神木隆之介インタビュー「今までやったことのない表現や挑戦ができた現場」『3月のライオン』を振り返る

特集・インタビュー
2017年09月25日

大人気コミックを2部作で実写映画化した「3月のライオン」。キャスト発表時から、「配役がぴったり!」という期待の声が上がったが、公開前、公開後と終始その表現力で原作ファンをうならせたのが、主人公・桐山零を演じた神木隆之介さん。9月27日(水)、10月18日(水)に前編、後編のBlu-ray&DVDが発売するこのタイミングで、本作について神木さんにお話を聞きました。

神木隆之介インタビュー

◆公開後、反響は耳にされましたか?

はい。「将棋をちょっと勉強してみようかなと思った」という声が結構あって、それがすごくうれしかったです。いろんな声があったとは思いますが、撮影の時も全員が全力でしたし、悔いのないようにできたので、自分たちの中では本当にいい作品だったと自信を持って言えます。僕にとっても、すごく成長させていただいた作品でした。今までやったことのない表現や、こう演じたらどう見えるんだろうという挑戦ができた現場で、監督がそれをできる状況にしてくださり、本当にありがたかったです。

◆神木さんは、原作は読まれていたんですか?

はい! 好きでした。映画が決まる前からずっと読んでいて、友達に眼鏡とダッフルコートを着させられて、「雰囲気が零だよね」とか言われていて。そこから、洋服屋でちょっと長いダッフルコートを探すようになっていました(笑)。だから、零を演じさせてもらえると決まった時は、「うれしいな」って思っていましたね。

◆神木さんが演じられた桐山零という人物をどう捉えていますか?

か細くて強いっていう印象です。でも、意外と男なんです。原作を読んでも、実際演じてみても、かなりガツガツというか、勝ちにいく人だなって。大人しくない言葉を投げかけるし、つかみかかったりもするし、絶対に負けない。それは盤上でも同じで、そういう闘志が人一倍ある男なんだなと思いました。外見は細くて、フラフラしていて(笑)、「1人で生きていけるの? 君」という空気を出していますけど、根本的にはかなり男の中の男なのではないかなと思いますね。

◆零はせりふではなく、表情やしぐさで感情を物語る役だったと思うんですが、そういう部分での挑戦もありましたか?

そうですね。感情を全部出してしまうと零ではないので、そこの制限はありました。目の奥で迷いや、苦しむ芝居をしなくてはいけなかった。特に対局シーンは、「やばい! この手じゃなかった」と思っても、「あっ!」と言えないので、ちょっと相手の顔色をうかがってみたり(笑)。演じている時は全力だったのですが、うまいことそれを表現できるのかなという不安もすごくあって。でも、同時に自分があまりやったことのないお芝居だったので、楽しかったです。

◆数々の役を演じられてきた神木さんでも難しい役だったと。

難しかったです。心の中で思っていることを表現できないから、そのとおりに伝わるのかって不安が常にありました。監督のモニターのところで自分の芝居を見させてもらって、「もうちょっと抑えたほうがよかったですね。もう一回お願いします」って試行錯誤しながら、毎回芝居は変わっていました。いい意味で、監督も迷っていて、僕も迷っていて。原作もすごく人間らしい作品なので、「人間だから、『こうだよね』という正解があってはダメだよね」と話し合いながら進んでいった現場でした。

◆前編と後編で、零の姿勢や表情が全然違うように見えました。そこは意識されていたのでしょうか?

前編と後編で、少し時がたっているんです。前編は若いので、苦しんでいるのが表情と体の揺れに少しだけ出るようにしていて、18歳になった後半は、感情を表情や動きに出さないようにすごく意識しました。あとは、将棋の指し方も変えました。新人の時は、持ち駒を取ってから指すまでが速かったり、指した後に体がすぐに動いていたりしたはずなんです。だけど、いろんなことを学んでからの後編の対局は、動きをゆっくり、滑らかにしたいなって。零がきちんと苦しんで、何かを見つけ出そうとしている、前編からは進んでいるんだということを表現できればと思って意識しました。

◆試合のシーンで、零が口元に手を当てるしぐさが原作どおりでうれしかったんですけど、駒を置いたあとにチョンって触るしぐさもあるじゃないですか。あれはアドリブなんですか?

あれは、将棋を習うと自然となるんです。指すと、どうしてもその駒がずれたり、手が当たって他の駒がずれたりすることがあって、少し直すのですが、あれは棋士の自然な動きなんです。

神木隆之介インタビュー

◆実際に将棋の練習もかなりされたみたいですね。将棋、ハマりましたか?

プライベートでもやっています。東出(昌大)君とか、岡田将生君と指しました。東出君は、もともと将棋が好きって言っていたし、映画「聖の青春」で棋士の役もやっていて、しかも僕が教わっていた将棋の先生と同じ先生だったみたいで、東出君の家で対局させてもらう時は、その先生も隣にいます(笑)。

◆すごいメンバーですね(笑)。神木さんが思う将棋の魅力ってなんですか?

