成田昭次の生きざま、そして成田商事の未来も映し出したビルボードライブ東京での一夜【ライブレポート】

音楽
2022年09月21日

成田昭次、寺岡呼人、青山英樹により結成されたバンド“成田商事”が、9月12日・13日にビルボードライブ横浜、9月19日・20日にビルボードライブ東京で“入社式”と題したライブを開催。各日1st/2ndの2部制で行われたライブより、本稿では9月20日のビルボードライブ東京2nd公演の模様をレポートする。

1988年に男闘呼組でデビューし、ギター&ヴォーカルとして活躍してきた成田。その後も数々の作品を発表後、今年6月には13年ぶりの新作となるミニアルバム『犬も歩けば棒に当たる』をリリースし話題を呼んだ。そして同月にビルボードライブ東京で開催された追加公演で、新バンド“成田商事”の結成を発表。そのお披露目ライブとも言える“入社式”の最終公演をこの日迎えた。

彼らの登場を待ちわびたファンから盛大な拍手が送られる中、ステージに登場した成田商事の3人。最高業務執行責任者GVV(Good Vibes Vocal)を務める成田が「こんばんは、成田商事入社式へようこそ!」と呼びかけ、「成田商事-社歌」からライブの幕を開ける。“明るく前向きに”をモットーに掲げる成田商事らしいキャッチーなロックンロールナンバーで、会場はいきなりの大盛り上がりに。

「どんでん返しのラストシーン」に続いては、ライブでの司会進行も担当する最高制作執行責任者GVP(Good Vibes Producer)の寺岡によるMCでメンバー紹介。最高技術執行責任者GVD(Good Vibes Drums)の青山に加えて、1回目の“入社式”から出向で来ていたDevin Kinoshita(Key.)を幹部として採用すると発表するなど、和気あいあいとした雰囲気の中で進行していく。

「今日は最後まで成田商事の成田商事らしい曲をお届けします」という宣言通り、「Boom Boom Boom」「ナルスィスター」と曲調の振り幅はありつつも一体感のあるバンドサウンドで奏でられる楽曲は、いずれも彼らならではのものだ。続くアコースティックコーナーに入る前のMCタイムでは、前日の公演にスペシャルゲストとして参加したという岡本健一の話題から、先日30年ぶりに再結成した男闘呼組への想いまで語った成田。

そして「せっかく再結成することができたので、男闘呼組の懐かしい曲を」ということで、「天国の週末」「I LOVE YOU」の2曲を続けて披露する。どちらも約30年前に男闘呼組として発表された楽曲だが、それだけの時を経たからこそ表現できるような、男の渋みと哀愁漂う成田の歌声が胸を打つ。続く「さすらいの彼方へ」で紡がれる言葉と合わせて、まるで“成田昭次”という人間の生きざますらも感じさせる名演だった。

だが過去を懐かしむだけではなく、成田商事は現在進行系で歩み続けるバンドである。そんな意志を示すかのように、新曲2曲を立て続けに放っていく。骨太でグルーヴィーなロックサウンドを響かせる「hello hello」に、アグレッシヴに攻め立てる「フィフティー☆ブギウギ」と聴かされれば、彼らの進撃がまだまだ止まらないことを確信せずにはいられない。

本編ラストを「ボストンバッグ」でドラマチックに締めくくるも、当然鳴り止まない観客からの拍手。それに応えてアンコールに登場した3人はなぜかチンピラ風の派手な柄シャツに身を包み、やさぐれた口調でトークする一幕も。MCでのやりとりなどを見ていても伝わる、まるで仲の良い友達同士が集まって楽しくバンドで遊んでいるような空気感も成田商事の特徴と言えるだろう。

その雰囲気のまま「社員募集中」で会場を1つにした後は、スペシャルゲストに男闘呼組のメンバー・高橋和也を呼び込む。「エヴリバディ、ロケンロー!」と叫びながらテンション高く登場した高橋だが、共に演奏した「インディアンの丘で」ではシンガーとしての卓越した技量を見せつける。時にファルセットを利かせた伸びやかな歌声は、成田とはまた違う魅力を持つものだ。

どこまでも感情が高ぶっていくかのごときスケール感ある楽曲の展開も含めて、スピリチュアルで神聖さすら感じる歌と演奏。そして成田が高橋に背中を預けて、もたれかかりながらギターを弾く姿に2人の関係性が現れているように感じられた。最後は成田にとって13年ぶりの新曲として発表された「パズル」を、高橋と共に披露。10月に予定された“男闘呼組1988”としての公演、さらには11月の成田商事「ボストンバッグ」ツアーへの期待値が上がらざるを得ない充実したライブの幕を閉じた。

●photo/Junichi Itabashi text/大浦実千

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