7月1日(土)より東京・俳優座劇場にて上演される「笑ってもいい家」で、舞台デビューを飾ることになった中村アンさん。粟島瑞丸が脚本・演出を手掛ける本作は、都会から離れ、山奥で共同生活を始めた男女が織り成す物語。今回のインタビューでは、初の舞台に臨む心境と共に、1人の女性として今思うことなどを話してくれた。
◆初舞台のオファーを受けたとき、どんな心境でしたか?
以前から舞台に興味はあったんです。そんな中、粟島さんに声をかけていただいて。うれしかったですが、私は初めてのことに挑戦するのに時間がかかるタイプでもあるので、悩みました。心に決めたら飛び込めるんですけど、ちゃんと決心するまで勇気が出ないんですね。ましてや、舞台はお金を払って見に来ていただくわけだし、そんな責任を自分が負えるのだろうかと。この世界に入って初めてテレビに出るときと同じぐらい、未知の世界に飛び込む感覚でした(笑)。
◆本作の内容やストーリーを聞いて感じたことは?
登場人物がそれぞれ問題を抱えていて、それが明らかになり、みんなでどう向き合っていくのかというお話になっているんですね。誰もが同じ状況になりそうな、リアリティのある理由も多くて。彼らの共同生活をこっそりのぞき見しながら、もし自分だったら…みたいに考える作品になるのではと思いました。
◆演じる朱音はどんなキャラクターでしょうか?
ほかの人と同様に、朱音にもちょっと秘めたものがありながら、でも生きていくことに真剣に向き合っている人なんです。ポスターの写真を見ると一見、暗そうな雰囲気ですけど、そんなこともなく。むしろ、いつもの私より元気ですね(笑)。あとは中山麻聖さん演じる弟と一緒に知らない土地へ移り住むぐらいなので、家族思いでもあるんだと思います。
◆中村さん自身は他人との共同生活に向いていると思いますか?
向いていないと思いますね。1人暮らしが長いから、1人の気楽さを知っちゃってますし。たまに実家に帰ったときもすぐ、1人になりたいなって(笑)。生活スタイルの違いも結構、気になっちゃうほうなんです。水回りの汚れとか、あまり気にしない人もいるじゃないですか。私はきれいにしていたいなと思うから、ちゃんとルールを決めておかないと、ストレスになるだろうなと。ドラマ『着飾る恋には理由があって』みたいに、広くてきれいな家でのルームシェアだったら何の問題ないんですけど(笑)。共同生活にはいいところもあるけど、実際は大変なことも多いんだろうなと思いますね。
◆稽古の手応えはいかがでしょうか?
最初はやっぱり不安でしたけど、共演する皆さんにお会いして動き出したら、向かう先が見えてきて。前向きに頑張ろうって気持ちになれました。みんなで同じゴールに向かっているのが心地よく、体を使ってせりふや段取りを覚えていく感じが新鮮です。「これがセットに使うテーブルです」「これが椅子です」と見せていただくと、こうやって少しずつみんなで作ってくんだなと実感が湧いてきています。
◆そういう共同作業感はいかがですか?
割と好きですね。高校と大学でチアリーディングをやっていたから、団体行動には慣れているんです。当時も同じゴールに向かって、ずっと一緒に行動していて。それこそ夏になると、合宿もありましたし。公共の場にいるときの振る舞いとか、メンタルもフィジカルもいろんな意味で鍛えてもらったなと。だから今、稽古で毎日のようにみんなと顔を合わせて、同じスケジュールで動いていると、どこか懐かしさもあります(笑)。
◆映像とは違うお芝居が求められると思いますが、どんなことを意識していますか?
やっぱり、広い空間に向かって大声を出すということが新しい感覚で。声を遠くに投げかけるなんて、CMでしかやったことありませんし(笑)。普段のお仕事とはエネルギーの使い方が違うなと思いながらも、そこは自分が超えたい壁だったりもするので、いい勉強になっています。今回、終演後にアフタートークがあって、お客さんを前に話す機会があるので、そういうのも楽しみです。
◆先ほど、登場人物がみんな悩みや秘密を抱えているというお話もありましたが、彼らと同世代の中村さん自身も分かるところはありますか?
