「TBSドキュメンタリー映画祭 2022」開催記者会見が行われ、上演される11作品の監督を務める立山芽以子、武石浩明、酒井祐輔、山本一雄、中島哲平、武田一顕、須賀川拓、佐井大紀、守田哲、川西全、西村匡史と大久保竜(TBSテレビ報道局/報道コンテンツ戦略室長)が登壇した。
「TBSドキュメンタリー映画祭」は、TVで伝えきれない真実を映画という形で世に送り出すため、2021年より開催。第2回となる今回は、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で3月18日(金)~24日(木)に実施され、全国で順次開催される。
TBS DOCSプロデューサーの大久保は「三島由紀夫の映画がヒットしたことが大きかった。社内でドキュメンタリーの可能性があるんじゃないかと、日本でもドキュメンタリー文化が広がればと思った」と企画の経緯を説明した。
今回上映されるのは、立山芽以子監督の「ムクウェゲ『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」、武石浩明監督の「クライマー山野井泰史~垂直に魅せられた人生~(仮)」、酒井祐輔監督の「ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~(仮)」、山本一雄監督の「難病と私~萌々花20歳だから私は前を向く」、中島哲平監督の「永遠の総理候補・石破茂嫌われた正論(仮)」、武田一顕監督、松原由昌監督の「完黙中村喜四郎~選挙無敗の男が負けた時(仮)」、須賀川拓監督の「戦争の狂気戦場特派員が見た中東和平の現実(仮)」、佐井大紀監督の「日の丸~それは今なのかもしれない~(仮)」、守田哲監督の「池袋母子死亡事故『約束』から3年(仮)」、川西全監督の「ライブで歓声が聞こえる日コロナ禍に抗う音楽業界(仮)」、西村匡史監督、神保圭作監督の「地下鉄サリン被害者家族の25年~さっちゃん最後のメッセージ~(仮)」の全11作品。
「ムクウェゲ『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」の立山監督は、撮影のきっかけを「2016年にムクウェゲ医師が来日することになって、そこで初めてムクウェゲ医師のことを知り、取材をしました。先生の活動を知るにつれて、これはもっと日本の皆さんに伝えなければいけない、特に日本とのつながりについて知ってもらいたいという気持ちから取材を開始しました」と。
注目ポイントとして「日本と関係ない、自分に関係ないということではなくて、自分たちとつながっている問題だということ、自分たちが今生きる同じ時代でこういうことが起きているんだとことをぜひ知ってもらいたい。自分たちの快適な暮らしが何によって支えられているのか知って考えて行動するということにこの映画がつながっていければいいな」とアピールした。
「永遠の総理候補・石破茂嫌われた正論(仮)」の中島監督は「いざカメラが回ると政治家として100点のコメントをされることが多いので、(石破さんから)本音を引き出すのは大変だったんですが、取材をする中で今抱えている悩みですとか、安倍(晋三)さんとの確執の部分だったり、本音をこぼしているところがあるので、今回の映画でそういったところを伝えられたらな」と、撮影の裏話を明かした。
「石破さんが総裁選で負け続けて、自民党内で冷や飯を食べさせられていると言われていますけど、非常に正しいことは正しい、間違っていることは間違っていると、時の権力者に対しても厳しく言うところが逆に煙たがられて、党内の立場がなくなってしまうということがあったんですけど、ある意味、そういったことは会社などの組織でも起きていると思うのでご覧いただいている皆さんに近しいものを感じてもらえたらいいなと思います」と語った。
「ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~(仮)」の酒井監督は「ももクロはどこに向かうのか、日本の芸能界にない存在になるんじゃないかと見つめてみたいと思った」と撮影に至った経緯を説明。
