ディズニー/ピクサーの世界的人気シリーズ「カーズ」の最新作「カーズ/クロスロード」が7月15日(金)に公開。人生の岐路(クロスロード)に立った主人公マックィーンと彼を支える仲間たちの絆を描く本作で、ジョン・ラセターから監督を受け継いだブライアン・フィー監督にインタビュー。“大人が泣けるカーズ”と話題の本作について伺いました。
◆今日はマックィーンの師匠ドック・ハドソンに敬意を表して、全身ネイビーカラーの服でそろえてきました(笑)。
ははは(笑)。very good!
◆ブライアンさんはこれまでの「カーズ」シリーズにストーリーボート・アーティストとして携わってきて、本作でジョン・ラセターさんから受け継ぎ、監督に初挑戦しましたが、どういった経緯で監督を務めることになったのですか?
本作に関しては、企画開発の段階でストーリー部分に携わっていたんです。自分としては監督なんて想像もしていませんでした。予期もしていなくて、そういうものを追い求めていたわけでもなかったんです。ところがあるとき、ジョン・ラセターのオフィスに呼ばれまして、「カーズ3の監督をしてほしい」と言われたんです。非常に驚きましたし、それと同じくらい恐怖心と光栄に思う気持ちがありました。
◆監督という重責に恐怖心もあったとのことですが、本作は素晴らしい作品としてゴールしました。いまのお気持ちを教えてください。
とても誇りに思いますし、協力してくれたスタッフのみんなも光栄に感じていると思います。共同作業というかたちでスタッフにも自由に携わってもらったので、彼らの指紋がそこら中についているような作品になりました。
◆本作は子供だけでなく大人も楽しめる物語だと思うんですが、マックィーンが引退を迫られる、それをどう決断するのかというプロットというのは、どのように生まれたのでしょうか。
マックィーンが引退に直面するというアイデア自体は、アスリートをリサーチしているときにたどりついたものです。マックィーンのキャリアが今どういうところにあって…というところでいろいろ考えた中で、このアイデアが生まれました。
1作目では、マックィーンは最速のレーシングカーでした。そして今回、彼にとってのチャレンジはどういうものになるのかということを考えた時に、やっぱり年齢、年を取るということだと思ったんです。時間は戻せませんし、若さは戻りません。魔法のような解決策は存在しないので、アスリートは皆、このテーマに直画します。
私たちもある程度はそういったことがあると思うんですが、アスリートはよりそういうことを経験しているというところから、プロット的にはこれが正しい方向ではないかと思ったんです。
また、感情的な部分では私の個人的な経験も関係していると思います。
私が大学を出た20代のころは、自分のキャリアに集中していて、自分の幸せを追求していた。
自分の幸せというのは、自分の仕事がうまくいくこと。その方向でしか考えていなかったんですが、自分が年をとり、大人になって、家庭も築いて、優先順位が変わりました。
例えば、今でしたら土曜の午後は自分のために使うということよりも、子供たちと過ごすことのほうが幸せなんです。
そして、自分のやりたいこと、自分の成功を追い求めるよりも、子供が成功する姿を見ることがうれしい。
彼女たちがまた次に何かできるように準備をしてあげるという、子供の成功に対して自分に何ができるかという思いがあります。
そういうことは人生で残るものだと思うんです。
ほかのことは消費期限がありますが、“遺産”として残るものというのは、次の世代に何か残す、伝えるということ。それが私たちの人生のサイクルだと思うんです。
私たち自身も、前の世代の誰かが私たちのために何かしてくれたから今の自分たちがあるということを、今回の映画でも伝えているんです。
ただ、それは素晴らしい体験ではあるんですが、マックィーンに対して、こういうことだと教えても分からないんですね。
その喜び、誇りというのは、マックィーン自身が実際に経験しないと分からないものなんですよね。
◆「カーズ」シリーズの中では、ブライアンさんがおっしゃった“遺産”がドック・ハドソンからマックィーンへ、今作でマックィーンからクルーズへと受け継がれていきます。ピクサーの中でも、「カーズ」がジョン・ラセターさんからブライアンさんへと受け継がれ、そしてさらに次の世代へというような“遺産”の継承が行われているのですね。
ジョン・ラセターはオープンなかたちで人々にチャンスを与えるんです。私自身も彼の寛容さからいろいろな機会を与えていただきました。
また、若い世代もスタジオに入ってきまして、インターンや学校を出たばかりの子たちを見ますと、本当に才能のある子たちが入ってきているんです。
この子は何か将来すごいことをするんだろうなというのが見えるような、ストーリーテラーとして今後素晴らしいものを作るだろうなという人が入ってきていますね。
私自身、多くのことをジョン・ラセターから学びました。また、これからも学び続けると思います。学ぶことを止めたくないと思っているんです。
そして、自分が得たことを後の世代に教えることができたらと思っています。
◆最後に日本のファンに向けてのメッセージをお願いします。
日本の皆さんに「カーズ/クロスロード」を楽しんでいただきたいと思います。
私たちは誰でも教える側にもなるべきであり、また誰でも誰か教わる人が必要です。
この作品をご覧になった後、ぜひ皆さんを導いてくれた方々に思いを馳せていただいて、誇りを持っていただければと思います。
■PROFILE
ブライアン・フィー
米ケンタッキー州生まれ。
2003年にピクサー・アニメーション・スタジオに加入。ストーリーボード・アーティストとして映画「カーズ」(06)、「レミーのおいしいレストラン」(07)、「ウォーリー」(08)、「カーズ2」(11)を手掛け、「モンスターズ・ユニバーシティ」(13)ではストーリー・アーティストを務める。本作で監督デビューを飾る。
■作品情報
『カーズ/クロスロード』
7月15日(土) 全国ロードショー
監督:ブライアン・フィー
製作総指揮:ジョン・ラセター
共同製作:アンドレア・ウォーレン
日本版キャスト:土田大、松岡茉優、藤森慎吾、戸田恵子、パンツェッタ・ジローラモ、赤坂泰彦、福澤朗、山口智充
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.