「オクトパストラベラー」シリーズ初のオーケストラコンサートで巡る音楽の旅 – 物語とキャラクターを思い出す演奏と歌声に感無量

音楽
2024年03月26日
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX

ゲーム「オクトパストラベラー」シリーズ初となるオーケストラコンサート『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』が、2024年3月23日に昭和女子大学人見記念講堂にて開催された。本コンサートは「オクトパストラベラー」シリーズ5周年を記念して開催されたもの。シリーズ楽曲の作編曲を担当する作曲家・西木康智の監修のもと、フルオーケストラ構成・全曲新規アレンジで演奏された。

開演5分前を告げるブザーが流れると、ロビーにいた観客が続々と着席。開演時間になると同時に会場の明かりが暗くなり、各楽器のチューニングが行われる。指揮者の佐々木新平がステージ袖から指揮台への向かうと、大きな拍手が送られた。

静寂に包まれ、少しの緊張感が流れる会場。それを切り裂くように「OCTOPATH TRAVELER – メインテーマ –」が演奏された。力強いストリングスの旋律、トランペットの流れるような音色、そしてティンホイッスルの美しい高音。爽やかさと「ここから何かが始まる」というワクワク感が混在した一曲で、本コンサートの冒険はスタートした。

佐々木新平 © SQUARE ENIX
佐々木新平 © SQUARE ENIX
坂本圭 © SQUARE ENIX
坂本圭 © SQUARE ENIX

続く2曲目「リバーランド地方」では、坂本圭の笛が、多くの川が流れ、肥沃な大地に恵まれた地“リバーランド地方”を表現する。弦楽器のメロディも美しく、終始心地よさを感じられる演奏であった。3曲目「バトル1」では、ヴァイオリンの鋭い音やタンバリンの激しいリズム、低音のドンとくる音、そしてトランペットの揺れる少し荒々しいソロパートが、戦いの熾烈さを彷彿とさせる。そこから「勝利のファンファーレ」が流れると、どこかホッとした気持ちになる。そういえば、ゲームプレイでも同じように「勝利のファンファーレ」を聞くと一安心していたなと、思い出しながら演奏に聞き入っていた。

ここで、作曲を担当した西木が司会者として登壇。初となるコンサートの日を迎えられたことへの感謝を言葉にした。あいさつもほどほどに、続いては『オクトパストラベラー大陸の覇者』から「記されざる島オルサ」「“深淵の覇者”サザントスのテーマ」を演奏。6曲目「白雪舞い落ちる街」では、スレイベルやハープの音が雪国の情景を表現する。一方でホルンやトランペットの勇ましい音からは、どこかあたたかさも感じられた。

左から)髙橋真志、西木康智
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX

合間のMCパートでは、本シリーズのプロデューサー・髙橋真志が登場し、「メインテーマの一音目を聞いたときから感無量」「本当にありがとうございます」と率直な感想と感謝の気持ちを述べる。その後、ゲストミュージシャンのサックス担当・鈴木広志が登場し、「薬師アーフェンのテーマ」でアルトサックスの澄んだ優しい音色を響かせる。一方の「商人パルテティオのテーマ」では、高音やロングトーンを交えたサックスソロで魅せた。この2曲はまさにキャラクターを表現した演奏だったと感じる。続いて披露した「富を授けし者」では、テナーサックスに持ち替えた鈴木がオーケストラの伴奏と調和しながら、歌うようにメロディを奏でた。

第一部の締めくくりは「宝物のために」「ボスバトル2」のメドレー。緩急が激しく、主旋律も目まぐるしく変わっていく。「宝物のために」などから「ボスバトル2」へと音楽と合わせてシームレスにバトルへと突入するあのゲーム体験の記憶が、この場で蘇ってきた。

鈴木広志 © SQUARE ENIX
鈴木広志 © SQUARE ENIX
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX

休憩をはさんだ後の第二部は、『オクトパストラベラーII』の「風翔ける、戦場」からスタート。疾走感のある楽曲で、ブラスのサウンドからは勇気や決断といった意思が伝わってくる。再び会場の空気をあたためるには、十二分なスタートとなった。続く「華やかなる都会」はスウィングのオシャレな楽曲で、鍵盤打楽器などが作り出す都会的な雰囲気が印象的。また、昼と夜の違いを楽曲で表現する。夜の部分ではトランペットが「ミュート」と呼ばれる音量や音色を変化する機器を付けたり、オーケストラ全体が静寂な空気を作り出したりなど、音楽によって“時間帯”を表していた。

その後の「理を司る者」では客席から見て舞台左が赤、右が青の照明に照らされる。その照明のようにヴァイオリン担当の吉田篤貴とギター担当の塚越廉がソロでぶつかり合う。まるで楽曲中に対決しているかのような2人の演奏に、見ていて心が熱くなってくる。鬼気迫るサウンドの連続に、鳥肌が立ちっぱなしだった。

そんな「理を司る者」とは違う形で心に火を灯してくれたのが「背中を押して」。原曲からヴァイオリンの音色が心地よい一曲だが、生で聞くとその感動は2倍、3倍にも膨れ上がる。曲名の通り、“背中を押して”もらっているような気持ちになり、音楽の魅力をひしひしと感じられた。

『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
左から)髙橋真志、宮内継介、西木康智 © SQUARE ENIX
左から)髙橋真志、宮内継介、西木康智 © SQUARE ENIX

