近年のプロレス女子ブームなどを牽引する「新日本プロレス」のエース、棚橋弘至さんが映画初主演。私生活でも、良き夫・良きパパで知られる“100年に一人の逸材”が、40代になって、初めての挑戦について語ってくれました。
◆映画初主演の話が来た時の率直な感想は?
うれしかったと同時にとても驚きました。実は2人の子供が通っていた小学校の行事で、この映画の原作である2冊の絵本を読み聞かせていたんです。でも、エースレスラーのドラゴンジョージじゃなくて、ゴキブリのマスクを被ったベテランの孝志役で依頼が来たことに、時の流れを感じましたね。子供たちからは「なぜ、パパはドラゴンジョージじゃないの?」と言われました(笑)。
◆棚橋さんが、劇中でマスクを被った悪役(ヒール)を演じることに関してはいかがでしたか?
悪役は、入場から常に怒りやいら立ちというテンションを維持することがポイントなんです。ものスゴくエネルギーを使うんですが、そこを大事にしました。マスクに関しては、最初は違和感がありましたが、やっぱり慣れですね。また、十年以上前に、僕もブーイングをもらっていた時があったので、その時に学んだ「いかに観客からブーイングを引き出すか?」ということも実践してみました。でも、僕の場合マスクをしていても、目の部分が空いているから、男前がバレてしまいますね(笑)。
◆脚本を読まれて、孝志にかなり感情移入されたそうですね。
孝志は大きなけがが原因で悪役レスラーにならざるを得なかった、かつてのエースなんです。僕自身もここ数年、どんどん若い選手が台頭してくる中、けがなどでコンディションがよくなかった。だから、孝志がまるで自分の分身のように見えてきて、自然と演技をすることができました。しかも、彼が言う「悪者がいないと、エースが活躍できないだろ?」というせりふには、強く胸を打たれました。
◆妻・詩織役の木村佳乃さん、息子・祥太役の寺田心君との共演はいかがでしたか?
僕は主演のくせに新人なので、奥さん役の木村さんや息子役の心君に引っ張ってもらいました。木村さんとのシーンは、あまりに緊張して覚えていません(笑)。心君との、あえて感情の起伏がない普段の会話のシーンは難しかったですね。相手のせりふを受けて返す中で、演技が引っ張られるという感覚は、今まで体験したことのないものでした。あと、事前に演技を固めて撮影に臨んでもダメだというところにライブ感を感じました。
◆劇中には真壁刀義さんなど、「新日本プロレス」のレスラーの方々も多数出演されていますよね。
ドラゴンジョージ役のオカダ(・カズチカ)は、「もし、彼がベビーだったら、こんな感じだろうな」というぐらい、そのまんまですね。僕の相棒のギンバエマスクを演じた田口(隆祐)も、阿部寛さんみたいにかっこよくて、いい味出してますよね。しかも、彼は木村さんから「役者に向いている!」と、お墨付きをもらったんですよ。僕はもらってないのに!(笑)
◆クランクアップの時、「40歳になっても、こんなに一生懸命になれるものがあってうれしかった」と涙されたそうですね?
1つの作品をみんなで作り上げていく熱量を感じましたし、幸い年齢に関係なく必死になれるものが見つかり、そのチャンスを得た気がしたんです。あまりに一生懸命すぎて、まだ演技をすることの面白さ、楽しさには到達できていませんが…。ただ、チャンスがあれば、これからもやっていきたいと思います。僕も、“日本のザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)”を目指していきたいですね。
◆そんな感動作の見どころを教えてください。
「何かを感じてください。受け取ってください」というよりも、性別年齢を問わず、「明日から頑張ろう!」「子供に優しくしなきゃ!」「両親に感謝しなきゃ!」など、見た人全員が何かを持ち帰ることができるような映画だと思います。また、現役のプロレスラーが迫力ある試合シーンを演じている映画は、あまりないと思いますね。
◆夫婦愛や親子愛など、プロレスについて、あまり知らない女性も楽しめますよね。
そうですね。仲里依紗さんがプロレス女子を代表する役を演じられているんですが、彼女がプロレスファンの気持ちを代弁してくれるシーンがあるんです。そこに共感されるはずです。僕のヴィジュアルでもいいし、激しい攻防でもいいし、何かをきっかけにプロレス好きになった女性が、もうひと段階プロレスに詳しくなって、もっと好きになれる映画といえるかもしれません。もちろん、本能に訴えかける僕の肉体美にも注目してください(笑)。
◆最後に、この秋に挑戦してみたいことはありますか?
膝を痛めていることや、あまり時間がないこともあって、なかなか難しいですが、登山をしてみたいですね。自然の中で、ゆっくりとした時間を過ごしたいです、有酸素運動だし、トレーニングも兼ねて(笑)。まずは高尾山あたりに登って、その後は富士山を目指したいですね。
■PROFILE
●たなはし・ひろし…1976年11月13日生まれ。岐阜県出身。O型。“100年に一人の逸材”といわれる新日本プロレスのエース。2018年の「G1 CLIMAX 28」で3年ぶり3度目の優勝を飾った。俳優としてドラマ、映画などにも多数出演。
■映画情報
「パパはわるものチャンピオン」
9月21日(金)より全国公開
<STAFF&CAST>
監督・脚本:藤村享平
原作:作・板橋雅弘
絵・吉田尚令
出演:棚橋弘至、木村佳乃、寺田心、仲里依紗、
オカダ・カズチカ、田口隆祐、
真壁刀義、バレッタ、天山広吉、小島聡、永田裕志、中西学、KUSHIDA、
後藤洋央紀、石井智宏、矢野通、YOSHI-HASHI、
内藤哲也、髙橋ヒロム、
淵上泰史、松本享恭、川添野愛、
大泉洋(特別出演)、大谷亮平、寺脇康文
<STORY>
大村孝志(棚橋)は人気も実力もNo.1のエースレスラーだったが、けがを原因で今は悪役レスラーとしてリングに。そんな姿を息子・祥太(寺田)には打ち明けられずにいた。ある日、孝志の職業が気になった祥太(寺田)は孝志の後をつけていくと…。
©2018「パパはわるものチャンピオン」製作委員会
●photo/金井尭子 text/くれい響 hair&make/山田みずき styling/小林洋治郎(Yolken)