ももいろクローバーZの印象を問われると「オンとオフが変わらない人たち。今回、あらためて、メンバーそれぞれ個別にインタビューをさせてもらったんです。そうしたら、“そうなんだ”って思うような場面がいっぱいあったので、ファンの皆さんにもそう思ってもらえるな場面が多いのではないかなと思います。まだ、編集が終わっていないので、多くは言えないんですけど(苦笑)。また、ファンでない人にも、どうして彼女たちがたくさんの人たちの心に響くのかが分かると思います」と語った。
また、撮影秘話について問われると「ライブの裏側に入らせてもらったりしているんですけど…。ライブのリハーサルで彼女たちは、たくさんの曲のレパートリーがあるんですけど、それを全部が全部体の中に入っているわけではなくて、“今度のライブでこの曲やります”ってなると、それを体の底のほうからダウンロードし直すということをしていて、そこに僕は衝撃を受けました。いろんな曲の振り付けとかを忘れているんですけど、何回か踊ったら振り付けがよみがえってくるのを目の当たりしたんです。ただ、作品にはそこの部分は入らないと思います…」と明かした。
イベント詳細
「TBSドキュメンタリー映画祭 2022」
2022年3月18日(金)~24日(木)
東京・ヒューマントラストシネマ渋谷より全国順次開催
「TBSドキュメンタリー映画祭 2022」上演作品詳細(全11作品)
「ムクウェゲ『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」
監督:立山芽以子
「女性にとって世界最悪の場所」と呼ばれる、コンゴ民主共和国・東部地域。女性たちはこの地に埋まる鉱物資源の利権のため、武装勢力から性暴力を受け、恐怖に怯えている。そんな被害女性たちを無償で治療してきた婦人科医、デニ・ムクウェゲ。コンゴの女性たちの平和を願い、自身の命の危険を顧みず、女性たちの悲劇を世界に向け訴え続けている。私たちが生きる、同じ世界で起きていること。決して他人事ではない現実を追った。
「クライマー山野井泰史~垂直に魅せられた人生~(仮)」
監督:武石浩明
「誰も成し遂げていないクライミングを成功させて、生きて還る。」世界の巨壁に単独で挑み続けてきたクライマー・山野井泰史。彼は2021年、登山界最高の栄誉、ピオレドール生涯功労賞を受賞した。しかし、山野井の挑戦は終わらない。伊豆半島にある未踏の岩壁に新たなルートを引こうとしていた。そして再びヒマラヤにも…。“垂直の世界”に魅せられた男の激しい生き様とは? 山野井の生涯のパートナーである妻・妙子への取材も通して問いかける。
「ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~(仮)」
監督:酒井祐輔
女性アイドルの最前線を走り続けているももいろクローバーZ。そんな彼女たちも最年少が25歳、最年長は28歳を迎え、30代が目前に…。男性は何歳になってもアイドルを続けられるが女性は…? これまでもアイドルの常識を覆し続け、日本の芸能界で前人未到の境地を切り拓こうとしているももクロはどこに向かい、私たちに何を見せてくれようとしているのか? メンバーや関係者たちへのインタビューを通じて、その可能性と未来を見つめる。
「難病と私~萌々花20歳だから私は前を向く」
監督:山本一雄
病気を知ってもらう一番の方法は、自分の言葉で伝えること。「混合型脈管奇形」という、原因も根本的な治療法も分からない難病と闘う萌々花さんは自らカメラを回してくれた。記録されていたのは…毎日服用する大量の薬、おなかの血管の塊を取り除いた手術の痕、痛みで眠れない様子…赤裸々な闘病生活。そして、彼女の本音。病気のこと、友達のこと、母のこと、彼女が自立を目指すこれからのこと…萌々花さんが「今の私」を撮り続けた半年間の記録。
「永遠の総理候補・石破茂嫌われた正論(仮)」
監督:中島哲平
永遠の総理候補――石破茂。国民人気が高く、“次期総理・総裁”との期待の声も上がるが、総裁選にこれまで4度挑戦するものの連戦連敗。さらに退会者が相次ぎ、2021年12月、「石破派」解消。石破氏はなぜ党内のハグレ者となったのか? 今、何を考え、どう進むのか…? 本心を見せない石破氏の実像を知るため、同志、対立議員、石破派退会者、友人、妻などを直撃。石破氏に関わってきた人物たちの証言、石破氏への密着の中で見えてきたものとは…?
