Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔が主演、上村聡史が演出を務める舞台「野鴨-Vildanden-」のプレスコール及び取材会が9月3日(土)に行われ、藤ヶ谷をはじめ、忍成修吾、前田亜季、浅野和之が登壇した。
「野鴨」は、シェイクスピア以後、世界で最も盛んに上演されてきた劇作家とも言われるノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンが1884年に発表した珠玉の名作。納屋を“嘘”、外の世界を“真実”、そして“野鴨”を人間に例えることで、自己欺瞞(じこぎまん)によって自らを守ろうとする人間の弱さや、独りよがりの正義を振りかざす愚かしさを描いている。
理想を追い求め、真実こそが正義だと信じてやまない“正義病”のグレーゲルスを演じるのは、アイドル活動にとどまらず、俳優として舞台・映画・ドラマで活躍し続ける藤ヶ谷太輔。
妻と娘に恵まれ幸せに暮らしているグレーゲルスの幼なじみ・ヤルマールを忍成修吾、豪商ヴェルレと関係のあった過去を持つヤルマールの妻・ギーナを前田亜季、軍の元中尉という過去の栄光から一転、今は落ちぶれてしまったヤルマールの父・エクダル老人を浅野和之が演じる。
開幕を迎えるに当たり、藤ヶ谷は「この作品はすごく難しく思われる方もいるかもしれませんが、現代に通ずる要素がたくさん入ってますので、ぜひ見ていただければなと。そのためには我々がしっかりと繊細なお芝居を届けなくてはいけないというドキドキと興奮と、ちょっとの怖さと、いろいろな感情が入り混じっている状態です」と。
「昨日はせりふを飛ばす夢を見ました。最悪です(笑)」と告白しつつ、「(周囲の)皆さんを信じて、皆さんからエネルギーをもらって、カンパニーで最後まで走り抜けられたらなと思います」を意気込んだ。
続けて、共演陣の印象を問われると、まず忍成について「一緒にお芝居をやらせていただく場面が多く、頼りにしている存在です。ただ、結構抜けている部分もあるので、そのおかげで場が和むこともあります(笑)。あと、最近お子さんが生まれまして、すごくきれいなお顔をしているので、その写真を見て癒やされています」と語る。
それを受け、忍成は「普段みんなで雑談している時は笑顔のすてきなかわいらしい方なんですけど、舞台に立ったらオーラが違って、すごく色っぽくて圧倒されました。お芝居も、回数を重ねるごとにすごくコミュニケーションが取れるようになって、とても勘の鋭い方なんだなという印象」と藤ヶ谷を称賛。
いっぽう、前田からは「藤ヶ谷さんは真面目で、すごく真剣に取り組まれる方。ただ、通し稽古をした後に、あるシーンのダメ出しで『色気が漏れすぎている、ここはもうちょっと抑えて』という指摘があって(笑)」というエピソードが。
藤ヶ谷は「ありましたね、『抑えてくれ』と。(色気があると言ってもらえるのは)すごくうれしいことなんですけど、自分でコントロールできるものではないので…(笑)」と困惑しつつ、「僕の役は、ある意味“美しさ”が必要なキャラクター。ただ、普段の色気をちょっと落とした状態でお届けできたら。普段を“100”としたら“20”くらいで」と笑顔を見せた。
続けて、浅野も「藤ヶ谷君はお芝居の勘がいいし、せりふを入れるのも早い。色気がちょっと憎たらしいけどね(笑)。忍成君と、2人がこの話の主軸になっているので、ぜひじっくりとご覧ください」とアピールした。
また、長期間に及んだという稽古中の息抜きについて問われると、「休みの日に、1人で車に乗って海を見に行きました。でも、その移動中も稽古の時の音声を聞いていて、結局オフれていないですね(笑)」と藤ヶ谷。
子供がもうすぐ2か月になるという忍成は「最近はお芝居の事を考えているか、家のことを考えているか。でも、全く違うことなので、それが切り替えになっていたかな」と。前田は「集中力のいるお芝居なので、稽古が終わった後はみんなでフッと息を抜いてしゃべったり、用意してくださったものを食べたり」とそれぞれ回答。
浅野は、「Netflixでドラマを見てます。でも今回、みんな本当に静かなんですよ! 無駄口をきかないというか。こんな静かな稽古場はなかなかないです(笑)。彼(藤ヶ谷)の役がみんなと敵対している役だから、和気あいあいって感じにもいかなかったしね」と裏話を明かした。
そして、本作が古典作品への初挑戦となる藤ヶ谷は、演劇への思いを「僕は表現するということをやり続けたいので、いろんな方と出会って自分を変えていただきたいですし、自分の新たな一面を見てみたいという思いがずっとある」と。
「僕らのファンの方が見に来てくださった時に、『演劇って面白いな』と感じてほしい。僕が出ていなくても、『劇場行こうかな、この演出家の人のまた見てみようかな』という感じで演劇が広がっていったらいいなと思いますし、演劇ファンの方にも『藤ヶ谷ってキスマイの人なんだ』とグループを知っていただける機会になれば。いろんな可能性を信じて、怖がらずに挑戦し続けたい」と前を見据えた。
そして最後に「この作品は、本当に全てにおいて細かいところまでこだわっています。そういうところまで皆様に届くと信じて作っておりますし、テーマも今に通ずるものがたくさん入っていますので、しっかりと見ていただけたらなと思います。劇場でお待ちしております」と呼びかけ、取材会を締めくくった。
東京公演は世田谷パブリックシアターで9月18日(日)まで上演、その後は兵庫での公演が予定されている。
作品情報
「野鴨-Vildanden-」
作:ヘンリック・イプセン
訳:原千代海
演出:上村聡史
出演:藤ヶ谷太輔、忍成修吾、前田亜季、八幡みゆき
伊達暁、吉野実紗、山森大輔、齋藤明里、村上佳
大鷹明良、浅野和之
■東京公演
2022年9月3日(土)~18日(日)
会場:世田谷パブリックシアター
■兵庫公演
2022年9月21日(水)~25日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール