◆夏川さんが描く作品に心優しい登場人物が出てきますよね。そこにはどんな思いがありますか?
そうですね。例えば、余命わずかな患者さんの中で「先生、少しは休んだほうがいいよ」とか「全然ご飯食べてないみたいだからパンを買っておいたよ」と言ってくれる方いるんです。おそらく自分の方が相当調子が悪いし痛みもあるはずなんですけど。こういう風に大変な状況の中で他人に気を遣えるというのは本当にすごいことですよね。
命が関わるような状況なのにそれでも他人を思いやれる人に出会うと、この人たちの姿を残していきたいなと、こういう人がちゃんと実際に存在するんだということを、私は伝えたいと思うんです。人間の美しい面や清らかでかっこいい面をしっかり書き残そうという思いがあって、いつも物語を書いています。
◆だから夏川先生の作品では、人の優しさがたくさん描かれているんですね。
まさに。人と人が支え合うことが一番ものごとを良くしてくれると思ってるので。医者が患者を助けるだけじゃなく、患者も医者を助けている。人と人同士が支え合っている景色が、この作品を通してうまく伝わるとうれしいです。