『FFXIV』オーケストラコンサート開催!2万5千人の光の戦士達が美麗な演奏に酔いしれた

音楽
2022年12月20日
© 2010 – 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

12月17日(土)・18日(日)に、人気オンラインRPG『FINAL FANTASY XIV』の楽曲をフルオーケストラで演奏するコンサート『FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2022 -Eorzean Symphony-』が、東京ガーデンシアターで開催された。

2017年の初開催から、翌年にはアメリカ・ロサンゼルスのドルビーシアター、ドイツ・ドルトムントのコンツェルトハウス・ドルトムントで海外公演を行なうなど、国内外で好評を受けている『Eorzean Symphony』。近年はコロナ禍のため開催が見送られていたが、今年、3年ぶりに復活することとなった。

コンサートの司会進行を務めた『FINAL FANTASY XIV』(以下、『FFXIV』)プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹は、2013年の「新生エオルゼア」サービス開始からこれまでを振り返り、「9年分の思いが詰まったコンサート。9年間の歩みをフルパワーでお届けしていきたい」とコメント。

指揮は栗田博文、演奏は東京フィルハーモニー交響楽団、コーラスはGLORY CHORUS TOKYOという布陣で昼夜2回の計4公演が開催され、2万5千人の光の戦士達(光の戦士は『FFXIV』プレイヤーの愛称)が、美麗な演奏に酔いしれた。

このレポートでは、17日(土)昼公演の模様をお届け。また、レポートの最後には、全公演終了後、『FFXIV』のサウンドディレクターである祖堅正慶と、吉田直樹から受け取ったコメントを記載しているので、そちらも合わせてご一読を。

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『Eorzean Symphony』は2部構成で、新生/蒼天/紅蓮編」と銘打たれた第1部では、拡張パッケージ「新生エオルゼア」「蒼天のイシュガルド」「紅蓮のリベレーター」の楽曲が披露された。コンサートの幕開けを飾ったのは、「新生エオルゼア」より「天より降りし力」。場内のスクリーンに『FFXIV』の名シーンが映し出される中、優麗でありながらも勇ましい演奏が繰り広げられる。

続く「希望の都」では、ときに華やかに、ときに柔かな音像でさまざまな景色を描いていくと、美しく幻想的な音色が場内を穏やかに包み込んだ「静穏の森」から一転、「究極幻想」では荘厳な混声合唱が楽曲の重厚感をグっと高めていく。

曲間のMCでは、吉田がゲーム用語を交えながら観客の緊張を解きほぐし、祖堅は3年ぶりの開催を喜びながら「こんなにも多くの人達に集まってもらえて。『FFXIV』は、光の戦士はすごいなって思います」と、感慨深そうに客席を見渡していた。

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続けて「蒼天のイシュガルド」のブロックへ。その始まりとなった「Dragonsong」は、ゲストシンガーのAmanda Achenを迎えての演奏となった。最小限の弦楽器のアンサンブルから、徐々にさまざまなパートが折り重なっていく中、Amandaは美しい歌声を伸びやかに客席へ届けていく。

続けて、女声の独唱とハープの音色をたたえた柔らかな始まりから、徐々に雄大さを増していく「Heavensward」、男声のユニゾンが凄まじい緊迫感をもって迫りくる「英傑 〜ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦〜」を披露。さまざまな歌声に魅了されたブロックでもあった。

『紅蓮のリベレーター』からは3曲をピックアップ。ヒリヒリとした空気を漂わせながら駆け抜けていく「鬨の声」、感傷的な旋律が胸に迫る「塩と苦難の歌 〜ギラバニア湖畔地帯:昼〜」を立て続けに披露した後、「空より現れし者 〜次元の狭間オメガ:アルファ編〜」の鬼気迫る圧巻の演奏で、瞬く間に第一部が終了した。

