田亀源五郎さんによる同名漫画を映像化し、LGBTという現代的かつ繊細な題材を心温まるホームドラマとして描くプレミアムドラマ『弟の夫』が、BSプレミアムにて3月4日(日)よりスタート。主演の佐藤隆太さん、そして本作で連続ドラマ初挑戦となる元力士の把瑠都さんにインタビュー。
「把瑠都さん、お芝居されてるの!?」と思ったけど、そんなことはすぐ忘れました(佐藤)
すごく深いけど、子供からお年寄りまで楽しめるお話だと思いました(把瑠都)
◆舞台「グリーンマイル」での把瑠都さんのお芝居が今回のキャスティングにつながったと伺いました。
把瑠都さんは連続ドラマ初出演ということですが、出演の決め手となったものは何でしょうか?
把瑠都:私は相撲を引退して、また一から人生スタートだと思ったけど、奥さんも支えないといけないし、いろんな迷いがあって。だから「グリーンマイル」は2か月ぐらい悩んで出演を決めましたが、何で出ることになったのかははっきり覚えていません(笑)。今回のドラマについては、すごく深い話だけど、子供からお年寄りまで楽しめるし、あとはNHKさんだから、というのが一番大きかったです。真面目なイメージがありますから。
◆佐藤さんは、把瑠都さんとの共演を知ったときはいかがでしたか?
佐藤:やっぱりびっくりしました!「把瑠都さんってお芝居されてるの!?」みたいな(笑)。でも撮影に入ったらそんなことはすぐ忘れました。把瑠都さんは現場が初めてにもかかわらず、みんなが疲れてきたときは、サラッとユーモアを言って和ませてくれて、素晴らしい人間力だなと。とても救われた部分が多かったです。お芝居では、作った表情ではなく内面からにじみ出るものを一瞬にして伝えられる力を持った方なので、一緒にやっていて楽しかったです。
◆把瑠都さんは佐藤さんとの共演はいかがでしたか?
把瑠都:“親方”が来ると現場にも緊張が走るんですよ。
佐藤:親方…?俺のこと?言ったことないでしょ、そんなこと!(笑)。
把瑠都:アハハ(笑)。佐藤さんは周りにすごく気を使って、腰が低くて、スタッフさんもみんな「佐藤さんいい人」ってすごく言ってたんです。私も日本に来て14年だからいろんな人を見てるけど、佐藤さんはどれだけ有名でも変わらない人で、いい勉強になりました。
佐藤:いや、なってないですよ。なりました?(笑)。
◆シングルファーザー・弥一(佐藤)の元に、突然、カナダ人のマイク(把瑠都)が訪れるところから物語がスタートします。マイクは、亡くなった弥一の双子の弟・涼二の同性婚の相手。弥一はマイクをなかなか受け入れられないまま、不思議な共同生活が始まります。それぞれ演じられている役柄について教えてください。
佐藤:弥一はマイクを拒否したいわけじゃないけど、頭でいろんなことを考えて、無意識のうちに遠ざけてしまう。僕自身も弥一を通して、自分の考えにドキッとさせられることが多かったので、視聴者の方も弥一というフィルターを通して見てもらえたらいいなと思います。堅苦しく考えず、自分とは価値観の異なる様々な人との向き合い方を考える時間になったらうれしいです。
把瑠都:マイクはとにかく優しくてでかい! あとは細かいところに気づいて、例えばお茶を入れてもらうときも湯のみを持ったり、弥一のことを「弥一さん」と呼んだり、日本人の方に近い感覚なのかなって思いました。
◆さまざまな国で同性婚が合法化されるなど、LGBTに対しての理解が深まる一方で、弥一のようにLGBTの人に対してどう接したらよいのか戸惑う人が多いのも事実だと思います。把瑠都さんは、日本と母国・エストニアで、LGBTへの認識の違いは感じましたか?
