井上涼インタビュー「草刈さんにも歌をちょっとだけ口ずさんでいただきました」『美の壺×びじゅチューン!美び美にっぽん』

特集・インタビュー
2018年01月01日

趣の異なる2つの美術番組『美の壺』『びじゅチューン!』がお正月、『美の壺×びじゅチューン!美び美にっぽん』(Eテレ 2018年1月3日(水)後9・00)として初コラボ。作詞・作曲・歌・アニメーションのすべてを担当し、『びじゅチューン!』では有名美術作品をモチーフにキャッチーな楽曲を制作するアーティスト・井上涼さんに、『美の壺』レギュラー・草刈正雄さんとの共演エピソードなどを語っていただきました。

『美の壺×びじゅチューン!美び美にっぽん』

◆今回、『美の壺』と『びじゅチューン!』が初コラボということですが、お話を最初に聞いたときはいかがでしたか?

「え、いいの?草刈さん出るよね?僕と?…本当に?」って感じでした。『びじゅチューン!』はいつも5分だけど今回25分もあるし、「え、5倍?」みたいな(笑)。1月3日の夜って翌日からお仕事の人も多いだろうし、大抵おうちにいらっしゃるじゃないですか。だから、そんな時間に放送していただけるなんてありがたいなと。

◆番組では、井上さんが和装で『美の壺』おなじみの邸宅を訪問し、草刈さんのおもてなしを受けます。草刈さんとの共演はいかがでしたか?

大物俳優の草刈さんがいらっしゃるので、すごく緊張しました。やっぱり草刈さんの前にいると演技力のコントラストが如実に出てしまうので(笑)、それもあって気恥ずかしいというか…。でも、草刈さんがすごくすてきな方で、僕が緊張しているのがバレバレだったんですけど、「緊張してるの~?」と声をかけてくださったり。やっぱり大物の方は違うなって思いました(笑)。

◆おもてなしの作法もたくさん出てきますね。

僕、番組で初めて知ったんですけど、クロモジという木から出来た爪楊枝を水に浸すとすごくいい香りがするそうで、お客様が来られる少し前に水にくぐらせるみたいなんです。だから次は僕が草刈さんをそうやってもてなしてみたいです。もう草刈さんはご存知だからバレバレだけど(笑)、そういうのをさらっとやれるようになれたらいいなと思います。

井上涼インタビュー

◆出来上がった映像をご覧になっていかがでしたか?

僕の演技力がもうちょっとあればなと思いましたけど(笑)、できることはやったなと思います。『美の壺』も『びじゅチューン!』も力を出し切っている感じがして、お互いのよさが出ているんじゃないかなと。日本のもてなしについてのうんちくが出てきて、僕のヘタウマな曲が挟まれ、それで草刈さんがちょっとひと言おっしゃって…という感じでいろんな見どころがあって、とてもにぎやかな番組だと思いました。

◆これまで井上さんが制作された楽曲が随所に登場するそうですね。

全部で7曲ですね。スタッフさんたちと相談しながら選曲して、ことあるごとに曲をぶちこんでます(笑)。「紅白梅図屏風グラフ」は尾形光琳の「紅白梅図屏風」から受けた力強い印象を基に作ったんですけど、こんな言い方よくないかもしれないですが、世の若いとは言えないみたいな年代の人にも元気になってほしくて作った応援歌で。放送の翌日から仕事始めの人も多いと思うので、この曲を聞いて少しでも元気になっていただければいいなと思います。

◆屏風をグラフに見立てる、という発想が面白いですよね。

金ぱくの格子模様がグラフ用紙のようで、その上に曲線があると本当にグラフみたいだな、と思ってあの曲が出来ました。基本的に、絵のパッと見の印象をもとに曲を作るように心掛けています。というのも、美術に対して抵抗というか距離を感じている人が日本にはとても多いようで、そういう人たちが「あ、グラフって思ってもいいんだ!」と感じていただけると、美術に親しみを持っていただけるんじゃないかなと思っています。

あと「風神雷神図屏風」をモチーフにした「風神雷神図屏風デート」は、風神と雷神がお互いを見つめながらもはみだし気味に描かれているのが、デートの待ち合わせに駆けつけてきたように見えて、こういう曲になりました。草刈さんに「風神雷神図屏風デート」をちょっとだけ口ずさんで歌ってもらうシーンがあるんですけど、本当にこの曲を作ってよかったなと思いました。「僕が風神って言うので、草刈さんは雷神って言ってポーズしてください」とお伝えして、急きょ踊りまで踊っていただいたんです。

『美の壺×びじゅチューン!美び美にっぽん』

◆ちなみに、演技の中にアドリブはあったんですか?

