心理スリラーという新たなジャンルを打ち立て人気を博した韓国発ミュージカル「ブラック メリー ポピンズ」が日本初上陸。宝塚歌劇団雪組トップスターとして活躍し、卒業後、初の舞台出演となる主演の音月桂さんに意気込みを伺いました。
初めての女性役は不安と期待でいっぱい(笑)
――宝塚を卒業されてから、これが初の舞台出演になりますね。
以前、朗読劇に出演させていただきましたが、ミュージカルとしては卒業してから初めてです。今回の「ブラック メリー ポピンズ」は、卒業から少したってお話を頂きました。華やかな物語が多い宝塚とはガラリと変わって少しダークな内容の作品で、“新しい自分を発見できるんじゃないか”“今まで経験したことがないような課題にぶつかるんじゃないか”ってすごく興味をかき立てられました。実は宝塚を卒業するに当たって、ミュージカルには一度けじめをつけようと思っていたんです。舞台に出たいという気持ちよりも、ドラマや映画などを活動のベースに置いていこうと。でも、この作品は私にとって初めての女性役だったので(笑)、女性役として舞台に立ったとき、“どんな自分が存在するんだろう”という不安と同時にわくわくして、挑戦することにしたんです。宝塚に入団してからの私は17年間、理想の男性像をずっと追求していたので、男性のしぐさのほうが得意なんですけどね(笑)。
――これまでの舞台と、心境の違いはありますか?
宝塚のころは男役のトップということもあって、自分はリードする側だったので、どうしてもリーダーシップを求められていました。あえて自分にプレッシャーをかけることもあったんですが、今回の舞台は心強い方たちがいらっしゃるので、甘えて、身を委ねて、みんなでいいチームワークを築けたらと思っています。DVDで韓国の「ブラック メリー ポピンズ」を拝見させていただきましたが、ものすごい迫力と、エネルギッシュさが伝わってきました。同じ作品ですが、演じ手や作り手が違えばまた別のものになると思うので、楽しみながら作っていきたいと思います。メロディーラインが日本のテイストと異なるので不安な部分もありますが、本家のエネルギッシュさに、繊細さをうまく取り入れていきたいです。
――雪組の先輩・一路真輝さんの存在は心強いですね。
そうなんです! 私が入団したときには卒業されていたのでご一緒したことはなかったんですが、お会いしたら、とても大らかで温かい方で。一路さんから学ばせていただくことがたくさんあると思うので、緊張はしますが、とてもいい機会に恵まれました。
――そして、男性との舞台での共演も今回が初めてです。
まだ、稽古場に男性がいるのが想像できないんですよ(笑)。でも先日、初めてご挨拶させていただいて、皆さん気さくな方ばかりで、すんなり入っていけそうです。4姉弟という設定ですが、稽古場でも姉弟のように過ごせたらいいなって。「あえてケンカとかしたいね!」ってみんなで話してます。
もっとたくさんの人に“音月桂”を知ってもらいたい!
――卒業から1年あまりたちましたが、ご自身の中で変化はありましたか?
おかげさまでドラマやバラエティに出演させていただくことも増えたんですが、何よりテレビを観るようになりました。自分の出演したドラマを観ると、いつもの自分じゃないような気がして…新鮮です(笑)。やはり今までは家と稽古場の往復だったこともあって、テレビとは縁遠い生活をしていたので、それを取り戻すかのように、積極的に観るようにしています。バラエティは…やっぱり緊張します。自分をさらけ出すというのは、お芝居より難しいかもしれません(笑)。でも、舞台の上の私しか知らない方たちにご覧になっていただいて、素に近い私を知ってもらえたらうれしいですね。
――最後に、これからの目標とファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
仕事面では、女性に戻ったこともあって(笑)、幅も広がったので、恋愛モノをはじめ、いろんなことに柔軟に挑戦したいです。プライベートでは、自分をさらけ出していく機会が増えていくと思うので、音月桂という存在をたくさんの方に知っていただけるように、そして女性の憧れになれるように、チャレンジできることには臆せず挑んでいきたいですね。「ブラック メリー ポピンズ」では、観に来てくださる皆さんと、1分1秒でも長く楽しい時間を共にしたいなと思います。絶対に損はさせませんので、ぜひ足を運んでください!
PROFILE
音月桂
●おとづき・けい…1980年6月19日生まれ。埼玉県出身。O型。
宝塚歌劇団に第84期生として入団し、2010年雪組トップスターに就任。
宝塚を卒業後、2013年から女優として活動を開始。初主演舞台となる「ブラック メリー ポピンズ」では4姉弟の1人、アンナを演じる。
公演情報
ミュージカル「ブラック メリー ポピンズ」
脚本・作詞・音楽:ソ・ユンミ
演出:鈴木裕美
上演台本:田村孝裕
訳詞:高橋亜子
出演:音月桂、小西遼生、良知真次、上山竜司、一路真輝
公演日程:2014年7月5日(土)~7月20日(日)
劇場:世田谷パブリックシアター
チケット料金:S席/9000円(全席指定・税込)A席/7000円(全席指定・税込)
チケット一般発売:発売中
オフィシャルHP(http://m-bmp.com/)
●取材/遊佐美玲