斎藤工・板谷由夏・中井圭インタビュー
◆お疲れさまでした。初めての邦題付けはいかがでしたか。
板谷:難しかったね。
斎藤:一応決定しましたが、僕はちょっと後悔が残りますね。本当は誰も聞いたことがないようなタイトルを付けたかった……。
板谷:私は、このまま決まらなかったらどうしようと思っていました(笑)。私たちって普段は自分の意見をバシッと言うタイプではあるけれど、それでも案外決まらないものですね。
中井:3人とも基本的に根が真面目ですからね(笑)。真剣に考えすぎちゃうのかもしれないですね。
板谷:工くんはポスタービジュアルまで考え出したからね。自分でも映画を作っているから、トータルで考えちゃうんだよね。
中井:映画ファンの間で邦題問題ってありますよね。「なんだ、この変な邦題は」と言われてしまうことがある。邦題は配給会社の方が、どうすれば多くの人に届くのかを考え抜いた結果なのですが、一方で映画の作り手の思いも大切にしないといけない。そのバランスを考えると、映画ファンにとっては原題に近い邦題の方がいいのかもしれないですね。
斎藤:映画が面白かったので、愛着が湧いてしまったんですよね。映画が数日預かった子猫みたいな気持ちになっていた(笑)。
板谷:うん、本当に面白い映画だったからね。
斎藤:タイトルを付けるプロセスを見ていただいた上で、答え合わせのように作品を見てもらえればいいのかも。
◆つくづく映画のタイトルって面白いなと考えさせられました。皆さんは好きな邦題ってありますか?
板谷:「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車」は結構好きだったな。
中井:僕が好きなのは、「マッハ!!!!!!!!」。英題は“Ong Bak”で、タイの仏像という意味なんですが、誰もわかりませんよね。なんとなく凄さが伝わるから「マッハ!!!!!!!!」と付けたという。配給会社のチャレンジが伝わってきて好きですね。
斎藤:番組で紹介した作品だと、「なんちゃって家族」が好きですね。
板谷:うん、私もそれ好き。
斎藤:「ある朝突然、スーパースター」とか「恋のベビーカー大作戦」とか、ライトな感じがいいですよね。ターゲットにちゃんとアプローチしている感じがする。逆に、邦題を作らなくて正解の映画も多いじゃないですか。「トレインスポッティング」とか、原題そのままで良いという映画。
中井:そういう意味で印象的なのは、やっぱりジム・ジャームッシュ監督の作品群。たとえば「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」は、普通なら邦題を付けますが、あえてそのままにしている。作品の芸術性を損ねたくないという、配給側の強い意志を感じます。
斎藤:副題を付けるかどうかという問題もありますが、「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」は成功していますよね。ビジュアルで「IT」のリメイクだと判断できるかもしれないけど、「IT」だけだと内容が伝わりにくい。日本人ってキャッチコピーを大事にするところもありますし。
板谷:私は、原題とは全然違う感じのタイトルから妄想するのが好きですね。でもこうしてやってみて、全然違うタイトルを付けることが大変だということがよく分かりました(笑)。