音楽知識がほぼゼロな“音楽0年生”のバナナマンと一緒にさまざまな音楽の楽しさを体感できる音楽バラエティ『バナナ♪ゼロミュージック』が11月4日(土)の放送でレギュラー放送50回を突破!番組内のあらゆる場面で演奏を担当する専属バンド「オルケスタ・“バナナゼロ”・ムジカ」バンマスのサイトウ“JxJx”ジュンさんに番組の裏側や『みんなのうた』で放送され大好評を博しているオリジナルソング「お米かくれんぼ」の製作裏話も聞いちゃいました!
毎回「やったな!」ってかみしめてから帰ります(笑)
◆レギュラー放送50回というタイミングで何ですが、どういう経緯でこの番組に出演することになったんでしょうか?
僕のバンド、YOUR SONG IS GOODで、出演した別の番組でご一緒したスタッフの方がこの番組の立ち上げスタッフでもあって、そのご縁です。それで、僕の友達、先輩、周りにいる身近な仲の良い人たちを集めたという感じです。あとは番組できっといろんな音楽をやることになるんだろうなと思ったので、そういったものに面白がって参加してくれそうな人に声をかけさせてもらいました。
◆ここまでがっつり番組に参加することも珍しいと思うのですが、実際やってみての大変さはありますか?
演奏する曲やジャンルも普段の自分のバンドとは全然違うんですが、一番思ったのは、例えば自分たちのバンドなら自分たちのタイミングで演奏を始めるじゃないですか。それが、全て演出の中でのタイミングで演奏が始まるっていうのが全然違うことでしたね。他のメンバーも最初は戸惑ってた気がします。演奏そのものより「あれ? 今から演奏しなきゃいけないんだ」「もうやるの?」っていうような、タイミング。これはやってみて初めて分かったことで、まずここでTVショウの難しさを感じましたね。
◆ライブでは自分たちが演出だけど、番組側の演出に乗るというのが初めての経験だったと。
はい。特に演者の皆さんがすごく面白い話とかをしてるのを後ろで「ああ面白いな~」ってただただ楽しんでたら、「あ、もう演奏しなきゃいけないんだ!」みたいになるんですよ(笑)。普段演奏しない曲をやるっていう難しさもあるかなと思ってたんですが、実はそういうところにカルチャーショックがありました。
◆例えば1本収録するまでに、どういうプロセスがあるんですか?
まず時間軸で行くと、収録1週間前にその回のテーマを聞いて、どんなことをやるかという話の打ち合わせを。それを僕が持ち帰り、内容をあらため、翌週からバンドにそれを持って行って、まず街の練習スタジオで練習をします。そして別日にNHKに来て、ホーン隊のみんなが合流してゲネプロ(通し稽古)をする。そういうルーティンですね。1週間前の段階で一応演奏する曲も決まってるんですけど、ブラッシュアップして行く中で変更ももちろんあります。そこは柔軟に対応しつつ、右往左往しつつ、混乱しつつ(笑)。それが楽しいんですけど。
◆番組内で即興で曲を作る場面もありますよね。
即興が面白いっていうのをこの番組のスタッフさんが知っちゃって味をしめちゃったみたいで(笑)、最近ちょいちょいムチャぶりが来るんですよ。事前に準備をしないでいいから簡単なのかと思うかもしれないですけど、全然そんなことはなく、みんなその場で頭から煙出るぐらい考えてます(笑)。それから、収録は50回くらいやってますが、緊張感はいまだにあって。全然慣れないんですよね。演者の皆さんは収録が終わったらすぐ帰るんですけど、バンドのみんなは自分も含め、終わった後みんなその苦労を分かち合うじゃないですけど、とりあえず「終わった~~!」って感覚をしっかり共有してから終わる感じ。毎回、さらっと帰れないんですよ。「俺たちはやった!」ってことをじっくりかみしめてから帰るんですよ(笑)。
◆演歌やJ-pop、ミュージカルの音楽など、普段の活動とは違うジャンルの音楽を演奏することで、刺激を受けたり、新しい発見があったりしますか?
