのです。もしかして京極夏彦氏はこのシリーズで「現代の古典」を書こうとされているのではないか、つまり現代に通底する真理を描こうとしてのではないでしょうか。本作では「科学」と「情念」という真逆な要素が絡み合います。それは、世界は計算で割り切れるはずと考えたい我々と、感情に振り回され己をコントロールできない我々、つまり今現在の私たちそのものだと僕は感じています。
見たことのないようなミュージカルを作り出すのが目標です。劇場でお待ちしておりますので、どうぞご期待ください。
作品情報
イッツフォーリーズ公演 ミュージカル「魍魎の匣」
2021年11月10日(水)〜15日(月)オルタナティブシアター
原作:京極夏彦
上演台本・歌詞・演出:板垣恭一
作曲・音楽監督:小澤時史
出演:小西遼生 吉田雄 北村諒 神澤直也 大川永 熊谷彩春 万里紗
德岡明 加藤将 池岡亮介 横田剛基 宮田佳奈 米谷美穂 金村瞳
神野紗瑛子 堀内俊哉 浅川仁志 森隆二 / 駒田一 ほか
公式サイト:http://www.allstaff.co.jp/mouryo/