妻に先立たれた孤独な男の人生を描いたスウェーデン映画「幸せなひとりぼっち」(公開中)。大ヒット公開記念イベントに、漫画家、TVコメンテーター・やくみつるが登壇し、主人公の偏屈オヤジ・オーヴェの共感ポイントから、恋愛論までたっぷり語った。
「週刊実話」映画評論コラムの執筆のために本作を鑑賞し、同誌で隔週連載を持つLiLiCoに「泣かせるじゃねぇか、バカヤロウ!」とすぐにメールしたというやく。本作のグッときたところについては「偏屈なところはかなり己とダブる。例えば、子供が近くにいるのに、赤信号で渡る人とか放っておくことができずに注意してしまう」と。さらに「ネコに心を寄せるシーンもね、非常によく似てて…私もネコや小動物を見るとほっとけないタイプ」と主人公・オーヴェには感情移入する部分が多いよう。
しかし、やくは「よくネコと会話をしていて、もちろん本心からの行動なんですが“これをどっかで誰か見ててくれないかな”“これがこの人の本性なんだなって分かってもらえるだろうな”ってやらしい面もありながらやってる(笑)」と本音もポロリ。
本作では、オーヴェが何度も自殺を失敗するといった、スウェーデン独特のブラックユーモアがふんだんに盛り込まれているのも見どころ。これについて「高福祉国家なんだけど、北欧の中では自殺率が高い国があったりして…病んでいるところも潜んでいるような風土の中で育まれるユーモアとは、こういうものなのではないか」と分析し、羨望の対象である高福祉国家のあり方に疑問を呈するひと幕も。
観客に若い女性が多いこともあり、オーヴェの妻の才色兼備ぶりから、話題は“いい旦那さんのつかまえ方”へ。「パートナー選びの際、寿司屋のカウンターでたのむネタが一緒の人がいい。最後まで一緒である必要はないが、最初のネタや穴子にいくタイミングとか」と運命の人の見極め方を明かした。
また、オーヴェのような人と仲良くなる方法を尋ねられると、先日初場所を迎えた大相撲にかけ「スー女(相撲好きの女子の呼称)の人が、“スー爺”(やくの造った相撲好きのジジィを指す造語)にいろいろ相撲について聞く感じで話しかけてほしい。彼らは語りたがってるし、スー女もちょっと組んでもらえれば理解も深まる」と独自の理論を繰り広げた。
最後に「この映画に邦題をつけるなら“ごんぼほりの詩”。東北北部の方言で、偏屈でどうしようもないような相手のことを言うのですが、男は弱さの裏返しで空いばりしてしまったりするので、自己批判・自己弁護しつつ観てしまう作品です」と不器用な男性を代表してコメントし、イベントを締めくくった。
「幸せなひとりぼっち」
新宿シネマカリテ ほか大ヒット上映中
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