4月17日(金)に公開される「劇場」の完成記念イベントに主演の山﨑賢人、松岡茉優、寛一郎、行定勲監督と原作者の又吉直樹が出席した。
本作は、又吉直樹の同名小説を映画化。劇作家を目指す主人公・永田と彼に恋をして必死に支えようとする沙希の生涯忘れることができない恋を描く。
演劇に身も心も捧げながら実生活では社会や周囲の人々とうまく協調できない不器用な青年・永田を山﨑が演じ、純粋に彼を愛そうとする健気なヒロイン・沙希を松岡が演じる。共演には、寛一郎、伊藤沙莉、浅香航大、井口理(King Gnu)ら多才な顔触れが集結している。
今回のイベントは、新型コロナウイルス拡散防止の観点から試写は実施せず、無観客で行われた。完成した映画について山﨑は「初めて原作を読ませていただいた時に絶対永田を演じたいと思いました。いざ撮影をさせていただいて、永田の人間としての弱さや愚かさが自分の中で魅力的で共感できますし、映画としての『劇場』がいい作品になりました」と語った。
松岡は「最初にお話を頂いて台本を読んだときに、言いたいせりふがたくさんありました。誰かを想ったことがある人には必ず響く作品になっていると思います。ご自身の大事な人やモノと重ね合わせながらこの物語を観てくれたらと思います」と。
寛一郎は「お客さんがいない中での舞台あいさつって慣れないですよね。なんか会見みたい(笑)。原作は出演が決まる前から読んでいて、永田と共通する部分は無いはずなのに、彼の感情の機微が痛いほど分かるんです」と語った。
又吉は作品について「『劇場』は大切にしている小説です。映像を見た時に、すごく原作を大切にしてくださっているのを感じると共に、僕自身が分かっていなかったことが映像を見ることで発見出来たりもしたので、原作を読んでくださった方にも観ていただきたいですし、自信をもってお勧めしたいです」とアピールした。
行定監督は「すごく思い入れのある作品になりました。原作が出版されてすぐに読んで、読み終わったらこの映画のラストシーンが思い浮かんだんです。これは他の人には撮らせたくない!と思ってプロデューサーにすぐ電話したのを思い出します」と明かした。
「ここは絶対観てほしいシーン」について山﨑は「ラストは絶対観て欲しいのですが、松岡さんを後ろに乗せて自転車で二人乗りするシーンですかね。すごく頑張ったので(笑)」と語り、続けて松岡が「私を後ろに乗せながら自転車を漕いで4ページ分ぐらいのせりふがあって、さらに長回し一本撮り。しかもかまないんですよ。信じられない!」と山﨑を絶賛した。
すると、又吉はそのシーンの松岡にも触れ、「松岡さんはせりふが無いのに態勢だけですごく感情が伝わってくるんですよね。あそこはぜひ観ていただきたいですね」と。さらに「永田と沙希が二人で部屋にいるシーンはどれも好きなんですけど、沙希が壁にもたれてベッドに座ってパンを食べているシーンがヤバいですよね(笑)。あの空間と二人の距離と関係性というのが大好きですね」と語った。
行定監督も「あのシーンの頃になると僕は松岡に指示を出さないって決めていて。最初のうちは指示していたんだけど、ことごとく松岡が違うことやってくるんです。それが面白いわけですよ(笑)」と。さらに『どこに座りたい?』って聞いたら『なるべく離れたところ』って言ってあそこに座ったんです。僕はもうちょっと近くてもいいだろうと思っていたんですけど、これが女性の気持ちなんだなと思いましたね。そこに対する永田の距離感も絶妙です」と撮影の裏側を明かした。
イベントの最後には、映画のロゴが書かれた垂れ幕と共に劇中の印象的なシーンの一つでもある桜並木をイメージした桜吹雪を散らせる演出が行われた。山﨑が「この映画は観終わった後、大切な人を思い浮かべる作品になっていると思います。生きていく中で上手くいかないこともたくさんあると思うんですけど、最後にはいい方向に向かっていくんじゃないかと思える作品になっているので、公開まで魅力を伝えていけるように頑張りたい」とあいさつし、イベントは終了した。
イベントの最中にはサプライズとして行定監督と親交の深いポン・ジュノ監督から「劇場」を鑑賞した感想が記載された手紙が届き、MCによって代読された。
<ポン・ジュノ監督 コメント>
成長と克服に関する物語で、果てしなく長く、終わりの見えないある時期を乗り越えていく物語ですが、青春期の男女の感情の繊細な調律師である行定監督ならではの熟練した、老練な腕前(力量)を再確認させてくれる作品でした。
山﨑賢人さんは不確かな天才から醸し出される不安感、不確かな天才に向けて沸き起こる憐憫、その全てを可能にしました。松岡茉優さんは天使の安らぎと、反対に天使からもたらせる息苦しさの両面を見事に表現していたと思います。二人の俳優の演技が素晴らしく、本当によかったです。
この作品はまさに行定監督にしか作り得ない、長くも繊細な愛の物語であるという点で非常に印象深かったです。またこの映画は、クリエイターあるいは芸術家が抱く不安や苦痛、偏狭さや卑怯な一面をリアルに描いており、その否定的な感情を乗り越え、成長に導いていく自己省察と忍耐までも描かれています。それは同じ作り手という立場にとって、一層胸に迫るものでした。
奉俊昊
映画「劇場」
4月17日(金)公開