「第34回ヤングシナリオ大賞」の受賞会見が行われ、大賞を受賞した市東さやかさん、佳作を受賞した本山航大さん、井本智恵子さん、伊藤優さんが出席した。
過去に坂元裕二、野木亜紀子などの名脚本家を輩出し、昨年大賞を受賞した生方美久が現在放送中の木10ドラマ『silent』の脚本を担当していることでも話題の「ヤングシナリオ大賞」。「フジテレビらしいキラキラしたドラマを意識した」(審査委員長・中野利幸/フジテレビドラマ映画制作部部長)という今回、市東さやかさん(30)の「瑠璃も玻璃も照らせば光る」が大賞に選ばれた。
元看護師で現在は神戸看護大学大学院に在学中の市東さんは、「どんどん選考が進んでいくのを見ていると、誰か止めてくれないかなと思ってしまうくらい怖くなってきたところもあった」と本音を明かし、「いざ受賞のご連絡をいただいたら、腹をくくれたというか、”やってやるぞ”という気持ちになることができました。私はスクールなどに通っておらず、専門的に学んだこともなく、経験もなくて。そういうところをカバーできるほどいろいろな作品を見ているかと言われるとそうでもないので。得体のしれない存在なんじゃないかなと思うのですが、そんな私に賞をくださった局の方々の器の大きさ、チャレンジングな心に救われています。微力ではありますが、恩返ししたいと思っております」と語った。
「夜が明けても」で佳作を受賞した本山航大さん(29)からは、「僕が書いた作品は、“アセクシャル”という、恋愛する気がなかったり、性欲がない方々を中心にした物語です。最近は”幸せ=結婚”という認識ではない中、結婚や出産を諦めた方々がかけがえのない人と出会ったら、誰かと一緒にいるという選択肢を増やしてもいいんじゃないか? という疑問から作り上げました」と作品を書いた理由を。
元佐賀新聞の記者だった本山さん。「上司に『疑問と好奇心を持て』と教えられ、それが作品づくりの根幹になっていると思います。新聞記者時代は、僕の名前ではなく新聞社の名前に頼って文章を出すことにコンプレックスがあったので、自分の名前で何かを出せるようになりたいと思い、4年かかって賞を受賞することができました。新聞記者のときと同じように、なかなかスポットが当たらない方々に光を当てるような作品を書いていけたらと思います」とこれまでの経緯についても明かした。
「ラストチャンス」で同じく佳作を受賞した井本智恵子さん(36)は、「7年前の『第27回ヤングシナリオ大賞』で最終選考まで残ったのですが、そのときは落ちてしまって、今回7年ぶりに応募させていただきました。今、生方さん効果で特に注目されている中で受賞することができてうれしく思っております。私が書いた作品は『ラストチャンス』という40代女性の妊娠のラブストーリーなのですが、これからもワンチャンスをねらってつかんでいきたいと思います」と笑顔で喜びを。
そして「父を還す」で同じく佳作を受賞した伊藤優さん(27)は、「私はもともと舞台俳優を目指していまして、その中で脚本を書いて、自分で上演するということをしていました。でも、舞台俳優よりも脚本を書いている方が楽しいな、生きてるなと思って、脚本を書いていくことに決めました。2年くらい前にドラマの脚本を書くようになって、今回佳作をいただきましたが、助けられたという気持ちが大きくて。覚悟を決めてやらないといけないと思いました」と決意を表明した。
「今後どのような作品を書いていきたいと思っているか」という質問に対し、市東さんは「私が脚本を書いてみたいと思ったきっかけとなったのが、宮藤官九郎さんの作品でした。温かいコメディや宮藤さんのセンスが光っているところに憧れているので、そういうものを書きたいなと思っています」と目標にしている人物を明かす。
続けて、「もともと看護師として、いろいろな人の人生を見させてもらうと、他人は自分にないものを持っていて。それは人が一人で生きていけず、誰かと一緒に生きていく理由にもなるんだなと感じました。なので、人との関わりを大事にしながら書いていきたいと思います」と回答した。
本山さんは「スケールの大きい話ではなく、小さい作品を書きたいと思っています。2年前の『フジテレビヤングシナリオ大賞』で2次選考通過後に落ちたとき、向田邦子さんの本に出会いました。真摯に人を描いて見せていくという作風に憧れているので、人をしっかり描いてその心情を丁寧に描く、小さな話で面白いと言ってもらえるような書き手になりたいと思っています」と話した。
