11月11日(金)公開の映画「すずめの戸締まり」の完成報告会見に、主人公・すずめ役の声優を務めた原菜乃華をはじめ、松村北斗、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、劇中の音楽を担当した野田洋次郎(RADWIMPS)、陣内一真、そして新海誠監督が登壇した。
「君の名は。」(2016年公開)、「天気の子」(2019年公開)に続く、新海監督の3年ぶりの最新作となる本作は、日本各地の廃虚を舞台に、災いの元となる“扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描く現代の冒険物語。
すずめの声に命を吹き込むのは、1700人を超えるオーディションから探し出した原菜乃華。あふれ出る感情を声にのせるみずみずしい原石が、物語のヒロインを託された。扉を閉める旅を続ける“閉じ師”の青年・草太役には、新海監督が「内面の豊かさ」をオーディションで見いだした松村北斗。そして2人を支える、すずめの叔母・岩戸環役で深津絵里、草太の祖父・宗像羊朗役で松本白鸚が出演。
また、漁協に勤めている環の同僚・岡部稔を染谷将太、すずめが出会う神戸のスナックのママで、女手一つで幼い双子を育てている二ノ宮ルミを伊藤沙莉、すずめが愛媛で出会う同い年の活発な少女・海部千果を花瀬琴音、すずめの母親・岩戸椿芽を花澤香菜が演じる。
さらに音楽は、新海作品3度目のタッグとなるRADWIMPSが担当。共作として日米の映画やアニメシリーズで活躍する映画音楽作曲家・陣内一真が参加し、本作でしか成しえない最強の布陣で、壮大かつ繊細な冒険映画の機微を表現した。また、主題歌「すずめ」を歌うのは次世代の逸材・十明。唯一無二の歌声で物語の昂ぶりを奏でる。
本作を着想したきっかけについて新海監督は、「『君の名は。』や『天気の子』を作り終わって日本全国に興行に回るときに、人が少なくなって寂しく感じてしまう場所が全国に増えたなと実感したことがきっかけの一つです。そのような場所はかつてはにぎやかだった記憶があるんですね。あのころにぎやかだったこの町からこのまま人がいなくなったときには、人は何をするんだろうって思って。そんなことをきっかけに、日本各地の場所を悼むような職業をアニメーションのキャラクターにできないかと思ったところが最初の直接のアイデアです」と語った。
また、劇中の音楽はどのようにして作られていったのかを聞かれると「いつものパターンなんですけど、脚本を書き終わって感想を誰かに言ってほしいなと思って最初に洋次郎さんに見せるんです。そうすると数か月後に、感想が音楽の形で戻ってくるんです」と裏話を告白。今回初めて新海監督作品の音楽を手掛けた陣内は「皆さんで2作品を作られてきた中に入るのは緊張感がありました。これまで自分自身が関わってきた作品とはひと味違うテイストの作品でしたので、よく声をかけていただいたなと思ったんですけど、いろいろお話を伺って自分にできることがあるんじゃないかなと少しずつ思えるようになりました」と経緯を語った。
キャストたちは会見の前日と当日に出来上がったばかりの作品を見たといい、それぞれ感想を聞いていくことに。原は「本当に言葉にできないくらい素晴らしいです。寝る間も惜しんで音楽だったり映像だったりをギリギリまで作ってくださった制作スタッフの皆さんがいて、本当なら皆さんも一緒に登壇したかったです。皆さんの熱意みたいなものを早く大画面で大音量で肌で感じてもらいたいし、受け取ってもらいたいと思いました」とコメント。松村は「本編を見ている間に何度も笑って、何度も涙が出てきました。ただ、そのポイントが訪れるたびに笑った理由と種類も違って、涙の理由と種類も違って自分の中の感性がこんなに幅があったんだなと。映画を見ているんだけど、自分のことも見ているような不思議な作品でした」と感想を述べた。
またアフレコについて新海監督は、「サマーキャンプみたいでしたよね。(収録現場に)行くと2人(原と松村)がTシャツ姿で何かおやつを食べてて(笑)。2人にとっては楽しいだけの時間じゃなかったと思いますが、僕にとっては自分が最初に設計していたものがどんどんカラフルに、想像しなかった色になっていくというのが毎日感じられて幸せな時間でした」と振り返った。
いっぽう、染谷と伊藤は新海監督と初めて会った日に収録が行われたという。染谷は「初めましてのまま、お芝居が始まって緊張してたんですけど、丁寧に優しく包むように演出してくださって自分はそこにただ乗っていくというか。乗っていくと楽しくなってきて、どんどんやりたいという気持ちになりました」と語ると、伊藤も「欲しい音だったり表現が明確にある方なので、それをこんなに腰の低い人見たことないっていうくらいすごく丁寧に優しく言ってくれたので緊張感はあったんですけど、それ以上に緊張が良い具合にほぐれた状態で声を入れる作業ができたのでシンプルに楽しめました」と新海監督の優しさに触れていた。
野田は、原が演じるクライマックスシーンのアフレコを見学したといい「原さんのしゃべり方だったりで印象が変化するような難しいシーンでもあったんですけど、1か月半積み上げてやってきた最後のふり絞りを今やっているんだなという気迫を感じられて感動しました」とコメント。さらに、「新海さんがほかの現場と比べてアフレコはちょっと楽しそう(笑)」とタレコミが。それに対し新海監督は「アフレコは楽しいんですよ。画の現場がつらすぎて…。僕にとってはアフレコ現場が逃げ場というか保健室みたいな場所で、アフレコ現場に行くと休むわけじゃないですけどリラックスできる場所なんです」と少し照れた様子。
最後に記者から「この作品が自分にとってどういうものになりましたか?」という質問が。原は、「間違いなく特別な作品です。13歳のときに『君の名は。』を見て新海監督を知って、『新海監督の作品をリアルタイムで見られる時代に生まれて良かった!』と友達に話していたその6年後に、まさか自分が携われることになっているなんて夢にも思っていなくて、こんなことあっていいんだっていうくらい私の中ですごく大切な作品ですし、たくさんの人に見てほしいです。明日への活力になるような、今ある大事なものに目を向けさせてくれるような作品だと思います」と。
松村は「僕は今27歳で、大人になって年々自分一人で戦えることを身に付けたいし、身に付けなきゃいけないような使命感に駆られていました。でも、アフレコ期間中は全てを一度委ねてみて、そこから返してもらったものの中で全力で立ち回る期間になりました。そうやって必死に生きる生き方のルートを新たに見つけられた作品です。今の自分のまま、明日を生きていく楽しみをもらいました」と作品への思いを語った。
作品情報
「すずめの戸締まり」
2022年11月11日(金)全国東宝系にて公開
声の出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、松本白鸚 ほか
原作・脚本・監督:新海誠
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:土屋賢一
美術監督:丹治匠
音楽:RADWIMPS、陣内一真
製作:「すずめの戸締まり」製作委員会
製作プロデュース:STORY inc.
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
配給:東宝
©2022「すずめの戸締まり」製作委員会