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20分の休憩の後、『漆黒のヴィランズ』『暁月のフィナーレ』の楽曲で構成された第2部「漆黒/暁月編」がスタート。『漆黒のヴィランズ』のメインテーマである「Shadowbringers」から始まったのだが、ここでもう1人のゲストであるシンガーのJason Charles Millerが登場。

Jasonは囁くように歌い、躍動していく音に合わせて声に熱を込めていくと、続けて「To the Edge」を披露した。両曲共に原曲はロック色がかなり濃いのだが、オーケストラアレンジが施されたことで、より壮大な広がりを見せるものになっていた。

歌い終えた後、「3年かかってしまいましたが、ついに来れました。私を受け入れてくれて、世界中で一番のコミュニティの一員になれたことをとても誇りに思っています。祖堅さんにありがとうと言いたい。私を信じて、この曲を歌わせてくれたことに感謝しています」と、Jason。

吉田と祖堅が話していたのだが、2021年に無観客で開催された『FINAL FANTASY XIV DIGITAL FAN FESTIVAL 2021』のときに、なんとかJasonを来日させることができないか手を尽くしたものの、コロナ禍のため断念した過去があった。それがこの日、ついに念願がかなったこともあり、「このステージに立ってもらえて、僕もうれしい」と祖堅もうれしそうに答えていた。

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「砕けぬ想い 〜ハーデス討滅戦〜」から続けて届けられた「Tomorrow and Tomorrow」では、再びAmandaが参加。まばゆいまでの光が満ちていく演奏と、包容力にあふれる歌声で観客を魅了した彼女は「光の戦士のみなさんとお会いできたことを光栄に思っています。ここにいられること、そして祖堅さんの音楽を歌うことができてすごくうれしい」と、笑顔で喜びを伝える。

吉田と祖堅が初めてAmandaと出会ったのは、海外での初オーケストラコンサートのリハーサル。そのときに彼女の歌声を聴いた祖堅が「あの人の声で曲を作りたい」と話したことが、今に至るきっかけとなったそう。吉田も彼女がコンサートに参加できたことが感慨深かったようで、「ゲネ(プロ)を観ていて、思わず泣いてしまったのは内緒」と明かしていた。

ここからいよいよ『暁月のフィナーレ』のブロックへ移ろうとするときに、「ここで出てくるはずなんだけど……」と舞台袖に祖堅を探しに行く吉田。すると、それと入れ替わる形で姿を現した祖堅が、急ピッチで舞台に段ボールを設置し始める。指揮者の栗田も準備を手伝い、スタンバイを終えると、事前に公開されていたセットリストには入っていなかった「迷宮 〜ラヴィリンソス:昼〜」を披露。

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オーケストラの軽やかな演奏を背に、祖堅は軽く飛び跳ねながら、左足で段ボールを蹴ってリズムを刻みつつ、右足に固定されたスレイベルを鳴らし、オタマトーンで主旋律を演奏するという、アクロバティックな演奏で客席を盛り上げる。

大きな拍手が送られる中、曲を終えた祖堅は逃げるように舞台袖へ走り去っていった。そんなユニークな一幕から、勇壮な「Your Answer 〜ハイデリン討滅戦〜」に移っていくという目まぐるしい展開で、客席をまったく飽きさせることなくコンサートが進行していく。

超一流の演奏を味わいながら、従来のオーケストラコンサートではあまり見かけない光景を楽しめるのも『Eorzean Symphony』の魅力の1つだ。また、この日は観客がただ鑑賞するだけでなく、参加する“ギミック”も用意されていた。

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「Close in the Distance」では、Jasonが柔らかで、どこか儚げなミディアムナンバーを情感たっぷりに歌い上げる中、指揮者の栗田がサインを送ると、観客が「暁月のフィナーレ」に登場する「エルピスの花」を再現したライトを点灯。客席に美しい光の海が現れた。その感動を、Amandaが歌う「Flow」のドラマティックな旋律がより増幅していった一連の流れは、今回のコンサートのハイライトでもあった。

