主演・松坂桃李、役所広司と芳根京子の共演による映画「雪の花 ―ともに在りて―」が、2025年1月24日(金)全国公開。松坂、役所、芳根、小泉堯史監督よりコメントが到着した。
原作は、吉村昭が1988年に発表した「雪の花」(新潮文庫刊)。江戸時代末期を舞台に、数年ごとに大流行して多くの人命を奪う天然痘と闘った1人の町医者の実話を描く物語だ。
天然痘の絶対確実な予防法が異国から伝わったと知った福井藩の町医者・笠原良策は、京都の蘭方医・日野鼎哉(ひのていさい)に教えを請い、また私財をなげうち種痘の苗を福井に持ち込む。
かつてない予防法成功のためにさまざまな困難にも諦めず、妻・千穂の支えの中で流行病と闘い続ける良策。自らの利益を顧みずに、天然痘に侵された日本を本気で救おうと立ち上がった実在の知られざる町医者・笠原良策が、いま問いかける“生きる希望”とは。
監督は小泉堯史。1970年黒澤プロに参加し、「影武者」(80)以降、「乱」(85)、「夢」(90)、「八月の狂詩曲」(91)、「まあだだよ」(93)で助監督を担当。
脚本作りから準備、撮影、仕上げまで黒澤明監督に師事、黒澤映画のさまざまな手法を学び、黒澤監督の遺作脚本「雨あがる」(00)で監督デビュー。「博士の愛した数式」(06)、「蜩ノ記」(14)、「峠 最後のサムライ」(22)といった上質な日本映画を製作し続けている。
主人公・笠原良策を演じるのは、松坂桃李。映画「孤狼の血」(18)で、第42回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、映画「新聞記者」(19)で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。
2023年はNetflix『離婚しようよ』、TBS系ドラマ『VIVANT』、映画「ゆとりですがなにか インターナショナル」に出演し、日本を代表する俳優へのキャリアを着実に積み重ねている。本作では、映画「真田十勇士」(16)、映画「居眠り磐音」(19)以来の時代劇に挑戦する。
京都の蘭方医・日野鼎哉を演じるのは、役所広司。近年は映画「孤狼の血」で第42回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、映画「すばらしき世界」(20)では、第56回シカゴ国際映画祭最優秀演技賞、第95回キネマ旬報ベスト・テン 主演男優賞を受賞。
ヴィム・ヴェンダース監督の映画「PERFECT DAYS」では、第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞、第97回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞を受賞し、さらに名実ともに日本を代表する俳優の1人として活躍し続けている。
小泉監督とは「峠 最後のサムライ」以来のタッグとなり、松坂とは映画「日本のいちばん長い日」(15)、「孤狼の血」(18)、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(19)、TBS日曜劇場『VIVANT』(23)と、5度目の共演となる。
良策の妻・笠原千穂を演じるのは、芳根京子。2013年に女優デビューし、映画「累ーかさねー」(19)、「散り椿」(19)で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。映画「カラオケ行こ!」(24)での好演も記憶に新しい。松坂とは「居眠り磐音」以来、2度目の共演となる。
松坂、役所、芳根、小泉監督のコメントは下記に掲載。
コメント
松坂桃李(笠原良策役)
非常に身が引き締まる思いです。時代劇に参加するのは「居眠り磐音」以来。約5、6年の時間がたっていますが、小泉堯史監督の下で演じさせてもらえるということが、僕にとっては非常に光栄でした。そして今回、再共演となる役所広司さんはじめ、すてきなキャストの方々と共演させてもらえたのは何より心強かったです。分からないものほど怖いものはない、そんな未知の病と戦った1人の町医者がつないだ希望。懸命に命と向き合う笠原良策の姿を「雪の花」という作品を通して見ていただきたいです。
役所広司(日野鼎哉役)
小泉監督の作品にはどんな形でも参加したいと思っていたので、声をかけていただきぜひ参加させてほしいとお答えしました。松坂君とは何度かご一緒していますが、良策という役は本当に心の澄み切った青年で、松坂君にぴったりだと思いました。今の時代があるのも、いろいろな人たちが命をかけて頑張った結果なのだろうなと、そんな想いをこの映画を通して感じていただきたいです。
芳根京子(笠原千穂役)
小泉堯史組に参加するのは2度目だったのですが、千穂という素晴らしい役に呼んでいただけてとても光栄でした。と同時に、自分に務まるのかすごく不安でしたが、小泉監督から優しさと強さを大切にしてほしいと導いていただきました。今回は殺陣や太鼓、調薬など撮影前から毎日必死に役作りを準備してきましたが、時間をかけた分より丁寧に演じられたと思います。
松坂桃李さん演じる良策ともすてきな時間を積み重ねることができました。
こういった歴史があるから今があるということをぜひ感じていただきたいです。
小泉堯史監督
映画監督として歴史の上で出合った実在の人物は、「明日への遺言」の陸軍中将・岡田資。「峠 最後のサムライ」の長岡藩家老・河井継之助。そして、このたびの「雪の花」福井藩町医者・笠原良策。いずれも己を無に帰し、事に当たった男たち。
小林秀雄さんは「無私の精神」で、次のように書いています。
「実行家として成功する人は、自己を押し通す人、強く自己を主張する人と見られがちだが、実は反対に、彼には一種の無私がある。空想は孤独でもできるが、実行は社会的なものである。有能な実行家は、いつも自己主張より物の動きの方を尊重しているものだ。現実の新しい動きが看破されれば、直ちに古い解釈や知識を捨てる用意のある人だ。物の動きに順じて自己を日に新たにするとは一種の無私である」と。
江戸末期、福井に生きた町医者・笠原良策に、無私の美しい精神を感じます。努力を積み重ね、勇気を持ち、己を捨てて誠実に働く良策の姿は永遠に価値ある歴史を生み、現在に生きる私たちの心に強く働きかけてくれます。歴史は決して進歩するものではありません。歴史は自然と共に、いつも同じものと戦っているのです。
今や品位をあえて失わせようとする文化が消費と手を結び、勝手気ままに振る舞っています。それによって破壊されるのは、道義的な美しさです。言葉や行いの立派さは、美しさがあればこそ、時の移り変わりに、耐えることができるといいます。
良策との出合いは、歴史をかがみとし、少しでも良きものになれるかもしれないと、私たちに希望や勇気を示し、道をすがすがしく照らしてくれるのでは、と思っています。
作品情報
「雪の花 ―ともに在りて―」
2025年1月24日(金)全国公開
監督:小泉堯史
原作:吉村昭「雪の花」(新潮文庫刊)
出演:松坂桃李 芳根京子 役所広司
©2025映画「雪の花」製作委員会