渡辺は「見えない敵と向き合わざるを得ないその恐怖に尽きると思います。原発事故、コロナに関しても最前の注意を払わなければいけない。でも今やらなければいけないことにも対応しなくてはいけないというある種の葛藤の中で人の命と向き合う必要がある。その緊張感と恐怖は今回の厄災とも同じで、相当な緊張感とストレスのある中で対応してくれていたんだなと思いますね」と、現場で戦う人々が背負うものの重さを訴えた。
緊急事態宣言が明けて、営業を再開する映画館も増えてきた今、劇場で映画を見ることの魅力について、佐藤は「実際に劇場で映画を見て、暗がりから外に出た瞬間に感じる何かなんですよ。劇場で見た人じゃなければわからないものなんですよ。それでもやはり、今は劇場に行くことに躊躇するかもしれない、でも各々で感染予防をして映画を静かに見る、危険を自分で回避することが出来ていていれば、そこまで避けることなく映画を見ることはできると思います」としっかりした感染予防のもと、劇場に活気が戻ることを願った。
それに対し渡辺は「こんなに長い間仕事をしない時はなかったです。毎日1、2本は配信などで映画を見ました。やっぱり映画の良さは“体験”だと思います。暗がりの中、大きなスクリーン上で予告編が流れ、そして本編も凄く良い音で流れて今まで見たことのないような世界を見ることが出来る。そうして宅配便に邪魔されることもなく2時間近く一緒に体験ができることが本来の映画館だと思います」と映画館の存在意義を改めて語る。
「だから映画館に来なくなった若い人たちや今回のことで来なくなった人にも戻ってきて欲しいと思います。映画館も感染予防にすごく頑張っていますので、みなさんも自分自身の感染予防は行い映画館との相互関係で戻ってきて欲しいですね」と映画館で鑑賞することの魅力を伝えた。
最後に渡辺は「公開日の翌日に取材をしていたんですけど、舞台挨拶が中止になってしまった中でドルビーシネマに10人くらいお客さんが来てくれていたんですよ。だから浩ちゃんと、その人たちだけに挨拶しようとスクリーンに向かったんですよ。満員の中で挨拶に行くのも醍醐味なんですけど、こうした状況の中でも足を運んでくれたんだと2人で実感できて、いつかこういう日が迎えられると良いねと話していました」とカムバック舞台挨拶を迎えられた感謝を述べた。
佐藤は「今は本当にどの業界も大変ですけれど、数年経っていつも通りの劇場の姿に戻って、『次の世代にあんな時代があったね』とそんな時代を経験したからこそ今の仕事を大切にしようと言える時が来るのを待ってます」と、この苦境に対しての力強いメッセージを語り舞台挨拶は幕を閉じた。
<舞台挨拶概要>
映画「Fukushima 50」カムバック上映記念舞台挨拶
2020年7月9日(木)丸の内ピカデリー
登壇者:佐藤浩市、渡辺謙
<作品情報>
「Fukushima 50」
2020年3月6日(金)公開
出演:佐藤浩市 渡辺謙 吉岡秀隆 緒形直人 火野正平 平田満 萩原聖人 堀部圭亮 小倉久寛 和田正人 石井正則 三浦誠己 堀井新太
金井勇太 増田修一朗 須田邦裕 皆川猿時 前川泰之 Daniel Kahl 小野了 金山一彦 天野義久 金田明夫 小市慢太郎 伊藤正之 阿南健治
中村ゆり 田口トモロヲ 篠井英介 ダンカン 泉谷しげる 津嘉山正種 段田安則 吉岡里帆 斎藤工 富田靖子 佐野史郎 安田成美
監督:若松節朗
脚本:前川洋一
音楽:岩代太郎
原作:「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」門田隆将(角川文庫刊)
製作:KADOKAWA
配給:松竹、KADOKAWA
<WEB>
公式サイト:https://www.fukushima50.jp/
公式Twitter:@Fukushima50JP
公式facebook:https://www.facebook.com/fukushima50jp/
© 2020『Fukushima 50』製作委員会