松本穂香「家族でも、大切なことは伝えないと分かり合えない」映画「酔うと化け物になる父がつらい」

特集・インタビュー
2020年03月04日

実体験に基づいたコミックエッセイの実写映画化で、アルコールに溺れる父を持つ主人公・サキを演じた松本穂香さん。難役を演じることも多い彼女に、本作での役作りのほか、オフの日のリフレッシュ法なども聞きました。

松本穂香インタビュー

◆インパクトが強いタイトルを聞いた時の印象は?

かなりヘビーな話かもしれないと大きなプレッシャーを感じました。でも原作を読むと、アルコールに溺れてしまうお父さんとそれに振り回される娘の関係性をはたから見ることで、ちょっと滑稽に見えたんです。監督も「原作が持つコミカルな雰囲気を大事にしたい」とおっしゃっていたので、みんなが楽しんで作ることによって、ただ単にヘビーなだけじゃなく、今まで見たことのないメッセージ性が強い面白い映画になるのではないかと思いました。

◆サキというキャラクターを演じる上での役作りは?

劇中に「他の人の普通が、私にとっての特別」というせりふがあるんですが、同じようなことを私に言った親友がいたので、その子の心境みたいなものは役作りに生かしました。私はいつも自分が演じて違和感がないお芝居を目指しているのですが、この映画の現場では、監督が「気持ち悪いところはないですか?」「言い難いせりふややり難い芝居があったら変えてください」と言ってくださったこともあって、自然とサキになっていくことができたのかもしれません。

松本穂香インタビュー

◆お父さん(トシフミ)役の渋川清彦さんとの掛け合いについては?

サキとお父さんはお互いの気持ちを伝え合わないので、渋川さんとはあえて現場でコミュニケーションを取らないようにしたんです。だからお芝居の方向性などの相談もするようなことは一切なかったです。

◆完成した作品を見た時の率直な感想は?

渋川さんが監督の描きたかったお父さん像を演じられていてすごかったです。実はお父さんもいろいろと大変だったという、原作では描かれなかった部分も描かれていて、最初に原作を読んだ時の滑稽さと悲しさが伝わってきました。ともさかりえさんが演じられた、お母さんのシーンが好きですし、撮り方や編集などによって、そのシーンの面白さに気づかされたりもしました。

◆本作はどのように見て楽しんだらいいと思いますか?

家族と言っても人と人なので、お互いに思っているだけでは全く伝わらないと思うんです。大切なことはちゃんと伝えないと分かり合えない。それも伝えられる時に。そういうことをしっかり教えてくれる映画だと思うので、ご覧になられる方には何かしら響いてもらえたらうれしいです。

松本穂香インタビュー

◆主演映画が続く中、本作は松本さんにとって、どんな一作になったと思いますか?女優としての今後の展望を併せて教えてください。

主演をやらせてもらえることは本当にうれしいのですが、「主演だから、脇だから」ということを今後もあまり考えずにやっていきたいと思います。常に一作一作、気を引き締めて。お芝居を好きな気持ちでやっていきたいタイプなので。この映画のようにナチュラルなお芝居を求められることも好きですが、ハッキリとキャラが付いている役も好きなんです。女優さんとして成長できる場だと思いますし、毎日違うことが起こる方が楽しいなと思うんです。だから悪い役とかも機会があれば、どんどんやりたいです!

◆サキが漫画を描くように、松本さんにとって現実逃避やリフレッシュ法は?

気になる映画がどんどん公開されるので、映画を見に行くことです。ただ海外の映画なら集中して見られるのですが、日本映画を見るとどうしても現実に戻されてお芝居について考えてしまうことも多いですね(笑)。あと海外ドラマも見ますし、お笑いが好きで、芸人さんをリスペクトする気持ちも強いので、毎日アップされる動画を見たり、ライブも見に行ったりします。私もインスタをやっているんですが、その即興動画が面白いと言ってもらえることがあるんですよ! あとは…新しい趣味がほしいです(笑)。

■PROFILE

●まつもと・ほのか…1997年2月5日生まれ。大阪府出身。O型。主な出演作にドラマ『この世界の片隅に』、映画「おいしい家族」「わたしは光をにぎっている」など。ドラマ『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系)に出演中。今秋には映画「みをつくし料理帖」が公開予定。

■作品紹介

「酔うと化け物になる父がつらい」

「酔うと化け物になる父がつらい」
3月6日(金)より全国公開

<STAFF&CAST>
監督・脚本:片桐健滋
原作:菊池真理子
脚本:久馬歩

出演:松本穂香、渋川清彦、今泉佑唯、恒松祐里、濱正悟、浜野謙太、ともさかりえほか

<STORY>
毎日アルコールに溺れる父(渋川)、新興宗教にはまる母(ともさか)という一風変わった家庭環境で育ったサキ(松本)。普段はおとなしいのに酔うと化け物のように豹変する父の行動に悩まされる彼女は、そんな家族の崩壊を漫画として笑い話に昇華することで毎日を生きていた。そんなある日、父に病気が見つかる。

©菊池真理子/秋田書店
©2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

●photo/中村圭吾 text/くれい響 hair&make/倉田明美 styling/有咲

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