それはすごく思います。さらっと聞くのと、実際に演奏するのって本当に違うんだなと。演奏するとき、これは僕の個人的な感覚ですが、その曲の中に“入っていく”感じになるんです。「お邪魔します」とドアを開け、その家に入り、中から見る感覚。そうすると外から見るのと違う感じがあるんです。こういう作りなのか、へぇ~三階建てなのか、このタイミングでサビが来る理由は、なるほどここに三階を作りたいからこその二階か!、みたいな(笑)。こういう理由でメロディがこうなっているんだな、っていう感覚で、その曲のことがとてもよく分かるんですよ。だから好きになりますよね、その曲のことが。特に演歌や音頭はすごく新鮮で、そこで感じた面白さを今回「お米かくれんぼ」でも入れさせてもらいました。
バナナマンさんとは、昔の下北沢の話とかします(笑)
◆『みんなのうた』で11月いっぱい放送されている「お米かくれんぼ」は実際にパリの空港までお米をつけて旅をしてしまった日村勇紀さんのエピソードを元に、設楽統さんが歌詞を書いた楽曲。せりふ部分があったり和のテイストや世界各国の音楽が入ったりと、楽しい曲ですね。
バナナマンさん、バンドメンバー、スタッフの皆さんと打ち合わせしながら基本となるアイデアをまとめていきましたね。まず設楽さんの書かれた歌詞から、ナシゴレンやチャーハンという世界のお米料理を加えよう、さらにそこにその国の音楽を入れるが面白いんじゃないか?そんなアイデアがその打ち合わせで生まれたんですよね。結果、お米が旅をするような壮大なストーリーの歌詞と、この番組でもいろんな音楽をやっているという、まさに歌詞と番組のコンセプトがバッチリ当たった感じですね。そこから、自分がメロディーと全体の構成を考えました。まず、日村さんにくっついたお米ってことは、出発点は日本だな、そこから世界に出て行くんだな、と考えた時に、僕の個人的な経験で面白かった音頭、演歌がぴったり来たのでそこから曲作りを始めて。そのあとは、いろんな音楽をいかに歌詞に当てはめるかが、なかなか大変でした。「みんなのうた」って、尺が2分20秒と決まってるんですが、そこから溢れ出るくらい歌詞の量も多かったんですが、設楽さんの歌詞がとにかく面白いので、とにかく削らないで、その勢いを殺さないで作るというところをむちゃくちゃ頑張りましたね。ただ、結果、面白い曲になったんじゃないかな、と思ってます。自宅で作ってて、バシ!っとハマったときはむちゃくちゃうれしかったですね。
◆50回を経て、バナナマンさんとの関係性に変化はありましたか?
バナナマンさんとはこの番組で初めてご一緒させてもらいましたが、そのご縁もあって、ここ数年はバナナマンさんの単独ライブのオープニングテーマを「オルケスタ・“バナナゼロ”・ムジカ」でやらせてもらったりもしてて、嬉しいですね。ただ、下手なものは作れないっていうプレッシャーがあります。とにかく嫌われたくないですからね(笑)、毎回ものすごく気合を入れて作ってます。また、お二人とはほぼ同世代なので、ちょっとした休憩時間とかに昔の話をしたりしましたね。90年代の下北沢の話とか(笑)。多分同じ店行ってましたね、とか。一応番組内では演者とバックバンドっていう図式ですが、なんか、交差する瞬間があるんですよ。その時は、僕らのノリで捉えるなら、一緒にバンドをやってるような感覚があって、そこはかなりアガりますね。
◆最後に、今後番組でやりたいこと、共演したいアーティストさんはいますか?
この番組の面白いところって、滅多に会えないような大物の方と一緒に演奏できるっていうところから、僕の友達も出て来るっていう、この両方ある感じかなって思うんですよ。槇原敬之さんとか小室哲哉さんがいたかと思えば、サイプレス上野とかU-zhaanくんもいる幅広い感じ。まだこの番組に出てない友達、それこそカクバリズムのバンドとかにも来てほしいですね。ceroがクイズを出すみたいな(笑)。しかも、なんか変な感じになるんですよ、友達のバンドが来ると。変な空気に(笑)。僕らが後ろでニヤニヤみてるし、すごくやりにくいと思うんですけど、でも、むちゃくちゃいい空気が流れるんで、そこもまだまだ楽しみたいところなんですよね(笑)。
■PROFILE
サイトウ“JxJx”ジュン
●さいとう“じぇいじぇい”じゅん…1973年5月2日生まれ。東京都出身。A型。バンド「YOUR SONG IS GOOD」のオルガン、ボーカル担当。
■番組情報
『バナナ♪ゼロミュージック』
NHK総合
毎週(土)後10・20~10・53
●photo/花井 透 text/寺田渓音