井本さんは「私はもともと編集者で、現在ライターをしていますが、編集者時代にホストクラブやキャバクラなどの取材をしていたので。夜の世界のお話も書きたいですし、それぞれのジャンルのエンタメを書きたいと思っています」と前職を生かした作品づくりがしたいと言及。
伊藤さんは「私が脚本を書く上で心がけていることは、見た人の心が解放されるような作品にすること。見終わったときに、見た人の心が癒やされたらいいなと思っています。作品を見て、自分を愛してもいいかなと思えるような作品を書いていきたいです」とコメント。
さらに、看護師をしながら脚本家を志した尋ねられた市東さんは、「看護師の仕事もすごく好きな仕事なので、脚本の道を選ぶかどうかすごく悩みました。仕事柄、自分は絶対いつか死ぬんだと思うことがよくあって。今この賞を辞退して看護師の道を選んだら、絶対死ぬときに後悔すると思って、この道を選ぼうと決めました」と明かした。
続いて、「映画、漫画、舞台などさまざまなステージがありますが、ドラマの脚本に興味を持ったきっかけは? また、脚本を書くに当たってどのように勉強したか」という質問。市東さんは「私はドラマ以外にも映画や戯曲の脚本も書きたいと思っていて、そのコンクールにも応募していました。ただ、宮藤さんのファンになったことが脚本を書こうと思った理由であり、その宮藤さんはテレビドラマをたくさん書かれていますし、ドラマの脚本も書けるようになりたいと思っています。(脚本の)勉強は独学ですが、図書館でシナリオの本を借りてきて勉強しました。置いてあるものは全部読んだと思います。それと、子供の頃から妄想することが好きで、寝る前に話を考えてから寝ていたので、それが練習になっていたのかなと思います」と脚本家を志したルーツを明かした。
本山さんは「シナリオか小説か、というところは考えていました。新聞記者をしていたときに、新聞は小説的な文章をあまり求められていないなと思っていて。シナリオも私的な文章ではなく、簡潔にまとめなければいけないところがあったので、そこに親和性を感じて書くようになりました。ドラマと映画が小さい頃から好きだったのもあり、ドラマの脚本の勉強を始めました。勉強法は、とにかく自分で書いてみてシナリオコンクールに応募して、自分の中での出来と周りの評価を比べながら自己評価を繰り返していった感じです」と。
井本さんは「もともと書籍の編集をしていて、一番売れて35万部でした。そのときに、テレビドラマってものすごく人に伝わるな、と思いました。より一人でも多くの人に届けるためにはどの媒体がいいんだろうと思って、となるとテレビドラマかなと思ったので、ドラマの脚本に挑戦しようと。勉強はシナリオセンターに通ったり、過去の受賞作を全部読んで分析したりしました」と『ヤングシナリオ大賞」を選んだ理由を述べた。
伊藤さんは「私はもともとドラマが好きで、新しいクールが始まったら絶対1話は見ようと思っています。それもあってドラマの脚本を書きたいと思いました。2年前くらい前からいろいろなコンクールに応募し始めて、1次や2次に通るようになったのがドラマの脚本だったので、ドラマの脚本を書いていこうと決めました。勉強は、独学です。とにかくたくさん書いて、自分の方向を見つけていきました」とコメント。
そして、今後書きたい作品の構想を聞かれた市東さんは、「まだはっきり構想があるわけではないのですが、私が最近離婚をしたので、離婚をテーマにした作品を書きたいと思っています」と明かした。さらに、自分の作品に出てほしいキャストはいるかと聞かれ、「阿部サダヲさんの大ファンで、どんな役もできるところがすごくカッコいいなと思っているので、阿部さんがしゃべるせりふを書けたらと思います」と今後への期待も込めて明かした。
なお、今回大賞に選ばれた「瑠璃も玻璃も照らせば光る」はドラマ化され、12月27日(火)にフジテレビ系で放送を予定している。
番組情報
第34回フジテレビヤングシナリオ大賞『瑠璃も玻璃も照らせば光る』
フジテレビ系
2022年12月27日(火)午後1時45分~2時45分
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