CS映画専門チャンネル「ムービープラス」で放送中の人気オリジナル番組『この映画が観たい』10月放送回は、漫画家の西原理恵子さんが登場。番組内では、自身のオールタイム・ベスト映画を紹介しながら、波乱万丈の半生を語ってくれた西原さん。「エイリアンとプレデターには一生ついていく!」と話す西原さんに、映画への思いや、パートナーの高須克弥さんや2人の子供たちとのエピソードなどを伺いました。
◆オールタイム・ベスト5作品を選ばれましたが、悩みましたか?
ルキノ・ヴィスコンティとか、アンジェイ・ワイダとか、ジム・ジャームッシュとか、小難しい映画を入れようとする自分を止めました(笑)。
ロシアなど東欧の映画監督とか、マニアックな映画を追いかけていたこともあったので、そういうのを挙げようかなと思う自分を叩いて。ちょっと気取ろうと思うでしょ(笑)。
大人になって思うのは、2時間ってすごく大事だなってこと。
彼(高須克弥氏)と映画を見に行くと、伏線が一つでも回収されないと、納得しないんですよ。どうしたの?あれどうなったの?って。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は非常におとなしく、ずっと楽しそうに見てたので、こんな人まで納得させるってすごいなって思いました(笑)。
◆高須先生とは、良く一緒に映画に行かれるんですか?
行くんですけど、彼は異様に記憶力がよくて、史実と違うところがあるとそこが気になってしまうので、そういうのがない作品を選ばなきゃいけないんですよ(笑)。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は全部ちょうどいい感じに収まっていて、私も楽しめて。
「クレヨンしんちゃん」も、大人も子供も楽しめるように作ってるじゃないですか。あれはやっぱりすばらしい考え方ですよね。みんなが楽しくなるっていう。
しかも子供が映画館で騒いでもいい内容になっているし。本当にうまく作ってるなって。
◆確かにそうですね。
いろんな人が善意だけで作ってるんですよね。
◆ご覧になる映画を選ぶ基準はありますか?
(スティーヴン)セガールの日本語を聞くためだけに見るとか(笑)。
◆関西弁で(笑)。
関西弁で「お姉さん、レイコーちょうだい」ってあれを聞くためだけとか(笑)。
難しいものは絶対避けて、2時間笑えて、楽しくていい気持ちになる映画を選びますね。
だからディズニー映画もピクサー映画も大好きです。よく出来てるなあって感心します。
それと、できれば吹き替えで見ます。せっかく画面の隅々まで気を遣って作られているのに、字幕を読んでいたら映像が見られないじゃないですか。吹き替えなら全部見られますからね。
◆高須先生とご覧になったときは、そのあとに映画の話をされたりもするんですか?
事実関係が違うと怒り出すんですよ。医者なので、間違えたまま進めるというのはあってはいけないことで。たしかに、手術中に間違えたまま進めたら大変じゃないですか。
医者や科学者にとって、タブーは絶対ないんですよ。どんなことでも言って、研究しなきゃいけない。言葉も場所も選ばない、行き詰まったらその場で解決するっていう。だから、映画の最中に怒り出したら「すいませんね」って言って外に連れ出すんです(笑)。
彼は歴史マニアなので、歴史映画も一緒に行かないようにしています。
◆映画では脚色もありますしね。
いままで私の周りにいたような芸術畑の人たちは、ざっくりとした感じでよかったんです。感覚とか、色とか、においとか、雰囲気で伝わるというか。
でも、あの手の人たちは違うんですよね。陳述調書みたいにしゃべってる(笑)。曖昧さが受け付けられないんですよね、曖昧というのはうそをついてることになっちゃう。だから、わたし今苦労してますよ(笑)。
でも、「エイリアン」については「エイリアンならあり得る」って言っていました(笑)。
「風と共に去りぬ」が子供のころ大好きだったんですが、彼が言うには、あの時代は開拓時代なので、良家の子女は非常に珍しくて、成功を収めた者のみが妻に迎えられるそうで。ものすごい財力がないとそういうお嫁さんをもらえない。だからそういう女性はどんなわがままをしてもいい時代だったんだというようなことを言っていました。
一緒に映画を見ていると、そういう注釈が隣からずーっと入ってくるんです(笑)。
◆ご自身の作品も映画化されていますが、ほかの映画とはやはり違うものですか?