MCパートでは、『オクトパストラベラー』『オクトパストラベラーII』のディレクター・宮内継介が登壇する。まずは「最高ですね」と感想を一言。また、「いろいろなジャンルの楽曲があって多彩。珠玉の曲たちを選んでもらえてよかった」と『オクトパストラベラー』の音楽の魅力にも触れた。

続く「旅立ちの唄」「きぼうの唄」では、國土佳音がボーカルとして参加する。優しさ、希望などを感じる歌声。そして、それを支える演奏。ボーカリストの衣装も相まって、恐らくあの場にいた多くの人が、ステージ上に「アグネア」の存在を感じていたのではないだろうか。少なくとも、筆者の目には周りを自然と笑顔にさせる踊子の姿が見えていた。

一方で「灯火の守り手」「欲望の道に待ち受ける者」のメドレーでは、國土が黒の衣装を羽織り、青いリボンを付けて颯爽と登場。同じく優しさは残しつつも、悲しみ、神々しさなどを彼女の歌声とオーケストラの演奏から感じて、圧倒されっぱなしだった。

『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
國土佳音 © SQUARE ENIX
國土佳音 © SQUARE ENIX

コンサートもいよいよ終盤。「決意」では、メロディがイングリッシュホルンからヴァイオリンへと移り変わっていく。その構成、音色の変化からは、さまざまな過去があっても前に進もうというという、まさに“決意”を感じられた。

続く「王道を求めて」からの「決戦2」も、シームレスにバトルへと突入するあのゲーム体験が蘇ってくる。「王道を求めて」の力強い笛の音色、「決戦2」のバトルの激しさを象徴するかのようなメロディライン、そして「ここが勝負どころ」と言わんばかりのブラスと笛の鳴りが心に突き刺さる。その後の「旅路の果てに立ちはだかる者」では、パーカッションや伴奏の激しさの一方でメロディや笛の音色からはちょっとした哀愁も感じられた。

本編を締めくくる「魔神の血を継ぐ者」「明日を望まぬ者」メドレーでは、ソプラノ・Yuccaとテノール・村上敏明がボーカルとして参加。緊迫感のあるオーケストラの演奏、そこに凄み・圧を感じる2人のボーカルが加わることで生まれる独特の空気感に息をのむ……というよりも、息をするのを忘れてしまう。気が付いたら演奏が終わっていて、呆然としそうになりながらも、自然と拍手だけはしていた。

Yucca © SQUARE ENIX
Yucca © SQUARE ENIX
村上敏明 © SQUARE ENIX
村上敏明 © SQUARE ENIX

アンコールでは、「踊子プリムロゼのテーマ」を演奏。ヴァイオリンとギターのソロは、今度は競い合うというよりかは「共に」「寄り添う」という印象を受ける。2人のソロをオーケストラが際立たせているようにも感じた。

初となるオーケストラコンサートの締めくくりに選ばれたのは、「キャットリンのテーマ」。最後はソリストが全員集合し豪勢な演奏となり、大団円で幕を閉じた。

今回の演奏を通じて、『オクトパストラベラー』の楽曲はソロや主メロディを伴奏が際立たせているように感じた。もしかするとそれは、ゲーム自体がそれぞれのキャラクターの物語を大切にしているからなのかもしれないと感じながら、人生の経験値を得た筆者は音楽を楽しむ旅をいったん終えて、帰路についた。

なお、今回のオーケストラコンサートのためにアレンジされた楽曲を収録したアルバム『OCTOPATH TRAVELER Orchestral Arrangements -To travel is to live-』が現在、発売中。さらに、16ビットのレトロゲーム風サウンドで聞ける『OCTOPATH TRAVELER II 16bit Arrangements』が3月29日(金)にリリースされる。音楽で彼らの、そして自身の旅路を振り返ってみてはいかがだろうか。

『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX
『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』© SQUARE ENIX

●photo/関口佳代 text/M.TOKU

SET LIST

『オクトパストラベラー オーケストラコンサート-To travel is to live-』プログラム
1. OCTOPATH TRAVELER – メインテーマ –
2. リバーランド地方
3. バトル1 ~ 勝利のファンファーレ
4. 記されざる島オルサ
5. “深淵の覇者”サザントスのテーマ
6. 白雪舞い落ちる街
7. 薬師アーフェンのテーマ
8. 商人パルテティオのテーマ
9. 富を授けし者
10. 宝物のために ~ ボスバトル2
11. 風翔ける、戦場
12. 華やかなる都会
13. 理を司る者
14. 背中を押して
15. 旅立ちの唄
16. きぼうの唄
17. 灯火の守り手 ~ 欲望の道に待ち受ける者
18. 決意
19. 王道を求めて ~ 決戦2
20. 旅路の果てに立ちはだかる者
21. 魔神の血を継ぐ者 〜 明日を望まぬ者
22 踊子プリムロゼのテーマ
23. キャットリンのテーマ

リリース情報

『OCTOPATH TRAVELER II 16bit Arrangements』
2024年3月29日(金)発売

価格:2,750円(税込)
詳細:https://www.jp.square-enix.com/music/lineup/item/SQEX-11124.html

『OCTOPATH TRAVELER Orchestral Arrangements -To travel is to live-』
発売中

価格:3,850 円(税込)
詳細:https://www.jp.square-enix.com/music/lineup/item/SQEX-11117.html

© SQUARE ENIX

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