芥川賞作家・平野啓一郎のベストセラー小説「ある男」が、妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝らの出演で映画化され、2022年に全国公開することが発表された。
本作は、映画化もされた「マチネの終わりに」(2016年刊行)に続く作品として、2018年当時、平野により発表された文学作品。「愚行録」(17)でベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門に選出、「蜜蜂と遠雷」(19)では、毎日映画コンクール日本映画大賞、日本アカデミー賞優秀作品賞など多くの賞を受賞し、国内外で高い評価を得る石川慶が監督を務める。脚本は「リアリズムの宿」(03)、「リンダリンダリンダ」(05)、「マイ・バック・ページ」(11)、「聖の青春」(16)など、数々の話題作を手掛けてきた向井康介。石川監督とは「愚行録」に続き2本目のタッグとなる。
物語は、主人公である弁護士・城戸が、“ある男”の真実に迫っていく、衝撃と感動のヒューマンミステリー。城戸は、かつての依頼者である里枝から、里枝の亡くなった夫「大祐」の身元調査の依頼という奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経験後、子供を連れて故郷に戻り、やがて出会う大祐と再婚。新たに生まれた子供と4人で幸せな家庭を築いていたが、ある日突然夫が不慮の事故で命を落としてしまう。悲しみに暮れる中、大祐の法要の日、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が訪れる。ところが遺影を見た恭一は「大祐じゃない」と言い放つ。愛したはずの夫・大祐は、まったくの別人だった。
「大祐」として生きた“ある男”は、いったい誰で、なぜ別人として生きていたのか。城戸は、“ある男”の正体を追う中でさまざまな人物と出会い、衝撃の事実に近づいていく。だが、いつしか城戸の心にも他人として生きた男への複雑な思いが生まれていく。
主人公の弁護士・城戸章良を演じるのは妻夫木聡。石川監督とは本作で3度目のタッグとなり、初の弁護士役に挑む。城戸に夫の身元調査を依頼する谷口里枝役は、安藤サクラ。映画への本格出演は「万引き家族」(18)以来、4年ぶりとなる。そして、里枝の夫となる谷口大祐役を窪田正孝が演じる。さらに、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、仲野太賀、真木よう子、柄本明らが顔をそろえる。
妻夫木聡/城戸章良(主人公・弁護士)役 コメント
人間のアイデンティティとは何かを問い詰めるこの作品との出会いは、自分の人生を見つめ直す良いきっかけとなりました。人生に正解はない。かといって間違いもない。どんな答えであってもいいと思う。だから恐れずに向き合ってほしい。見てくださった方にとって、この作品が人生の道標のような存在になるのであれば僕は幸せです。
安藤サクラ/谷口里枝(大祐を名乗っていた“ある男”の妻)役 コメント
私自身がこの作品がどんな映画なのか、なかなか想像ができません。ミステリーとひとくくりにしてしまうのはもったいないなと思いつつラブストーリーなのかサスペンスなのか…と問われるとこれまた分かりません。
でも現場では、ジャンルにとらわれず人間模様をやさしく繊細に、かつ淡々とシンプルに描いていたように思います。久しぶりの映画、石川監督の下、たくさん笑ってたくさん泣いて、苦しみながらも楽しく撮影させていただき、あ~私は現場が好きだ! と再確認しました。この作品だったからそう感じられたのだと思います。公開が楽しみです。
窪田正孝/谷口大祐(大祐を名乗っていた男。里枝の夫)役 コメント
ある男の静寂な心の中に蠢く「悍ましいナニカ」をずっと感じながら演じてました。人の皮を被った怪物が身体の中からずっと自分だけをみている。そんな支配されて壊れきった空っぽの心を里枝が少しずつ溶かしていく。里枝役のサクラさんはやはりとても刺激的で芝居の面白さ、やりがい、その答えをどこまでも追求していきたい衝動に駆られました。ある男が見ていただく方々にどんな感情を残すのか今から楽しみでなりません。
