朝井リョウの話題作「正欲」が、出演に稲垣吾郎、新垣結衣を迎えて映画化されることが決定し、稲垣や新垣、岸善幸監督、原作の朝井からのコメントが到着した。
本作は家庭環境、性的指向、容姿など、”選べない”背景を持つ人たちを同じ地平で描写しながら、人が生きていく推進力となるのは何かをあぶり出していく衝撃的なストーリー。「桐島、部活やめるってよ」(2009)で第22回小説すばる新人賞を受賞、「何者」(2013)で直木賞作家となった朝井リョウが2021年、作家生活10周年として書き上げた渾身の一作で、第34回柴田錬三郎賞を受賞した。
朝井自身が「小説家としても一人の人間としても、明らかに大きなターニングポイントとなる作品です」と語るとおり、各方面に大きな反響を呼び、「この衝撃は読んでみないと分からない」「もう読む前の自分には戻れない」と、今も続々と読者が増え続けている。
稲垣が演じるのは、横浜検察庁に務める検察官であり、自分の力でマイホームを持ち、妻と子を養う寺井啓喜(てらい・ひろき)。新垣は広島のショッピングモールで契約社員として働きながら、特殊性癖を持つことを隠して生きる桐生夏月(きりゅう・なつき)を演じる。小学校不登校の息子が世間から断絶されてしまう可能性を恐れる寺井と、自ら世間との断絶を望む夏月。2人がどこで、どのように交わっていくのかが見どころに。
監督は「あゝ、荒野」(2017)、「前科者」(2022)の岸善幸が務め、脚本は原作を大胆に再構築しながら監督の演出の可能性を拡げていく港岳彦。「当たり前」とは違う人生を大胆な演出表現をもって映像として浮かび上がらせ、ある種のラブストーリーとして描き上げる。キャスト・監督・原作者のコメントは下記に掲載。
撮影は10月下旬にクランクアップし、2023年全国ロードショー予定。
稲垣吾郎(寺井啓喜 役)コメント
脚本を読み終えた時、この作品に関われることをうれしく思いました。難しい題材にチャレンジする、監督、スタッフの皆様と共に丁寧に演じていきたいと思います。
新垣結衣(桐生夏月 役)コメント
原作を読んで、何かを問われたような気持ちになりました。それは、「何が正しいか」とかそういう単純なものではないような、でも実はとてもシンプルなことのような気もしました。考え続けること、他を想像し続けることをいつも以上に大切にしながら、制作に臨めたらと思っています。岸監督とは初めてご一緒しますが、初顔合わせから親身に役についての相談などを聞いてくださり、とても心強く、感謝しています。撮影では、自分なりに、夏月たちが生きる世界を夏月たちのように必死に生きたいと思います。
監督・岸善幸 コメント
原作の衝撃と感動がずっと消えません。朝井さんの“視点”が生み出した登場人物たち、その感情をどう表現するべきか、模索が続いています。稲垣吾郎さん、新垣結衣さんをはじめとするキャストの皆さんとの対話を重ねて、少しずつ輪郭が浮かび上がってきたところです。人と人のつながりを描こうと思います。大切なのに、難しい、つながり。世界から「普通ではない」と片づけられてしまう人たちの、歪みのないつながりを描こうと思います。
原作・朝井リョウ コメント
言葉にするとは線を引くということです。明確に名付けがたい感情や現象に無理やり輪郭を与えてしまうのが、言葉です。
映画には、表情、声色、沈黙など、言葉以外のものがたくさん映ります。それらが、私が書きながら取りこぼしていったものたちを一つでも多く拾い上げてくれることを願っています。
そして、この物語の核が、いい映画を創るという意思以外の部分で歪められることのないよう、緊張感とともに祈っています。
作品情報
「正欲」
2023年 全国ロードショー
原作:朝井リョウ「正欲」(新潮社刊)
監督:岸善幸
脚本:港岳彦
制作:テレビマンユニオン
製作幹事:murmur
配給:ビターズ・エンド