残すところあと1曲となったところで、司会の吉田と祖堅が改めて感謝を伝える。

吉田「『新生エオルゼア』から9年、『FFXIV』はいよいよ来年10周年を迎えますが、ここまで僕らがやってこれたのは、光の戦士達、みなさんのおかげです。僕らをここまで連れてきてくださって、本当にありがとうございます」

祖堅「コロナ禍で、みなさんと音楽を共有することが難しかったんですが、たくさんの方々の協力のもと、開催できたことをすごくうれしく思いますし、こういうコンサートを開けるのは、みなさんが『FFXIV』を楽しんでくれたからだと思っています。またこういう機会でみんなとゲーム体験を共有できるよう、これからも頑張っていきたいと思うので、楽しんでゲームで遊んでください」

ラストナンバーは、「ENDCALLER 〜ゾディアーク討滅戦〜」。大迫力のクワイアコーラスが響き渡る重厚なバトル曲に、鳴り止まない拍手が送られていた。それがいつしかアンコールを求めるものへと変わると、ファイナルファンタジーのメインテーマが組み込まれた「そして世界へ」と、この日披露された『FFXIV』のボス曲もメドレー的に登場する「終焉の戦い」を披露。凄まじい余韻を残したまま、3年ぶりの『Eorzean Symphony』は幕を下ろした。

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このコンサートの模様は、2023年4月26日にBlu-ray Disc Music『Eorzean Symphony: FINAL FANTASY XIV ORCHESTRAL ALBUM Vol. 3』として発売されることが決定した。本作は「オーケストラコンサートパート」と「オーケストラアレンジパート」の2つで構成。「オーケストラコンサートパート」には、『FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2022 -Eorzean Symphony-』で演奏されたプログラムがすべて収録されることになっている。

「オーケストラアレンジパート」には、2022年12月7日に発売された音楽CDアルバム 『FINAL FANTASY XIV Orchestral Arrangement Album Vol.3』の全楽曲を、2ch、5.0ch音源でそれぞれ収録。さらに5.0ch音源は、指揮者の立つ位置で聴いているような「ニア Ver.」と、ホールを見渡せる客席後方で聴いているような「ファー Ver.」の2種類が用意されていて、異なる聴こえ方が楽しめるようになっている。

また、音源ダウンロード機能として、2パート共に高音質MP3が、「オーケストラアレンジパート」にはハイレゾFLAC音源も同梱。豪華かつ美麗な演奏を、映像で、音源で、それぞれご堪能いただけると幸いだ。

久々の開催も大盛況に終わった『Eorzean Symphony』。この日のMCで、祖堅が「サントリーホールでやりたい」とこぼしていたが、またいつの日か『FFXIV』の音楽を全身で体感できることを、そして、それがクラシック音楽の殿堂で響き渡ることを楽しみに待ちたい。

全公演終了後コメント

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ファイナルファンタジーXIV サウンドディレクター 祖堅正慶

◆コンサート、全4公演終えての感想をお願いします。

『新生エオルゼア』発売からの約9年間、意外と光の戦士達の心に刺さる音楽を作れていたかもしれないな、という実感がわきました。こういう興行はいいですね。

ゲームは海外ではわりとエンターテインメントとしての地位を確立しているけど、日本ではまだ「ゲームなんかやって……」というような風潮があると思います。でも、僕はゲームというエンターテインメントは素晴らしいと思っていて、自信があるし自慢でもある。コミュニティもすごいですし。今回のオーケストラコンサートではゲームというエンターテインメントの無限の可能性を見ることができたし、そのなかでもサウンドが表現できることの素晴らしさも改めて感じました。

あと、自分で言っちゃいけないかもしれませんが、自分達が作った『FFXIV』はいいゲームなんじゃないか、という気がしました(笑)。もちろん、いいゲームを作っているつもりでいつも奮闘しているわけですが、改めてこうしてお客さんと対面できて、同じ空間を共有して、音楽を共通キーワードとしてやりとりしたつもりです。それで、光の戦士達が心を動かして、感動して、泣いている姿を見て、「『FFXIV』のサウンドを作ってきてよかったな」と改めて思いました。

◆観客のリアクションは、どこからか見ていたのですか?

