公開後、動員&興行収入ともに初週を超えて2週連続NO.1を記録した「花束みたいな恋をした」。菅田将暉&有村架純が送るラブストーリーは“はな恋現象”を起こす大ヒット公開中。それを記念し、脚本の坂元裕二が登壇してトークイベントが行われた。
坂元は集まったファンに向けて「上映が終わったばかりで、映画の余韻に浸れないよという方もいらっしゃるかもしれません。朝帰りした日に麦君(菅田将暉)との良い思い出に浸っていた絹ちゃん(有村架純)が、両親に邪魔された時のように、僕が登場して上書きするのが申し訳ないなという気持ちです。耳障りな方はイヤホンをしてください(笑)」とあいさつする坂元を否定するかのように、会場は大きな拍手で迎えた。
本作の大ヒットに対し、どんな気持ちかと問われると「TikTokを見ていたら、高校生の男の子3人がトイレットペーパーを抱えて走り回っている動画をアップしていたり、カップルが多摩川を歩きながら、自分たちでナレーションをつけて動画を作っていたり、いろいろな人たちに楽しんでもらっているんだなと思うと、こんなにうれしいことはなかなかないです」と若者たちが映画を再現する動画を坂元も楽しんでいる様子。「皆さん解釈がそれぞれ違っていて、自分と照らし合わせる方もいれば、一歩引いて見る方もいるし、男女で考える方や、お1人おひとりが自分の思い出と重ねる場合もある。TVドラマだと皆がこう思っているから、と参考にしてその続きを書いたりもしますが、映画だと僕の手からはもう離れているので、こうやって見た人、1人ひとりの物語になっていくんだな、この映画はお客さんの映画になれたんだな、と感じてすごくうれしいです」と喜びをかみしめる。
また、「ドラマだとどこか見ていただいている実感があまりないんですが、今回は何かざわざわとくるものがあるんですよね。僕はまだ映画館に行けていないんですけど、映画館を回ってお客さんの様子を見ているプロデューサーの方が、『熱気がすごくて、お客さんが映画と戦っているようだ』と仰っていました。そういう熱みたいなものが、僕が一人で仕事部屋にいても何となく感じるんです」と、本作の大ヒットをひしひしと感じ、「この仕事は長いですが、作った作品が誰かのものになることはこんなに幸せなことで、このために作っているんだな、って初めて知って、尋常じゃない興奮をしています」と数多くのヒット作を手掛けながら、映画初のオリジナルラブストーリーを通じてこれまでにない感情が沸き立ったという坂元。
「なんで皆映画好きなのかな? って思っていたんですけど、こういう楽しみがあるんだなと気づきました。お話を頂けたら、またやってみたいなと思います」と、坂元が手掛ける次回作にも期待が膨らむ。さらに「土井監督は『花束みたいな恋をした』の続編をやりたいって言っていました。30代の麦と絹が見たいそうですが、5年後なんてあっという間ですからね。30代の恋というのもなかなかつらいものがあると思うので、『それはきついんじゃないですか?』と伝えたんですけど、土井さんはあまり普段こういうことを言わないのでよっぽどやりたいんだと思います」と続編計画も披露する場面も。
本作の好きなシーンを尋ねられると「いっぱいありますけど、絹ちゃんの転職について麦君とけんかするシーンで、転職先の『遊びを仕事に、仕事を遊びに』というポリシーを麦君が『ダサ』って言うんです。それに対して絹ちゃんが『ははっ』て笑うところが絶妙なんです! あ、これ聞いたことある! 怒りながら気を遣われている時の笑い声だ! と思いました。台本には『(微笑って)ま、そこはダサいとは思う』ってせりふを書いていて、有村さんが考えて演じていたのか、自然とそういう演技になったのか、分からないですけどすごいですよね。有村さんに聞いてみたいですけど、秘密にされそうです(笑)。あらかじめ設計してお芝居をされている方も存在しますが、有村さんはどういう考えで演じているのか分からないのがすてきですね」と挙げる。
最後に坂元は「次回は『劇場版ガスタンク』を皆で焼きおにぎり食べながら見たいですね。このような状況の中で映画を公開できてとても幸せです。期せずしてこの一年間、文化は私たちの中で何なのかということを問いたださないといけない時期を過ごし、映画や音楽、演劇界の中でもいろいろな岐路に立っています。その一端を担う映画となれたらうれしいです。皆さま、健康で元気にお過ごしください。また何かの機会でゆっくり、オールナイトでお話できる機会がくることを楽しみにしております。ありがとうございました。」とファンに向けてメッセージ。まだまだ止まらぬ“はな恋現象”をさらに盛り上げるイベントとなり、幕を閉じた。
映画「花束みたいな恋をした」は大ヒット公開中。