そうですね……将棋って、会話になるんです。コミュニケーションツールになることが、すごくすてきだなと思います。将棋にはいろいろ作戦があって、その1つに、相手が“穴熊”にしてくるのか、“美濃囲い”にしてくるのか確認するための、端を突く手があるんです。端を突き返してこなかったら穴熊で、突き返してきたら美濃囲いなんだなって分かるのですが、いわゆる「美濃ですか? 穴熊ですか?」という質問状を投げかけるんです。もちろん、僕はその域まで達しているわけではないですけど、きちんと会話というか、質問状、駆け引きがあるところが面白いなと。あと、DVDの特典映像にも収録されていますけど、(佐藤)天彦さんにお会いする機会があって、その時に「自分を全否定されたような気がする棋譜があった」というお話をされていたんです。だから、将棋自体が存在意義というか、自分の証明なんだなと思ったら、会話以上、言葉以上のものなんだなって。そこにプロの人たちはたどりついていて、僕もその世界を少しのぞいてしまったからこそ、面白いなと思いました。

◆Blu-ray&DVDの特典でいうと、藤井聡太四段と対談されていますよね。

はい。対談させていただいたときは、藤井さんはまだ奨励会だったのですが、もう風格がすごかったです。年上なのかなって思うくらいの落ち着きでした。しかも、本当に丁寧だし、優しいし、謙虚な方で。あとは、同じ鉄道好きということが判明して、少し盛り上がりました(笑)。お話を聞いていると、本当に将棋が好きなんだなと感じて。「3月のライオン」で言うと、加瀬亮さんが演じた宗谷さんみたい。人一倍の負けず嫌いだなと……まあ、勝ち負けの世界なので、負けず嫌いじゃなかったらできないと思うんです。人一倍負けず嫌いで、でも、ただ勝ちたいから将棋をやっているのではなく、「どこまでいくんだろう」「もっとうまく指せるんじゃないか」「もっといい最善手はなんだろう」という興味が強い方なのだと思います。それだけ好きじゃないと、将棋を続けていられないと思いますし、今のような偉業もないですよね。本当にすごい方でした。

◆それでは最後に、Blu-ray&DVD発売についてひと言お願いします。

どの作品でも、Blu-rayとかDVDの発売の時に言わせてもらっているんですけど、“一時停止”ができます(笑)。盤上に興味がある方はそこで止められるし、女性陣の戦っている姿が好きな方は、気に入った表情でも止められるし(笑)。お菓子でも食べながら、ゆっくり見てもらいたいなと思います。本編の中に和菓子とかいっぱいおいしそうな食べ物が出てくるのですが、俺、映画館で見ていた時にどうしても和菓子が食べたくなってしまって(笑)。人間味のある作品なので、家族と和菓子を食べながら見て、ゆっくりと話をしてもらえるとうれしいです。

 

■PROFILE

神木隆之介
●かみき・りゅうのすけ…1993年5月19日生まれ。埼玉県出身。B型。1999年、テレビドラマ『グッドニュース』でドラマデビュー。『妖怪大戦争』(05)で、第29回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演作は『桐島、部活やめるってよ』(12)、『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14)、『バクマン。』(15)、『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』など。10月12日(木)スタートのドラマ『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)に出演。

 

■作品情報

『3月のライオン』『3月のライオン』Blu-ray&DVD
[前編]9月27日(水)/[後編]10月18日(水)2か月連続リリース

Blu-ray豪華版 各¥6,800+税
DVD豪華版 ¥5,800+税
DVD通常版 ¥3,800+税

発売元:アスミック・エース
販売元:東宝

【前編】Blu-ray&DVD豪華版 共通特典
前編シーンセレクト・ビジュアルコメンタリー(大友啓史監督×神木隆之介×中村倫也×尾上寛之)
前編メイキング
エンタメ・ドキュメント特別番組「神木隆之介と指す!」(スタジオ・ゲストに加藤一二三九段、VTRゲストに羽生善治三冠、藤井聡太四段を招いた特番)
イベント映像集
聖地巡礼映像「飛ぶ!3月のライオン・聖地巡礼」
主題歌PV ぼくのりりっくのぼうよみ「Be Noble(re-build)」(short ver.)ほか

【後編】Blu-ray&DVD豪華版 共通特典
後編シーンセレクト・ビジュアルコメンタリー(大友啓史監督×神木隆之介×中村倫也×尾上寛之)
後編メイキング
「キャストらが語る 闘いと愛の感動作 徹底紹介!」
イベント映像集
特別イベント映像「電王戦×3月のライオン 第零期 獅子王戦」
5分でわかる!映画「3月のライオン」【闘いの前編】ダイジェスト
特別企画「こんな動画作ってみた!」映像集
主題歌PV 藤原さくら「春の歌」(short ver.)ほか

<スタッフ&キャスト>
監督:大友啓史
出演:神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、佐々木蔵之介、加瀬亮、前田吟、高橋一生、伊藤英明、豊川悦司、岩松了、斉木しげる、中村倫也、尾上寛之、奥野瑛太、甲本雅裕、新津ちせ、板谷由夏ほか
 
©2017映画「3月のライオン」製作委員会
 
●photo/干川修 text/飯倉聖蘭 styling/吉本知嗣 衣装協力/Lui’s、ロットホロン

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