清野菜名/後藤美涼(「本物の」大祐の元彼女)役 コメント
今、日本映画を牽引する俳優陣の中におそれ多くも入れていただき毎日が刺激的でした。完成した作品を見るのを、心待ちにしています。
眞島秀和/谷口恭一(大祐の兄)役 コメント
大好きな石川組に再び参加することができて、大変うれしく思っています。しかし、石川組では繊細な緩急が求められますので試練の場にもなりますが、その緊張感の心地よさが石川組の魅力でもあります。
頂いた役がほんのちょっとでも映画のスパイスになってますように。
小籔千豊/ 中北(城戸の同僚)役 コメント
台本を読んで、撮影に入る前からビビり倒しておりましたが、撮影に入りあらためてとても素晴らしい映画に参加させていただいていると、恐縮しっぱなしでした。パッパと撮影していくものかと思いましたが、じっくり監督が向き合ってくださり、演出してもらえて助かりました。妻夫木さんはただの気のいい兄ちゃんで、撮影の合間では楽しくおしゃべりしていたんですが、本番はがっつり俳優オーラ全開出してくるので圧倒されました。すてきな映画のひとつのパーツになってしまった事を、ビビりながらもひそかに光栄に思っております。
仲野太賀/谷口大祐(本物・伊香保温泉の旅館の次男)役 コメント
石川組「ある男」に参加できたこと、とてもうれしく思います。脚本を読んだ時、この役の人生をたどってみたいと強烈にひかれました。それは物珍しさではなく、心に共感めいたものが湧き上がったからだと思います。
空白になってしまった時間に色を塗っていくように、実人生では経験できないような感情を手繰り寄せて、心を込めて演じました。
真木よう子/城戸香織(城戸の妻)役 コメント
台本を読んで「心憂い」そんな言葉が思い浮かびました。重く、深く、心がにじむような、、何と表現すればよいのか、、でもどこかで、こんな映画を待っていた。とても素晴らしい作品に携われたことが大変光栄です。
柄本明/小見浦憲男(戸籍交換ブローカー)役 コメント
初めての石川組、妻夫木さんとの共演、楽しかったです。ぜひ劇場で、翻弄されながら見てほしいです。
石川慶監督 コメント
シンプルなタイトルにひかれて手に取った『ある男』。 「これは誰もが映画化したがるに違いない」という思いと同時に「こんなに映画化が難しい小説もそうそうない」という、相反する感想を持ちました。でも、既に『ある男』に強烈に共鳴してしまっていた自分には、手を挙げないという選択肢はありませんでした。
この大きな挑戦に、妻夫木聡という役者が一緒に戦ってくれたことは、とても大きな意味を持っています。常に変わらず、そして常に新しく、底が見えずとも物語の深層へ、躊躇なく一緒に潜ってくれる、自分にとって唯一無二の存在です。そこに、安藤サクラさん、窪田正孝さん、清野菜名さん、眞島秀和さん、小籔千豊さん、仲野太賀さん、真木よう子さん、柄本明さんといった、日本映画界の最前線にいる俳優たちが集結してくれました。カメラの後ろで日々目撃した、あの奇跡のような瞬間の数々を、早く皆さんに届けたくてうずうずしています。
平野啓一郎 コメント
『ある男』は、私の小説家生活20年目のタイミングで刊行された長篇です。
前作『マチネの終わりに』で描いた「未来は過去を変える」という主題を、分人主義的に更に発展させ、「愛にとって過去は必要なのか」という切実な問いを追求しました。
重層的に入り組んだ複雑な構成美が持ち味の小説なので、映像化はなかなか難しいだろうと思っていましたが、素晴らしい監督と俳優陣に恵まれ、強く胸を打つ映画となったことに感動し、また感謝の気持ちを抱いています。
原作と映画、両方の世界を是非お楽しみください。
作品情報
「ある男」
2022年 全国ロードショー
出演:妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝
清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、仲野太賀、真木よう子、柄本明
原作:平野啓一郎「ある男」
監督:石川慶
脚本:向井康介
企画・配給:松竹
©2022「ある男」製作委員会