映画「惡の華」公開記念舞台あいさつが行われ、主演の伊藤健太郎、玉城ティナ、共演の飯豊まりえ、秋田汐梨、原作者の押見修造、井口昇監督が登壇した。
思春期の暗黒面を体現する春日高男役の伊藤は「中学生役と聞いて、これは大変な作業になると思った」とオファー時を振り返りながら「今までやったことのない役柄だったので、役者としてやっていく上で大きなものになるだろうと感じました」と。出来栄えについては「僕としてはやるべきことをすべて出し切って、それをすてきに切り取って編集してもらえたので、最高でした」と胸を張った。
春日の中に自分と通ずる何かを見つけ、執拗につきまとう仲村佐和役の玉城は「原作でも圧倒的な存在感のある役柄なので、私が演じることによってプラスになる要素があればいいと思った。漫画を参考にしつつ、演じる上ではとらわれ過ぎないように心掛けました」と明かし「仲村に出会えてよかった」と。押見から「僕の中ではもはや“仲村佐和”ではなく“玉城佐和”になっている」と伝えられると、玉城は「うれしくて震える」と恐縮した。
文学好きが高じて春日と交流を深める常磐文役の飯豊は「なるべく『惡の華』ファンに違和感なく、邪魔しないように見てほしいと思った」と。玉城演じる仲村とのリンクも意識し「ニャハ!という笑顔にはこだわって、ティナの演じた仲村のニャハ!という笑い方に近づけようと、健太郎君の目の前で何度も練習していました」と明かした。
春日が片想いするクラスのマドンナ・佐伯奈々子役の秋田は「玉城さんや伊藤さんのオーラがすごいので、相談も怖れ多くてできないし…」と。すると、すかさず伊藤が玉城に向かって「怖いんだよ!」とツッコみ、玉城も「なんで私なんですか!一緒です!」と応戦し、会場を沸かせた。
撮影当時15歳の秋田について、伊藤が「女優さんとしてドシッと構えていて、15歳という年齢を感じさせずに、とてもやりやすかった」と話せば、玉城も「不安要素なんてまったくありませんでした」と手放しで絶賛した。
渾身のシーンについて聞かれた玉城は「終盤のお祭りに向かう場面は、仲村の弱さと春日の強さが入り混じるシーン。それまでに積み重ねられた関係性があっての場面なので印象的」と語った。
伊藤は「つまらない回答かもしれないけれど…全部のシーン!」と語り「パンツをかぶってる二宮金次郎像を窓から見ている春日のシーンは結構大事」と、自ら井口監督にアプローチしたというシーンを挙げた。
すると井口監督は「渾身のお芝居!」、押見も「漫画でやりたかった春日の文系不良感がバッチリ出ていました。原作者としてうれしい映画。全部分かってもらえたと思った」と太鼓判を押した。
ここで、サプライズで押見からキャスト陣にイラスト入りの色紙をプレゼント。自らの似顔絵入りの色紙を贈呈された伊藤は「光栄なこと。うれしい!部屋に飾ります!」、玉城は「宝物にします!」、飯豊は「汚れないようにラップで巻きます!」、秋田は「天井に飾ります!」と大興奮で喜んだ。
さらに、本作が11月にポーランドで開催される「ファイブフレイバーズアジアン映画祭」で上映されることも発表。この快挙に伊藤は「時代や国、宗教などいろいろなものが違っても、思春期に抱えることはみんな同じ。この映画を観た海外の方々に共感してもらえる自信はある。反応が楽しみ」と海外での広がりにも期待を寄せた。
最後に押見は「原作にある魂の部分を継承してもらえた。僕自身は、中学時代に観たかった映画です。観たらきっと気持ちが楽になったと思う。自分にとって大切な作品になりました」と。
8年前から本作の企画を温めていたという井口監督は「映画が完成し、このようにみんなと一緒に舞台に立てているのがうれしく、胸がいっぱい」と喜び「孤独な青春時代を送っている人たちの救いになってくれればいい」と映画に込めた想いをアピールした。
伊藤は「この仕事を始めて8年くらいたちますが、その頃から温められていた映画に今こうして主人公として立っているのが感慨深い。いろいろな気持ちが混ざって不思議な気持ちです」と明かし「誰かの背中を押してくれる作品になりました。たくさんの人に観てほしい」と呼びかけた。
映画「惡の華」
公開中
<ストーリー>
あの夏、僕は仲村さんと出会い、リビドーに目覚めた。
山々に囲まれた閉塞感に満ちた地方都市。中学2年の春日高男は、ボードレールの詩集「惡の華」を心の拠り所に、息苦しい毎日をなんとかやり過ごしていた。ある放課後、春日は教室で憧れのクラスメイト・佐伯奈々子の体操着を見つける。衝動のままに春日は体操着をつかみ、その場から逃げ出してしまう。その一部始終を目撃したクラスの問題児・仲村佐和は、そのことを秘密にする代わりに、春日にある“契約”を持ちかける。こうして仲村と春日の悪夢のような主従関係が始まった…。
仲村に支配された春日は、仲村からの変態的な要求に翻弄されるうちに、アイデンティティが崩壊し、絶望を知る。
そして、「惡の華」への憧れと同じような魅力を仲村にも感じ始めた頃、2人は夏祭りの夜に大事件を起こしてしまう…。
<キャスト>
伊藤健太郎 玉城ティナ 秋田汐梨/飯豊まりえ
北川美穂 佐久本宝 田中偉登 松本若菜 黒沢あすか
高橋和也 佐々木すみ江 坂井真紀 鶴見辰吾
<スタッフ>
原作:押見修造「惡の華」(講談社『別冊少年マガジン』所載)
監督:井口昇
脚本:岡田麿里
主題歌:リーガルリリー「ハナヒカリ」
製作:『惡の華』製作委員会(ハピネット ひかりTV ファントム・フィルム 角川大映スタジオ 日活)
配給・宣伝:ファントム・フィルム
公式サイト:akunohana-movie.jp
twitter:@akunohana_movie
©押見修造/講談社 ©2019映画『惡の華』製作委員会