私の原作の映画は孫ですから、孫の発表会みたいなものです(笑)。他の映画とは全然見え方が違って。めっちゃひいきして見ちゃいます。それくらいありがたいですね。
「パーマネント野ばら」は全然違う作品になっていて、すごく面白かったです。さすが吉田大八監督だなって思いました。
◆今回挙がった“オールタイム・ベスト”は洋画が5作品でしたが、邦画はご覧になりますか?
わりとまんべんなく見てますね。娘が見たがったので「凶悪」とか「冷たい熱帯魚」を映画館に一緒に見に行きました。2人で「人がいっぱい殺された~あぁ~」って(笑)。
私も10代のころ、そういう映画を見ていたから、娘が見たい気持ちは分かるんですよね。娘は単館で上映している映画とかをいつも見に行っているみたいです。私も若いときはそうでした。
◆DNAが受け継がれていますね。好きなシリーズなどはありますか?
寅さんは子供のときから好きで見てましたね。寅さんのひと言ひと言が好きで。あとはやっぱり黒澤(明)映画もすごく好きでした。
◆映画はどのくらいのペースでご覧になりますか?
そんなに見るほうじゃなくて、月に2、3本ですね。
◆お1人で見ることもありますか?
1人でも見ますけど、映画館に行くときは彼と一緒ですね。だから見る映画はすごく選びます。
以前、「三国志」で全48巻あるドラマに付き合わされたときはしんどかった…(笑)。
最初から最後まで、ずっと喧嘩してるの。「殿下なりません」「うるさい!」ってずっとそればっかり(笑)。
娘が消防士の漫画を読んで、「これ火事ばっかじゃん」って言っていて(笑)、私とそっくりだなあって思ったんです。これって男女の差ですよね。
すっごいマニアックにきちんと覚えて、それがちゃんと動くかどうかを見たい男性と、ざっくりとしか物を見ない女性の差かな(笑)。
◆ジャンルの好みなどは?
恋愛ものは見ませんね。
魔法もの、ファンタジーものも好きじゃないです。
◆見ても響かない?
ぜんぜん響かないですね。
一時期、韓国の怖い映画がすごく好きでした。「母なる証明」とか「チェイサー」とか。やたら暗くて怖くてみたいな。
でも、韓国人の友達に「面白かった」って言ったら「なにその映画、知らない」って言われて。韓国では、もっとにぎやかで楽しい恋愛映画とかがメジャーみたいです。
◆どこかやっぱり男性が好きなもののほうが惹かれるんですかね?
私の中に小学生男子が入ってるので(笑)。電車と怪獣とUFOが好き、みたいな。
IMAXで「エベレスト」を見に行ったり、「トランスフォーマー」もトランスフォームするところが大事だったり。
◆スティーヴン・セガールとか。
男の子はセガールですよね。チャック・ノリスも大事!
好みが小学生男子なんです(笑)。
◆映画を見るのはどんなタイミングですか?
彼のスケジュールを見て、空いている日に見に行きます。だから、前もって映画を探しておくんです。
この映画とこの映画だったらどっちがいい?って聞いて。
◆では映画はよくチェックしている?
