「ジョゼと虎と魚たち」(03)、「メゾン・ド・ヒミコ」(05)、「のぼうの城」(12)などで知られる犬童一心監督が、世界的なダンサーとして活躍する田中泯の踊りと生き様を追ったドキュメンタリー映画「名付けようのない踊り」(2022年公開)が、第26回釜山国際映画祭に正式出品されることが決定した。
釜山国際映画祭ワイドアングル:ドキュメンタリー・コンペ部門では、世界中から寄せられた応募作の中から10作品のみが出品。本作が唯一の日本映画となる。犬童監督の作品が釜山国際映画祭で上映されるのは「メゾン・ド・ヒミコ」、「グーグーだって猫である」(08)に続き3度目となる。
田中は、1978年にパリデビューを果たし、世界中のアーティストと数々のコラボレーションを実現。そのダンス歴は現在までに3000回を超える。映画「たそがれ清兵衛」(02)から始まった映像作品への出演も、ハリウッドからアジアまで広がっている。
そんな独自の存在であり続ける田中を、「メゾン・ド・ヒミコ」への出演オファーをきっかけに親交を重ねてきた犬童監督が、2017年8月から2019年11月までポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影。この間に田中は72歳から74歳になり、5か国、48か所で90の踊りを披露。その一部を切り取り、一本の稀有な映画が誕生した。
同じ踊りはなく、ジャンルにも属さない唯一無二の“場踊り”を、息がかかるほど間近にいるかのように体感できる本作。いったい、田中はどんな道をたどってここまで来たのか。犬童監督は、「頭山」(02)で海外の名高い賞に輝いた山村浩二によるアニメーションを交えながら、情感豊かに田中の人物像をひもといていく。
田中泯 コメント
初めての映画出演が57歳。「たそがれ清兵衛」という侍映画で、時代に翻弄された剣豪の侍を演じました。その後に「メゾン・ド・ヒミコ」という映画でトランスジェンダーのヒミコ役を僕に要求してきたのが犬童一心監督でした。以来、犬童監督は僕の踊りをとにかくたくさん見続けてくれた観客の一人でありました。さて…僕は一人のダンサーです。僕を知る人は映画の中の俳優の田中泯を知っている人が大多数かと思います。でも僕は踊りに心の底からほれたダンサーです。戦後の日本が、いや世界中が変わろうとしていた60年代から僕なりに続けてきたわがままな表現が、カラダだけで存在を表わすダンスでした。こんな形で僕の人生の大事な一部分が映画になっていることを、今の僕にはどこか恥ずかしくうれしい気持ちがしています。犬童監督の作品として多くの人にダンサーの生きる一例を見てもらえるとうれしいかな…と思います!
犬童一心 コメント
「名付けようのない踊り」が釜山国際映画祭で上映される日をずっと心に描いていたので、本当にうれしいです。
私の作品「ジョゼと虎と魚たち」を発見してくれて、それ以来ずっと支えてくれた韓国の皆さんが、この映画の最初の観客であることもとても自然に感じました。田中泯さんの胸騒ぎに満ちた日々、圧巻のダンスをスクリーンでぜひ堪能してください。
この作品のじっくりゆっくり静かな時間の流れを思う存分味わってください。
作品情報
「名付けようのない踊り」
2022年公開
<出演>
田中泯
石原淋/中村達也 大友良英 ライコー・フェリックス/松岡正剛
<スタッフ>
脚本・監督:犬童一心
プロデューサー:江川智、犬童みのり
アニメーション:山村浩二
音楽:上野耕路
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:スカイドラム
製作:「名付けようのない踊り」製作委員会
©2021「名付けようのない踊り」製作委員会