公演が始まったら、最初に舞台袖からオーケストラ奏者や合唱、指揮の栗田さんたちをステージに送り出すのですが、その後にはダッシュでPAブースに行って音をチェックしていました。今回の会場は4階層あったので、演奏が始まったらそれぞれの階でチェックして、どこをどう調整したいかを逐次、PAさんにフィードバックする。そのときにお客さんの顔が見えるんですよね。そのお客さんの顔が…… 1曲目はお客さんを見る余裕はなかったですが、2曲目から早くも感極まって泣いている方がいらっしゃるのを見ると、心を動かせたのかな、という気持ちになりました。

仕事として頑張るのは当たり前ですが、「ゲームサウンドを介して人の心を動かせた」という結果に、今度はこちらが感動する。そういった2日間でした。得るものがあったので、これをまたゲームサウンドに活かしていこうと思います。そしたらまたさらにいいゲームになるんじゃないかなと思いつつ、精進するしかないですね(笑)。これからも、いいゲー ムサウンドを届けられるよう頑張ります!

ファイナルファンタジーXIV プロデューサー兼ディレクター 吉田直樹

◆公演を終えての感想を教えてください。

まずは「ほっとした」というのが大きいです。今回は曲数をかなり詰め込ませてもらったのですが、時間には限りがあるのでMCの時間を延ばせないと厳密に言われていました。一方で、オーケストラコンサートが初めてで緊張している方も多くいらっしゃるので、そこを「いつもの『FFXIV』、いつものエオルゼアだよ。リラックスして聴いて、思い思い楽しめばいいんだよ」というところに繋げられるようにしたい。僕は司会業が本業ではないし、そこが難しいところで……終わった直後の感想はというと「ほっとしました」という一言です。

◆久々の有観客でのオーケストラコンサートでしたが、いかがでしたか?

各公演の開演前にちょっと舞台袖から顔を出して、来場者の皆さんとアイコンタクトしたり、手を振ったりして、変な話、お互いが実在するというのを確認しながらオケコンに臨めたというのはすごくよかったと思います。多くのスタッフもコンサートを聴きながら自分たちがやってきたことの足跡や歩みみたいなものを、『新生エオルゼア』から改めて振り返ることができたと思います。そこは僕も含めて開発・運営チームにとって物凄くよかったですし、これほど多くの光の戦士を見られたことは明日からの活力になったと思います。

SET LIST

【第1部】
1.天より降りし力
2.希望の都
3.静穏の森
4.究極幻想
5.Dragonsong
6.Heavensward
7.英傑 〜ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦〜
8.鬨の声
9.塩と苦難の歌 〜ギラバニア湖畔地帯:昼〜
10.空より現れし者 〜次元の狭間オメガ:アルファ編〜

【第2部】
11.Shadowbringers
12.To the Edge
13.砕けぬ想い 〜ハーデス討滅戦〜
14.Tomorrow and Tomorrow
15.迷宮 〜ラヴィリンソス:昼〜
16.Your Answer 〜ハイデリン討滅戦〜
17.Close in the Distance
18.Flow
19.ENDCALLER 〜ゾディアーク討滅戦〜

【アンコール】
20.そして世界へ
21.終焉の戦い

関連商品情報

『Eorzean Symphony: FINAL FANTASY XIV ORCHESTRAL ALBUM Vol. 3』
2023年4月26日(水)発売

品番:SQEX-20090
価格:6,600円(税込)
仕様:Blu-ray Disc 1枚 / 特装デジパック仕様
封入特典:オーケストリオン譜2曲分、インゲームアイテムコード ※詳細は後日発表
早期購入特典:「オリジナルステッカー」、「ビジュアルシート」
発売元:株式会社スクウェア・エニックス

商品HP:https://www.jp.square-enix.com/music/sem/page/ff14/concert/2022/bdm/

●text/山口哲生

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