坂元裕二さん、野島伸司さん、浅野妙子さんら名だたる脚本家を輩出した「フジテレビヤングシナリオ大賞」。歴史ある“ヤンシナ”で史上最年少受賞となった中学2年生の鈴木すみれさん(14歳)の受賞作品「ココア」がドラマ化。主演の1人に抜擢された、「nicola(ニコラ)」専属モデルで女優の南沙良さんにお話を伺いました。
14歳の女の子の脚本と聞いて、本当にびっくりしました
◆「幼な子われらに生まれ」(17年)、「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(18年・映画初主演)など映画で見せた演技力が高く評価されていますが、地上波ドラマ初出演にして初主演という大役を射止めた時はどんなお気持ちでしたか?
オーディションの時は、緊張しすぎてどんなお芝居をしたのかも覚えていなくて(笑)。後日、マネージャーさんから事務所に呼ばれて、“私、何かしちゃったかな…”ってすごくヒヤヒヤしながら行ったんですが、「出演が決まったよ」と聞いてすごくうれしかったです! 家に帰るまでは自分の中で喜びを噛みしめて、帰宅してすぐ家族に報告したら「よかったね~!」って喜んでくれました。
◆ご自身が今16歳の高校1年生。10代にして、さらに年下の方が脚本を手掛けた作品に出演するのはなかなかない経験ですね。
そうなんです。最初に脚本を読んだ時は、中学2年生(執筆当時は中学1年生)の鈴木すみれさんが書いたことを知らなくて。すごくすてきな作品だなと思っていたら、「14歳の女の子が書いたんだよ」と聞いて本当にびっくりしました。同時に、それを自分がお芝居で表現するんだと思うとプレッシャーも感じて、大丈夫かなって少し不安もありました。
◆本作は、それぞれ悩みや後悔を抱えながら生きる3人の女子高生のオムニバスストーリー。その中で沙良さんが演じるのは、複雑な家庭環境で育ち、学校ではいじめを受けて孤立している女子高生の黒崎灯(くろさき・あかり)。脚本を読んだ段階では、どんな人物に映りましたか?
灯はいろんな面を持った女の子。ちょっとブレていると感じる部分もあったので自分の中でピントが合わなくて、リハーサルの時もまだ自分の中で灯の人物像が作れずにいたんです。どうして見えてこないんだろうって悩んでいたのですが、共演者の渡辺(大知)さんと初めて一緒にお芝居をした時に、灯が隠しているちょっとした弱さや強さだったり、芯の部分が私自身と似ている部分があるなと感じて。ようやく灯という女の子がハッキリ見えてきて、演じやすくなりました。
◆家にも学校にも居場所のない灯が、渋谷のハチ公前でギタリストの雄介(渡辺)に声を掛けるシーンから物語は始まります。雄介との出会いが灯に大きな変化をもたらしていきますが、灯はその日に初めて雄介に出会ったのか、それとも何度か見かけていてようやく話し掛けたのか。脚本に描かれていない部分をどう想像しましたか?
それをずっと考えていて…。何回か雄介を見かけてはいて、その日の気分で声を掛けてみたのかなって思うんですけど、結局そこは分からないまま撮影が終わりました(笑)。
◆いじめや両親の不倫といった問題が3人の女子高生たちに降りかかりますが、沙良さんにとって遠い世界の話に感じたのか、もしくは身近な話として捉えたのかが気になりました。
私自身、最初に脚本を読んだ時は異世界に飛ばされたような感覚がありました。でも、2回、3回と繰り返し読んでいくうちに自分の中にすっと入ってきて。灯たちの気持ちに「確かにそうだな…」と共感できる部分が出てきたので、身近な話に感じられました。3人の女の子はそれぞれ別々の場所で暮らしているのにどこか共通するところがあって、物語の芯の部分がつながってるんです。こことここが似てるな、なんて発見をしながら脚本を読むのがすごく楽しかったです。
渡辺大知さんのギターを独占できて幸せでした(笑)
◆撮影現場での“喜怒哀楽”エピソードを聞かせてください。まずは、“喜び”から!
公園で灯と雄介が並んで座るシーンがあったんですが、渡辺さんが手に持っていたギターを何気なく弾いてくださったのがすっごく心地よくて。わずかな時間でもその音色を独占させていただいて幸せでした(笑)。もともと渡辺さんの出演した作品をいくつか拝見していたので、初めてお会いする時はとにかく緊張してしまって。私、すごく人見知りなんです(笑)。でも、お話したいなと思って頑張って話し掛けてみたら、とても気さくだし楽しくて面白い方でした。
◆続いて、“怒ったこと”…なんてありますか?
う~ん…(悩)。スクランブル交差点で撮影するシーンでちょっと雨が降ってきちゃって。おいおい雨~! って思いましたけど、最終的にはやんだのでよかったです。怒るほどじゃないですけどね(笑)。
◆では、“哀しかったこと”は?
寒かったことです(笑)。私は寒さに弱くて、特に夜のロケは冷えるので、体にカイロを3枚貼ったり。表情も動かなくなってしまうので、顔にもカイロを当てて温めてました。
◆最後に、“楽しかったこと”は?
楽しかったことはたくさんあります! 渡辺さんと一緒にお芝居をできたことが一番。あとは、脚本を書かれた鈴木さんが現場にいらっしゃって、少しだけお話しできたのがうれしかったです。でも、「どんな部活に入ってるんですか?」「今日は何を食べたんですか?」とかそういう質問ばかりしちゃって…。本当はもっと脚本のお話を聞きたかったです(笑)。
◆ちなみに、沙良さんはモノを書くということにご興味はありますか?
書けたらいいなとは思うんですけど、なかなか難しいですよね。中学生のころは読書感想文を書くことはあったんですが、最近は文章を書く機会がほとんどなくて。でも読書は大好きなので、小さいころから本はずっと読んでいます。
◆ドラマを楽しみにしている方に、ぜひここを見てほしいというアピールをお願いします!
灯が内に秘めているものが、すごく繊細で柔らかくて愛おしくて。そこが無防備に見え隠れする瞬間を見逃さないでほしいと思います。3人の女の子のかわいらしさ、悲しさ、切なさがギュギュッと詰まってきれいな映像になっていると思うので、私もぜひリアルタイムで見たいです!
■PROFILE
●みなみ・さら…2002年6月11日生まれ。神奈川県出身。
第18回ニコラモデルオーディションでグランプリを受賞し、現在も「nicola(ニコラ)」の専属モデルとして活躍中。映画「幼な子われらに生まれ」で女優デビュー。「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」で映画初主演を飾り、第43回報知映画賞・新人賞を受賞。2019年2月8日(金)公開の映画「21世紀の女の子」、5月17日(金)公開の映画「居眠り磐音」にも出演が決定している。
■ドラマ情報
第30回フジテレビヤングシナリオ大賞
「ココア」
フジテレビ
2019年1月4日(金)後11・30~深0・40
自分、家族、友人を愛せず人知れず葛藤を抱えている3人の女子高生が、もがき苦しみながらも生きる希望を見いだしていくオムニバスストーリー。南沙良、「Seventeen」専属モデルの出口夏希と永瀬莉子の3人が女子高生役で、いずれも地上波ドラマ初出演にして初主演を務める。
<出演>
南沙良 出口夏希 永瀬莉子
渡辺大知
浦上晟周
宇野実彩子(AAA)
柳原可奈子
椙杜翔馬 水沢林太郎
藤野詩音 山城琉飛
神尾佑
紺野まひる
・
斎藤工
脚本:鈴木すみれ
プロデュース:荒井俊雄 (『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』)
演出:阿部博行
©フジテレビ