私も一昨年、髪を切るまで、もがいていたところがあったんです。初めてドラマの主演をやらせていただいた頃はまだ、どうやったらうまく感情が表現できるのか分からなくて。そんな中、映画「名も無き世界のエンドロール」で感情を出すお芝居を経験して、そこから違う人になることの意味が少しずつ分かってきたような気がして、お芝居が好きになったんです。振り返れば、本当に自分はお芝居をしたいのかなと思ったこともありましたが、共演者の方々と出会い、刺激をもらって。ようやく今、やっと胸を張ってお芝居が好きだな、もっと頑張りたいという気持ちが固まった気がします。
◆お芝居への意識が変わり、日々の過ごし方も変わりましたか?
いい意味で自分に対し、あまりストイックさを求めなくなったと思います。以前は太っちゃダメだ、鍛えてなきゃという思いがつきまとっていて。役を演じるというより、“中村アン”をキープするのに必死だったんです。でも、たまにちょっと太ったり、痩せたりしているのも人間らしくていいよなと思えるようになって。おかげで自分の内面と向き合えるようになったし、お芝居的には今のほうが正しいのかもしれないなと。むしろ今のほうが、柔らかい印象でいいよと褒められたりもしますし(笑)。
◆そんな自身の生活の中、これだけはと決めているルールはありますか?
朝、白湯を飲むことですね。昔は好きじゃなかったんですけど、自分を変えるために、嫌いなことも続けてみようと。続けていたら好きになって、肌の調子もよくなって。それまでは朝、まずはコーヒーからみたいな生活だったので、胃も荒れやすかったと思います。だんだん、頑張らないと昔のままではいられなくなってきたし、体をいたわることも大事ですよね。
◆「笑ってもいい家」というタイトルにちなんで、日々の生活の中で思わず笑える時間はありますか?
YouTubeで芸人さんの動画を見ているときですね。最近はTikTokを空き時間や寝る前に見て、めっちゃ笑っています。『有吉の壁』みたいな即興系のネタや、中川家さんの動画は好きですね。あと、パンサーの尾形(貴弘)さん。『水曜日のダウンタウン』を見ていると、すごいエンターテイナーだなと思って。純粋に尊敬しています。
◆尾形さんが聞いたら喜んでくれそうですね。
尾形さんもずっとサッカーをやってきた方ですし、体育会系メンタルの人同士、通じるものがあるのかも(笑)。以前、特番のとき、帰りの新幹線が一緒で。スマホの電池がなくなりそうだったから、尾形さんに充電器を借りたんです。ちょっとビックリしていましたね。それまでほとんど面識なかったから、ドッキリじゃないかみたいな(笑)。でも、すごく助かりましたし、そこからさらに尾形さんのことを本当にいい人なんだって思うようになりました。
◆最後に、本番に向けての意気込みをお願いします。
受け取り方は人によって違うお話だとは思いますけど、登場人物の誰かに共感したり、他人事ではないと感じながら見ていただけたらと思います。そして私たちとしては、笑えて、泣けるものにできたらいいなと。そういうお客さんの反応が生で感じられるのもたぶん、舞台ならではだと思います。テンポ良く進んでいくので、全集中して見ていただきたいです。
PROFILE
中村アン
●なかむら・あん…1987年9月17日生まれ。東京都出身。AB型。出演作に連ドラ『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』『NICE FLIGHT!』『DCU~手錠を持ったダイバー~』など。
●text/小山智久
作品情報
演劇集団Z-Lion 第13回公演「笑ってもいい家」
2023年7月1日(土)~7月9日(日)六本木俳優座劇場
※アフタートークは7月4日(火)、7月7日(金)に開催
全ステージ完売につき追加公演2ステージが決定!
2023年7月7日(金)14時〜/7月8日(土)18時〜
※追加公演のチケット取り扱いはカンフェティのみ
https://t.co/gOyMls3wuc
【キャスト】
中村アン、中山麻聖、染谷俊之、森めぐみ
中村哲人、斉藤誠人、下尾みう(AKB48)、飯塚理恵
久保田悠来・高橋光臣
【スタッフ】
脚本・演出 粟島瑞丸
公式HP:https://napposunited.com/warattemoiiie/