Little Black Dress『浮世歌』ライナーノーツ
「Mirror」
アルバムのオープニングを飾るのは、R&B とロックが溶け合い、歌謡的なメロディがゆったりと広がるミディアムチューン。“鏡(=他人)”に映る私、そして、自分自身が望む理想の自分とのギャップに悩みながらも、未来に向かおうとする意思を描いた歌詞も強く心に残る。生々しいグルーヴを生み出すバンドサウンド、華やかなホーンの音色、ファルセットを交えたサビのメロディがもたらす解放感もこの曲の魅力だろう。
「哀愁のメランコリー feat.成田昭次」
50年代のオールディーズ、60年代グループサウンズをアップデートさせたバンドサウンドとともに奏でられるのは、危うくも愛おしい恋の物語。成田昭次(元・男闘呼組)をフィーチャーしたこの曲は、昭和歌謡の定番だったデュエット曲を令和のポップチューンへと昇華したナンバー。郷愁を誘うエレキギターの響き、間奏パートを彩る口笛の音色、スリリングな男女の駆け引きを描いた歌が織り成す光景は、まるで映画のワンシーンのようだ。
「野良ニンゲン」
押し寄せる孤独に押しつぶされそうになりながらも、“世のルール”に抗い、自分らしく生きる決意を心に刻む。「野良ニンゲン」で Little Black Dress はーー“アイデンティティを解き放て”という歌詞が示すようにーー個としていきることの大切さをダイレクトに歌い上げている。その強い姿勢を支えているのが、 しなやかなスカ・サウンド。力強い管楽器の響き、鋭利なビート、凛としたボーカルは、聴く者を鼓舞してくれるはず。
「だるま落とし」
90年代のレニー・クラヴィッツを髣髴とさせる、ロッキンかつグルーヴィーなギターリフを軸にしたアッパーチューン。ライブの臨場感に溢れたサウンドをナチュラルに掴み取り、エモーショナルなフロウを響かせる歌声も驚くほどに気持ちいい。歌詞のテーマは、世の中に溢れるマウンティング的な争い。だるま落としのように蹴落とされる怖さを感じながらも、わずかな望みにかけて生き抜こうとする姿をストレートに描いている。
「心に棲む鬼」
作詞:及川眠子、作曲:馬飼野康二、編曲:船山基紀。先行配信された「心に棲む鬼」は日本の音楽シーンを支えるヒットメーカーが集結した、“令和の歌謡曲”だ。和の要素を含んだノスタルジックな旋律、“あなた”に対する妬ましさ、憎しみが渦巻く心象風景を映し出す歌詞を彼女は、妖しく、優美な歌声で表現。 “2時間ドラマの帝王”俳優・船越英一郎との共演による「歌謡サスペンス」風ミュージックビデオも必見だ。
「幸せになりたいの」
洗練されたピアノ、シックな響きの弦楽器、ソウルとジャズを融合させたバンドグルーヴがゆったりと溶け合う、“Little Black Dress 流のシティポップ”と称すべきナンバー。緻密に構築されたアレンジ、繊細なラインを描くメロディからは、彼女の音楽性の深さを感じ取ってもらえるはず。時代の移り変わり、トレンドや流行に左右されず、本当の幸せを掴みたいと願う女性の心理を綴った歌詞は、多くのリスナーの共感を集めそう。