女性2人の友情とこじれた関係を描くドラマ『ナイルパーチの女子会』(BSテレ東 1月30日スタート 毎週(土)後9・00)で、主人公の志村栄利子を演じる水川あさみさん。ドラマの見どころと共に、人間が持つ危うさ、人間関係の難しさについて話してくれました。
◆原作や台本を読み、『ナイルパーチの女子会』という作品にどんな印象を持ちましたか?
人間が持っている心の闇が丁寧に描かれた作品だと思いました。どちらかというと女性のほうが共感できるかもしれないですね。女性の友情って意外と複雑な思いを抱えた上で成立していたりしますから。逆に男性は“女の人ってこんなこと考えながら友達をやってるんだ、怖いな”と思う方が多いかもしれません(笑)。
◆栄利子は、今まで同性の友達がいなかったことから翔子(山田真歩)との友人関係に固執し、ストーカーじみた行為に走ってしまいます。誰しもそういうことが起こりうるということでしょうか?
そうですね。友達が他の子と仲良くしているのを見たら、何か面白くない、嫉妬してしまうという感情は誰しも一度は抱いたことがあると思います。だからと言って、多くの人は人間関係の距離感を失うことはないんですけど、栄利子は不器用でうまく人間関係を築けなかったりするから暴走してしまうんですね。そういう栄利子の心を反映するかのように服の色とかも変わったりするので、見た目からも栄利子の危うさを感じていただけるんじゃないかと。私自身、今までこういう女性を演じたことがなくて難しいですが、栄利子のことを少しでも理解しながら演じていけたらと思っています。
◆水川さん自身、栄利子と似ていると思うところはありますか?
あまり似ていないと思います。栄利子は自分が周囲からどう見られているかをすごく気にするんですけど、私はあまり他者の目を気にしなくて。ただ、友達が欲しいという気持ちは分からなくはないです。今はもうそれなりに人との距離感や自分がどうあればいいかが分かっていますが、学生のころ、大阪から東京に出てきた時は“早く友達を作らなきゃ”って思ったことがあります。特に上京したての時は文化の違いも乗り越えた上で友達を作らなきゃいけないので、焦りも大きかったです。栄利子を見ているとそういう昔の自分の感情を思い出して、ちょっとむずがゆくなります。
◆ちなみに今どんな友達が欲しいですか?
私、キャンプをしてみたいんです。決して昨今のブームに乗っかっているわけではなく(笑)、結構前から思っているんですけど。一体どこから手を付けていいかが分からなくて。もしキャンプに詳しい人と友達になれたら、入っていきやすいのかなって。憧れているのは、テントを張って、中で寝泊まりすること。あとはやっぱり、ご飯ですね。噂に聞くと、鍋を作ったりする人もいるらしくて、自然を感じながらのお鍋なんて最高だと思います。
◆いっぽう、栄利子と友達になる翔子はどんな人だと思いますか?
おひょうさん(翔子)は、日々を飄々と生きていて。先のことを深く考えてはいないけど、どうやったらその日一日を楽しく過ごすかを考えている、すごくステキな人だと思います。きっと彼女みたいな人と友達だったら楽しいだろうし、それが栄利子が思い描いた理想の青春なんでしょうね。ただ、おひょうさんの心にも闇があって。栄利子が崩れ落ちるようにおかしくなっていくとしたら、おひょうさんは別次元に行っちゃう感じ。他の登場人物も闇を抱えた人ばかりで、回を増すごとに怖くなっていくドラマだと思います。
◆水川さん自身は、友達や知り合いの怖い一面を見たことはありますか?
私の友達から聞いた話なんですけど、ある女性と何年か前に知り合ったそうで。その人とは仕事を通じて知り合ったらしいんですが、しばらくしてから教えられていた個人情報が全部ウソだということに気づいたそうです。名前だけでなく、年齢や出身地、仕事まで、全部違うってすごいですよね。虚言癖なのかな? 何なら、好きな芸能人の方がいて、その人と付き合っているとまで言ってたらしくて。今はもうどこにいて何をしているか、全然分からないらしいんですけど。やっぱり人間って怖いなと思いました(笑)。
PROFILE
●みずかわ・あさみ…1983年7月24日生まれ。大阪府出身。AB型。最近の出演作にドラマ『住住(2020)』、映画「アンダードッグ」「滑走路」「ミッドナイトスワン」「喜劇 愛妻物語」「グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~」など。
番組情報
『ナイルパーチの女子会』
2021年1月30日START
BSテレ東
毎週(土)後9・00~9・55
原作:柚木麻子「ナイルパーチの女子会」(文春文庫)
脚本:横田理恵、綿種アヤ
監督:瀧悠輔 プロデューサー:戸石紀子、田中美幸
出演:水川あさみ、山田真歩、篠原篤、田村心、小池里奈、淵上泰史、飯田基祐、宮地雅子 森矢カンナ ほか
<ストーリー>
キャリアウーマンの栄利子(水川)は、美人で仕事もできると評判の女性だったが、同性の友人がいないことがコンプレックスだった。そんな栄利子の楽しみは、ズボラな主婦・翔子(山田)のSNS日記を読むこと。ある日、たまたま見かけた女性が翔子だと気づいた栄利子は思い切って声をかけ、仲良くなることに成功する。憧れの人と友達になれたことで栄利子は浮かれるが、翔子からある日突然連絡が途絶えて、思いもよらぬ行動を取るが…。
●photo/中田智章 text/小山智久