都内の終末期医療専門病院に勤務し、命の終わりを真摯に見つめる現役医師・南杏子による「いのちの停車場」。今の日本の長寿社会における現代医療制度の問題点や、尊厳死・安楽死などの医療制度のタブーに正面から向き合い、それらに携わる医師、患者、その家族が描かれたその感涙の物語を、成島出監督、吉永小百合主演で映画化。
UICC(国際対がん連合)日本委員会が主催する「ワールドキャンサーデー LIGHT UP THE WORLD 点灯式」が開催され、122本目の出演作となる映画「いのちの停車場」で、初めて医師役を演じた主演の吉永小百合が登壇した。
2月4日(木)のワールドキャンサーデーは、世界各国でがんに対する意識と教育を高め、この病気に対して行動を起こさせることを目的としてさまざまな取り組みが行われる日。世界各地をライトアップするUICCのイベントである「Light Up the world」と連携して、UICC日本委員会では、全国16か所のライトアップ会場にて、点灯合図にあわせてUICCのテーマカラーである「ブルー」「オレンジ」へと夜空をライトアップした。
本作「いのちの停車場」で命と向き合う在宅医師・白石咲和子を演じた吉永小百合が登壇。がん患者の方々などの1人ひとりの人生に寄り添う医療の在り方を描くこの映画が、 UICCの「誰一人取り残されないがん医療」という理念に沿うとして、オファーを受けての出演となった。
吉永は、”I AM AND I WIL”(私はいま そしてこれから私は)というUICCで3年間続いてきたキャンペーンのスローガンにちなみ、「いのちの大切さを、映画を通して伝えていきたいと思っています」とあいさつした。各ライトアップ会場のイルミネーションが点灯した様子がスクリーンに映し出されると、吉永は「美しいライトアップで感動しております。乳がんのピンクリボンについては知っていましたが、2000年から行われているワールドキャンサーデーという日も忘れないようにできればと思います。私の家族や友人にもがんに苦しむ方々がいますので、良いサポーターになりたいと思っております」と感想を述べた。
続いて、もう1人のゲスト・音楽家の坂本龍一からの動画メッセージが紹介された。がんサバイバーとしても知られる坂本は、映像内で「世界的なパンデミックの中、通常の医療を受けられず、不安な気持ちを抱えるキャンサーペイシェンツ(がん患者)の方々も多いと思います。キャンサーデーはそういった方々への気づきになればと願っています。がんとともに生きる人たちは、僕自身を含めたくさんいらっしゃるかと思いますが、特にがんを抱えている子供とその家族に対してのサポートへが広がることを祈っています。皆さん、応援宜しくお願いします」と語る。
坂本とは沖縄県での慈善コンサートなど、さまざまな活動を共に行って来た吉永。坂本からのメッセージ動画を受け「2014年に坂本さんががんと闘っていると知りましたが、それから1年経ったあとは元気に一緒にお仕事をさせていただいて。そこから1年間お会いできていなかったところでご病気と知り、心配しております。しっかりと治療なさって、また元気で私たちの前に登場していただけたらと思います。みんな(坂本さんに)エールを送っておりますので、どうか早く元気になってほしいと、切に思っております」とコメント。
また、122本目の出演作となる本作で、初めて医師役を演じたことに対して質問されると、「今回は志願してドクターの役を演じさせていただきました。小さいころから体が弱くて、病院の先生にはずいぶんお世話になりました。演じてみると、今までの役の中で一番難しかったかもしれないなと思います。作品の中では、小児がんの方とのシーンもあり、寄り添う大切さ、というのをこの作品で改めて知りました」と撮影当時を振り返る。続けて、「それぞれの方がそれぞれの思いの中で生きていこうとしていると思います。ドクターの役を演じることで、(患者の方々に)どのように向き合うか、そして暖かいサポートが大事だと改めて思いました」と、本作を演じたとこによって「病」や「いのち」に対して心境の変化があったことを述べた。
さらに、「コロナでなくても、病院に行けずに苦しんでいる方もいらっしゃると思います。また、専門が違ってもコロナに尽くす(医師の)先生や、看護師さんもお休みなく働かれていると聞きます。私たち一人ひとりが気をつけて日常を送ることが(コロナに関わる)皆さんをサポートすることになるのではと思います」と、世界的なコロナ禍の中、がんだけでなくさまざまな病気と闘っている方やそのご家族、そして医療従事者の方へのエールを送った。
最後に、本イベントの感想として、吉永は「今回、初めてこのイベントを知りましたが、坂本さんの映像も拝見させていただいて、みんなでしっかり手を携えて生きていきましょう、という気持ちになりました。いつまでもこの会を続けていただきたいと思います」とコメントした。
「いのちの停車場」
5月21日(金)より全国公開
【STORY】
東京の救命救急センターで働いていた、医師・白石咲和子(吉永小百合)は、ある事件の責任をとって退職し、実家の金沢に帰郷する。これまでひたむきに仕事に取り組んできた咲和子にとっては人生の分岐点。父(田中泯)と暮らしながら「まほろば診療所」で在宅医師として再出発をする。院長の仙川徹(西田敏行)と訪問看護師の星野麻世(広瀬すず)、東京から咲和子を追いかけてきた野呂(松坂桃李)と共に、咲和子は様々な事情から在宅医療を選び、治療が困難な患者たちと出会い戸惑いながらも、まほろばのメンバーと共にいのちの一瞬の輝きに寄り添っていく。その時、最愛の父が倒れてしまい…。【作品情報】
【CAST&STAFF】
出演:吉永小百合
松坂桃李、広瀬すず、南野陽子、柳葉敏郎、小池栄子、みなみらんぼう、泉谷しげる、石田ゆり子、田中泯、西田敏行
監督:成島出 脚本:平松恵美子 原作:南杏子「いのちの停車場」(幻冬舎)
©2021「いのちの停車場」製作委員会 映画公式HP https://teisha-ba.jp/