日本の観測史上最大の地震となった東日本大震災時の福島第一原発事故を描いた映画「Fukushima 50」が、3月6日(金)に全国公開。この度、公開から4ヶ月が経過した7月9日(木)に丸の内ピカデリーで行われたカムバック上映記念舞台挨拶に、佐藤浩市と渡辺謙が出席し、改めて作品に対する想いと喜びを語った。以下、オフィシャルレポートを掲載する。
まず佐藤は「数奇なこの期間、この映画もいろんな変遷を辿りもう一度皆さんの前に立つことが出来て不思議な感じがしますけど、嬉しいです」、渡辺は「このような中で映画館に来てくださり、この作品に期待を寄せてくれている皆さんありがとうございます。この映画を様々な形でお客様に届けようとしてくださった関係者の皆さんありがとうございました」とそれぞれ感謝を交えながら客席へと挨拶。
コロナ禍で生活様式が変わった現在において本作を世の中に届ける意義を、佐藤は「このような状況の中でいったい人は何ができるのか、その方向を間違えると取り返しがつかなくなる。この映画で語りたかったものと今の状況は同じだと思います」と心中を明かす。
その上で佐藤は「人災にしない為に僕ら自身が考えながら日常を生きる。社会が変わっていく中でそれぞれが考えていくことを求められる、それを普通に振る舞えるように生活しなければいけない。そうしたことを考えるのにこの映画の中で起きていること、語っていることを改めて見ていただきたいと思います」とコメント。
渡辺は「この映画で描かれている原発事故と、今回のコロナは違う側面を持っていると思います。この原発事故では世の中が変革しなければいけなかったことに我々は気付かなければいけなったが、そのまま普通の生活に戻ってしまった。そして、今回の厄災が起きたことで、我々は何どうやって生きていけばいいのだろうと考えさせられている」と神妙な面持ちを見せる。
「でも4月まで舞台をやっていて、やっぱり熱とバイブレーションが必要なんですよ。その二つを取り上げられると成り立たないんですよね。なので新しい生活様式という言葉に少し引っかかるんです、我々エンターテインメントに生きる人間としては普通の生活様式をそこに取り戻したいという気持ちです。もっとパーソナルな新しい生き方を考えたいと思います」と力強い気持ちを話した。
そして、舞台挨拶当日は渡辺が演じた福島第一原発の最前線で指揮を執っていた吉田昌郎所長の命日でもあることを受けて渡辺は「今回の厄災が起きた時などに一番大切なのは“現場の声”なんですよ。現場が何を欲しているのか、現場では何が困っているのか。その声を切に聞いて戦ったのが吉田さん。この日に本作を皆さんに届けられる、現場を大切にした吉田所長をこの映画を通して感じてもらえたら吉田さんも喜ぶと思います」と吉田所長へのメッセージを感慨深げに語った。
さらに2人も作品の中では現場の最前線で戦う役を演じており、新型コロナ対応で医療に従事している人などの現場で戦う人たちについて、佐藤は「自分たちの知らないことが多すぎました。マスコミもちゃんと伝えてくれているのに、何故かみんなには届いていない。この不可思議さはいついかなる時もあると思う」と語る。
「今回のコロナ対応でも最前線で戦ってくれている医療従事者の方々は多少の偏見の中で生活を送らなければいけなかったことについて、我々が正確に物事を見聞きすれば避けられたと思うんです。この考えは本作で伊崎さんを演じると決まった時に思った気持ちと同じです」と、現在も最前線で戦っている医療従事者への言葉を噛みしめた。