把瑠都:エストニアもそうですけど、ヨーロッパの一部はLGBTについて結構厳しくて、逆に日本のほうがオープンなんですよ。でも、私の考えはすごくシンプル。「みんな同じ人間。好き嫌いが違うだけ」。ただ、いじめは許さない。私は体が大きいから、学校でもよくいじめられたりしてたんです。そうは見えないと思うんですけどね。
把瑠都さんはホテルのロビーで全然知らない人と飲んでました(笑)(佐藤)
こういうこと結構やるんですよ(把瑠都)
把瑠都:(サラッと)すべてですよね。
佐藤:カッコいいね(笑)。
把瑠都:ハハ(笑)。でも、1話でマイクが弥一と缶ビールを飲みながら「ウイスキーにしませんか?」って提案するシーンは好きです。マイクもお酒好きなんだな、って思ったんですよ。
佐藤:僕もそのシーンは好きですね。マイクが突然訪ねてきて、まだ距離がある中で、ちょっと勇気を持って距離を縮めようとするんです。それから、弥一が元妻との関係でもやもやしてるときに、マイクは「ウイスキーにしませんか?(僕が)酔いたいです」という言葉を使って、弥一に寄り添ってくれるんですよね。マイクの優しさが表れているこのせりふもすごく好きです。
把瑠都:そのシーンの最初で、弥一が「ビール飲みませんか?」って部屋に入ってきたときは、「かわいい佐藤さんだな」って思いました(笑)。
佐藤:はははは!(笑)さっきまでツンケンしてたのにね(笑)。あと、1話で神社に行くシーンがあるんですけど、手を洗ったりお賽銭を入れたりするシーンで把瑠都さんが監督から「うますぎる」とダメ出しされてるのが面白くて(笑)。そういうことは、力士の時代に僕らより経験しているから上手なんですよね。でもマイクは何も知らない設定だから、弥一のほうをちらちらを見ながら見様見真似でやっている芝居をするんですけど、それにしてもうまい、と(笑)。なかなか珍しいNGですよね。
◆2話(3/11OA)では、家族みんなで温泉旅行に行くシーンがあります。実際に修善寺のほうでロケをされたと伺いましたが、撮影エピソードを教えてください。
佐藤:一緒に朝イチで温泉に浸かったりして楽しかったですね。僕が驚いたのは、撮影が終わって僕がホテルに帰ったら、先に帰った把瑠都さんがホテルのロビーで誰かと缶ビールを飲んでたんですよ。マネージャーさんかと思ったら違って、誰かと思ったら、全然知らない人だったんです(笑)。温泉で意気投合した人みたいで。
把瑠都:お風呂場で初めて会って、そのまま飲んでた(笑)。
佐藤:僕も参加させてもらって、先に抜けましたけど、把瑠都さんはその後も飲んでたからね(笑)。
把瑠都:こういうこと結構やるんですよ。
佐藤:今回は全3話でしたけど、今度は長めの連ドラでもご一緒したいですね。
把瑠都:ありがとうございます。 私自身いつもこのまんまなので、舞台も連続ドラマもすごく楽しい。だから、これからも私に合う役があれば演じたいです。警察とか、お相撲さんとか…。
佐藤:お相撲さん役、ぴったりですよね(笑)。
■PROFILE
佐藤隆太
●さとう・りゅうた…1980年2月27日生まれ。東京都出身。舞台「アンナ・クリスティ」が7月13日(金)よりよみうり大手町ホールにて上演スタート。
把瑠都
●ばると…1984年11月5日生まれ。エストニア出身。A型。元大相撲力士。2013年の現役引退後は、タレントや格闘家として活躍。
公式Twitter:@Baruto_official
■番組情報
プレミアムドラマ『弟の夫』
BSプレミアム
3月4日(日)スタート
毎週(日)後10・00~10・49放送
全3回
原作:田亀源五郎
脚本:戸田幸宏
音楽:阿南亮子
出演:佐藤隆太、把瑠都、中村ゆり、根本真陽、大倉孝二、野間口徹 ほか
公式HP:http://www.nhk.or.jp/pd/otto/
©NHK
●text/金沢優里