アドリブはまったくないです! 一言一句、台本どおりに棒読みしておりました(笑)。草刈さんはアドリブっぽくせりふをひと言つけ加えてくださったりしたんですけど、僕はそれにつられて笑ったり(笑)。僕が笑ってる部分は素のところが多いです。

◆マルチに活躍されている井上さんですから、これをきっかけに俳優さんとしても活躍したいという思いは…。

そういう道はないなと思います(笑)。たとえば端役とかで、「実はいい演技するね」みたいな存在になれるかなって思ってたんですけど、でも、そういうのは無理だなって思いました(笑)。

◆幅広い世代から支持されている『びじゅチューン!』は現在放送4年目ですが、反響の声はいかがですか?

年々、その声が強くなるように感じているので、まずは続けられてうれしいなというのが1つあります。あとは美術に距離を感じている人だったり、自分の子供を美術に触れさせたいけど入り口がないと思っているママさんたちがすごく多いというのが反響としてあって。そういう人たちが、子供にはまず『びじゅチューン!』を見せるのがいいと言ってくださることがすごく多くて、番組やっててよかったなと思います。

井上涼インタビュー

◆今回のお正月特番でさらにファンが増えそうですね。

裏に「君の名は。」が来ちゃうんですけど(笑)、地上波初放送が来ちゃうんですけど(笑)、「君の名は。」はもう見たよって方とか、まだ『びじゅチューン!』をご覧になったことのない方にも見ていただける機会になればいいなと思います。

◆井上さんのお正月の過ごし方を教えてください。

実家で両親の相手をすることが多いですね。父と母の小競り合いを仲介する、まあまあみたいな。この間もちょっと用事があって実家に帰ってたらやっぱりケンカしていて。何でケンカしてたかというと、2018年はどこの新聞を取るかですごいもめてて。そんなレベルの戦いが日々繰り広げられているので、いつも正月はそれをまあまあ、となだめて終わってます(笑)。

 

■PROFILE

井上涼●いのうえ・りょう…1983年6月10日生まれ。兵庫県小野市出身。
金沢美術工芸大学デザイン学科卒業。卒業制作作品「赤ずきんと健康」がBACA-JA佳作受賞。「快感」「楽しい」をテーマに映像(アニメ/実写)、イラスト、漫画、インスタレーション、パフォーマンスなどクロスジャンルな制作活動を行い、作品内の作詞・作曲・歌・アニメのすべてを自身で手掛ける。

公式HP:http://tanoshimida.com/
Twitter:https://twitter.com/kitsutsukijanai
 

■番組情報

『美の壺×びじゅチューン!美び美にっぽん』
2018年1月3日(水)
Eテレ
後9・00~9・25
出演:草刈正雄(俳優/『美の壺』出演)、井上涼(アーティスト/『びじゅチューン!』出演)

『美の壺』公式HP:http://www4.nhk.or.jp/tsubo/
『びじゅチューン!』公式HP:http://www.nhk.or.jp/bijutune/

<番組内容>
井上涼が、和服姿で『美の壺』の舞台である日本家屋をちょっとあらたまって訪問。迎える主・草刈正雄は、衣・食・住の3つの切り口から「和風おもてなしのツボ」を、現場でのうんちく+『美の壺』過去映像を駆使して紹介しながら、井上をもてなす。合間には、『びじゅチューン!』でおなじみの歌が登場。“五感がうっとりするにっぽんのおもてなし”と、“ちょっと変わった美術の楽しみ方”を一度に味わえるゴージャスなお年玉企画。

©NHK
 
●text/金沢優里

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