そして、今回のノミネートについて、中島は「“史上初”が多い」と言及。斎藤はコロナ禍を受けて「配信作品の位置づけが明らかに去年と変わった」と語り、その影響もあって、日本で授賞式前に事前に鑑賞できる作品が増えたことに「授賞式の楽しみ方が変わった。そこはすごくポジティブなところ」と受け止める。
中島が「今回、『ミナリ』も作品賞ノミネートに入っていますが、アジアの流れは今後も続くと思うか?」と斎藤に尋ねると、「数年前まではメキシコの監督たちが連続でオスカーを獲る“ラテンの風”があったけど、それがまさに去年の『パラサイト』以降、“アジアの風”が吹いてきた。明らかにかつての“ラテンの風”が“アジアの風”になっている」とうなずいた。
さらに2人は現時点で作品賞最有力との呼び声の高い「ノマドランド」についても語り合っていく。斎藤は「ノマドランド」について、原作本をAmazonで購入したことを明かし(※同作の主人公はAmazonの工場で季節労働者として働く)、「アメリカの高齢者の労働者の現状と僕らが気軽にタッチパネルで(Amazonからの配送を)お願いするものとの関連を含め、これは海の向こうの遠い話ではないと思った」と語る。
中島はクロエ・ジャオ監督にリモートインタビューしており、そのことについて斎藤は興味津々のよう。「Amazonの工場のシーンについても『常にリアルを求めていて、リアルとフィクションの端境を俳優さんに歩ませた』と監督はおっしゃっていました」と中島は明かしていた。
斎藤は「ミナリ」「ノマドランド」に共通する、主演俳優がプロデューサーを務め、企画段階から携わっている作品の持つ“強度”を指摘し「どの作品も素晴らしいけど、『ノマドランド』は前評判を含めて(受賞は)堅いなと現時点で思っている。時代にしっかりとコネクトしている」と自身の予想を口にした。
「ノマドランド」受賞を予想する一方で、斎藤が個人的に“イチオシ”と語るのは、アンソニー・ホプキンスが認知症を患う父親を演じた「ファーザー」だ。「すごくシンプルな作りで比較的地味な作品なんですけど、全部が伏線になっている」と称賛を送る。
また、作品賞候補作の中で、中島が「とても面白かった」と語るのは、最多10部門にノミネートされたNetflix配信作品「Mank/マンク」。「本当に楽しい2時間でした。映画に対するリスペクトが込められていて、興奮の1本でした」とイチオシ。
斎藤は現在でも未来でもなく、“過去”を描いた作品であることなどを含め、「位置づけが難しい。ハリウッドが何を尊重するか?」としつつも、自身もデヴィッド・フィンチャー監督は大好きな映画監督であると語り「(受賞は)あるかもしれない」とニヤリ。