チェックしてますね。雑誌に必ず映画の紹介があるじゃないですか。それで辛口の方のオススメの1本とかをわりと押さえてます。
それを調べて、面白そうだったら見に行くという感じですね。そうじゃないと5分で出てこなきゃいけないことになるから(笑)。
「失敗だな、この映画」って思いながら見ていて、2時間後に「やっぱり失敗だったな」って思って映画館から出ることってあるじゃないですか。やっぱり時間がもったいないですよね。足裏マッサージしたほうが有意義(笑)。
◆作品を吟味するんですね。
息子はレンタルでまとめて借りてくるので、最初の10分15分でピンと来なかったら次の映画を見たほうがいいよってアドバイスしています(笑)。だって、時間は大切だから。
あと、息子を見ていて「なにか嫌なことでもあったのかな」って思うときは、映画を見たり音楽を聴くことを勧めています。私もそういうときがあったから。
つらいときは映画を見よう!
◆「つらいときは映画を見よう!」ってとてもいい言葉ですね。
実際に自分が鬱病のときも効いたし、当時の夫が重度のアルコール依存症で入院していたときも、iPodにたくさん音楽を入れてプレゼントしたんですが、すごく効くって言ってました。
◆これまで映画の好みに変化はありましたか?
子供を生んで、子供映画を一緒に見て、そこからいろいろあってからは、重たい映画を見る暇はない!って思って。
現実が重いんだよ!バカヤローって(笑)。だから「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のような映画を楽しんでいます。
これからはもっと小学生男子に戻っていくと思います。
「トランスフォーマー」を見に行こうと思って誘ったら嫌がられました。「えー、オプティマスに会いに行こうよ~」って言ったんですが、72歳に拒否られた。チカチカして目が痛いんだって(笑)。
これからは、深海の秘密とか恐竜とかそういうのがいいですね。
ギレルモ・デル・トロ監督が「パシフィック・リム」の2を作るのを楽しみにしているんです。
日本のゴジラも次が楽しみ。日本の怪獣勢に頑張ってほしいですね。
あと、戦隊ものみたいなのもね。外国の黄色もやっぱりカレーが好きなのか?とか、そういうのを見届けないといかんというのが自分の中にあるんです(笑)。
◆10月からは毎日新聞で新連載「りえさん手帖」が始まります。どんな内容になりそうですか?
まったく変わらないです(笑)。52歳になって新しいことなどできるはずもなく、人間が変わるはずもなく。外側だけ変えただけなんで、あんまり期待しないでください(笑)。
画も上手にならなかったし(笑)。ただ、もうちょっと大きなコマで、見やすく描きます!
■PROFILE
西原理恵子
さいばら・りえこ…1964年生まれ。高知県出身。漫画家。
1988年に「ちくろ幼稚園」でデビュー。
1997年に「ぼくんち」で文藝春秋漫画賞、2005年に「上京ものがたり」「毎日かあさん」で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。
「いけちゃんとぼく」「女の子ものがたり」「パーマネント野ばら」など、映画化された作品も多数。
10月より毎日新聞で新連載「りえさん手帖」がスタートする。
■番組情報
「この映画が観たい#49~西原理恵子のオールタイム・ベスト~」
自身の人生に影響を与えた映画について語る、ムービープラスの人気番組。今回、西原理恵子が挙げたオールタイム・ベストは、「真夜中のカーボーイ」「狼たちの午後」「エイリアンVS.プレデター」「パンズ・ラビリンス」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の5作品。
CS映画専門チャンネル・ムービープラス
10月2日(月)23:00~23:30ほか
番組ページ(http://www.movieplus.jp/guide/mybest/)
ムービープラス公式サイト(http://www.movieplus.jp/)
さらに、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」をムービープラスで放送!
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」
10月20日(金)13:30~15:45 日本語吹替版
10月20日(金)22:45~翌1:00 日本語字幕版
監督:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディ/シャーリーズ・セロン/ヒュー・キース=バーン
資源が尽きかけた未来世界。愛する者を失い本能だけで生きてきた元警官マックスは、恐怖と暴力で民衆を支配するジョーの軍団に捕まってしまう。だがジョーに反旗を翻した女戦士フュリオサが囚われていた女たちを率いて逃亡。マックスもその追跡劇に巻き込まれてゆく。
©Warner Bros. Feature Productions Pty Limited, Village Roadshow Films North America Inc., and Ratpac-Dune Entertainment LLC