「完黙中村喜四郎~選挙無敗の男が負けた時(仮)」
監督:武田一顕、松原由昌
昨年の衆院選、「無敗の男」と呼ばれた男が初めて敗れた。中村喜四郎…初出馬から40年以上、あっせん収賄罪で逮捕、起訴中の選挙でも当選。前科1犯、ムショ帰りの身でも勝ち続けた「選挙の鬼」である。その男がなぜ負けたのか…。そして、もう一つの敗北、総理候補を奈落の底に突き落とした“あの事件”と、その取り調べで“140日間完全黙秘”を貫き通した真意とは。数々の逆境を乗り越えてきた不屈の政治家・中村喜四郎の生き様に迫る。
「戦争の狂気戦場特派員が見た中東和平の現実(仮)」
監督:須賀川拓
それはまるでカミソリのように鋭く、その大きさからは想像できないほどズシリと重かった。イスラエルがガザに投下した爆弾の破片は、いとも簡単に体を切り裂く。「精密誘導弾だから、人道的に配慮している」とイスラエルは主張する。対するイスラム組織ハマスは4000発ものロケット弾を無差別に放った上で「イスラエルが境界封鎖を解けば軍事施設を狙う精密兵器を作る」と開き直った。現場を歩き、集めた証言から浮かび上がる戦争の残酷な現実に迫る。
「日の丸~それは今なのかもしれない~(仮)」
監督:佐井大紀
1967年2月9日、街頭インタビューのみで構成されたドキュメンタリー番組『日の丸』がTBSで放送された。「日の丸と言ったらまず何を思い浮かべますか?」「日の丸の赤は何を意味していますか?」「あなたに外国人の友達はいますか? もし戦争になったら、その人と闘うことはできますか?」「日の丸を振ったことがありますか?」。2022年と1967年、2つの時代の『日の丸』インタビューの対比を中心に日本の姿を浮かび上がらせていく。
「池袋母子死亡事故「約束」から3年(仮)」
監督:守田哲
3年前、当時87歳の男が運転する乗用車が暴走し、最愛の妻と娘を亡くした松永拓也さん。事故の裁判は「禁錮5年」の実刑判決で終結したが、松永さんの葛藤は終わらない。遺品の整理をする手は、慟哭(どうこく)とともに止まった。収監直前に自らの過失を認めた加害者の飯塚幸三受刑者。心境の変化に至るまで何があったのか。社会に衝撃を与えた高齢ドライバー事故の遺族と加害者を、3年間にわたり取材した真実の記録。
「ライブで歓声が聞こえる日コロナ禍に抗う音楽業界(仮)」
監督:川西全
5人組メタルバンド「HAGANE」。彼女たちの“晴れ舞台”初ワンマンライブは新型コロナの感染拡大で無観客に。それから今日まで観客はライブで声を出すことが禁じられている。水際措置で開催困難となった海外アーティストの来日公演。洋楽プロモーターは2年以上“本業”ができず、先も見通せないままだ。観客の“声出し”はいつ解禁されるのか。海外アーティストが日本でライブをする日はいつ来るのか。コロナ禍に生きる音楽関係者の苦悩を描く。
「地下鉄サリン被害者家族の25年~さっちゃん最後のメッセージ~(仮)」
監督:西村匡史、神保圭作
「家族みんなで支えていたことが、さっちゃんにとって本当に幸せだったのだろうか。辛い辛いで生きていたのではないだろうか」。2021年3月、浅川幸子さんの一周忌で、兄の一雄さんは涙を拭った。地下鉄サリン事件で重い障害を負いながらも、懸命に生きてきた幸子さん。傍らには在宅で介護し、いつも寄り添い続けた一雄さん一家の存在があった。突然、襲いかかった苦難に、被害者家族はどう向き合ったのか。さっちゃんと家族の25年の記録。
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