寺島しのぶ、映画「空白」で“一番怖い人”は古田新太「撮影前の姿と全く変わらないんだもの！」

9月23日（木・祝）に公開される映画「空白」のプレミアムトークイベントが開催され、古田新太、寺島しのぶ、?田恵輔監督が登壇した。

本作は第43回日本アカデミー賞三冠を獲得した「新聞記者」（19）、「MOTHER マザー」（20）、「ヤクザと家族」（21）など、意欲的・挑戦的なテーマの作品を次々と生み出しているスターサンズ・河村光庸プロデューサーが企画、「ヒメアノ～ル」（16）、「愛しのアイリーン」（18）、「BLUE／ブルー」（21）など衝撃とともにその才能を見せつけた?田監督とタッグを組み、現代の「罪」と「偽り」、そして「赦し」を映し出すオリジナル脚本で挑むヒューマンサスペンス。

見る者の心臓をあわだてる悪夢のような父親・添田充役を演じるのは古田。7年ぶりの映画主演作に挑む。土下座しても泣いても決して許されず、人生を握りつぶされていくスーパーの店長・青柳直人に、松坂桃李。本作が初共演となる古田と松坂が息もつかせない圧巻の演技を戦わせる。

公開に先立って行われた今回のイベントは、映画のタイトル「空白」にちなんで会場や衣装を「白」に統一し、くもりなき「空白」の空間で開催。さらに、松坂の土下座が大きく映されたスクリーンをバックに作品について語り合った。

まず、本作の魅力を伝えるために、進行役の赤ペン瀧川が、スクリーンに場面写真を写しながら本作のストーリー、それぞれのキャストの魅力などを紹介。映画本編を見て「大号泣した」という熱のこもったプレゼンを行った。

ひと息ついたところで感想を求められた?田監督は「宣伝スタッフが作っているものよりも出来がいいね！（笑）」と大絶賛。寺島も「…見たくなりますね」と気に入った様子だったが、古田だけは「見終わった気分」とつぶやき、会場の笑いを誘った。

脚本を読んだ感想を聞かれた古田は「脚本を読んだ時、なんで俺～？　と思った。ひとつも作品（の中で）でふざけてないから」と明かし、出演を決めた経緯について「たまたまスケジュール空いてたからね」と笑顔。一方、寺島は「すごいキャラクターだからあんまりやりたくない役だったけど（笑）監督のお話を聞いて、やはり本がとても良かったのでそれでやる気にさせられました」と振り返った。

そんな古田と寺島を起用した?田監督は「この脚本を書いているとき、韓国ノワールっぽさを感じたんですよね。ソン・ガンホが頭に浮かんで、日本の俳優でいうと…あ！　古田さんだ、とハマったので、イメージしながら書きました。あとは、古田さんのスケジュールが空いていたからです（笑）」と明かした。

登壇がかなわなかった松坂についての話題では、古田が「『パディントン』でご一緒して、その時から交流がありました。素直なお芝居をする人だなあと、イメージどおりで安心していました。ただ、撮影中にみんなでお酒を飲みに行ったりするんですけど、桃李だけは誘っても来てくれなかったなあ。多分役に入り込んでたからかな。と思ったけど、結局オールアップしてからも来てくれなかった…」とぼやいた。

寺島は「正直、もう少し違う役で出会いたかったかなあ。彼を守るために頑張っている人で、そこにうそはなかったけど、熱量が過剰すぎて、ちょっとアプローチかけても（松坂が）ひゅうっと引いていく感があったので…」と切ない気持ちで芝居していたこと明かした。

そんな古田と寺島のシーンはスクリーンではスリリングに描かれているが、?田監督は「桃李君は、古田さんと寺島さんを相手に、ゴジラとコングに挟まれてる気持ちでしたよね」とその状況を表現。古田が「監督、怯えている桃李君を見ているのがすごく楽しそうだったよね。（現場の雰囲気は）和やかだったけど、怯えているのは桃李だけ」と、松坂をいじった。

「全員被害者。全員加害者。」というコピーにちなみ、「こんな誤解されたことがあります」というエピソードを聞かれると、古田は「パンツにスカートを挟み込んだ女性を駅で見つけて、（教えてあげようと）声をかけたら『ひゃぁぁぁ』と驚かれて逃げてしまった」というエピソードを披露。

寺島は「私はシャイなので、ぶっきらぼうに冷たい言葉を発してしまうことがある。初対面の人には誤解されてしまうこともあるので、無闇にキツい言葉を言ってはいけないなと思う」と反省した。

本作の登場人物の中で一番怖い人を聞かれると、古田は「麻子（寺島）一択！　ああいう親切の押し売りする人、普通にいるじゃないですか。でも麻子さんはそれに気づかないまま生きていくんだろうなあとも思った」と言い切り、?田監督も「妙なリアリティを寺島さんから感じて余計に怖かった」と、草加部麻子のキャラクターと寺島の演技力を「一番怖い」と認定。

これに対して寺島は「チャーミングに演じたんだけどなあ」といいながら「私が一番怖いと思ったのは古田さん。だって撮影前にタバコを吸っている姿と、撮影始まった古田さん、全く変わらないんだもの！」と語った。

最後に公開に向けて古田は「面白い作品になりました。あまりこういうことを言わないんですけど、たくさんの人に見ていただきたい。答えが一つじゃないので、本来なら居酒屋で見終わった後に語ってほしいところです。いろんな人に見ていただいて、いろんな意見を聞きたい、老若男女皆さまに見ていただきたい作品です」とコメント。

寺島は「和気あいあいとした現場でしたが、出来上がりはとても緊張感のある作品になりました。評判も上々で演者としてうれしい限りです。スカッとする映画ではないが、少しでも皆さまの心に火がつけばいいなあと思います。よろしくお願いします」とあいさつ。

そして?田監督は「うまい人たちだけを呼びたいと思って作品を作りました。芝居ってこういうことなんだ、という経験したことのない“奇跡“をこのお芝居で感じました。それは映画の中に宿っているので、ぜひ皆さまに感じてほしいです」と呼びかけ、イベントを締めくくった。