2月15日(月)からスタートする福士蒼汰さん主演のスペシャルドラマ『神様のカルテ』(テレビ東京系)の原作者で、現役の医師・夏川草介さんにインタビュー。「人間の美しい面や清らかでかっこいい面を描きたい」と作品に込めた思いや、主人公・一止を演じる福士さんの印象などを伺いました。
◆本作は福士蒼汰さんが主演となりますが、周りの反響はいかがでしたか?
『神様のカルテ』の主人公・一止は私がモデルではないと常々言っているんですが、周りの看護師たちはきっと一止と私を重ねて見てくると思うんです。放送が始まったら確実に彼女たちから“さまざまなこと”を言われるはずなので、今から心構えをしています(笑)。
◆福士さんにお会いした印象はいかがでしたか?
背が高くてかっこいい人でしたね。撮影の合間だったのでそんなに多く話をしたわけではないですが、「コロナで大変な時期ですが頑張ってください」と言葉をかけていただきました。こんなにかっこいい方が、どのように変人・一止を演じてくださるのか、今からとても楽しみにしています。
◆ドラマ化の話を聞いた時のお気持ちを教えてください。
第1巻を書いたのはもう10年以上になりますから、これだけ長い期間がたって、2時間×4回というこれだけ大きなボリュームでやっていただけるということを聞いた時はうれしかったですね。書き続けてきて良かったです。
◆ドラマの脚本は事前に読まれましたか?
はい、読ませていただきました。映画化された時は完成した作品を見て純粋に楽しませていただいたんですが、今回はちゃんと脚本を読ませていただいて。とても面白かったです。よくこんな面白い文章を考えたなと。
◆具体的にはどんな部分でしょうか?
私が作品を書くときに一番重要視しているものの中の1つにユーモア感覚があるのですが、今回のドラマではそのユーモアと医療をテーマにしたシリアスな部分のバランスがとても良くて。私が原作で描きたかった雰囲気を上手にドラマ化してくれるんじゃないかと思いました。
◆夏川さんが描く作品に心優しい登場人物が出てきますよね。そこにはどんな思いがありますか?
そうですね。例えば、余命わずかな患者さんの中で「先生、少しは休んだほうがいいよ」とか「全然ご飯食べてないみたいだからパンを買っておいたよ」と言ってくれる方いるんです。おそらく自分の方が相当調子が悪いし痛みもあるはずなんですけど。こういう風に大変な状況の中で他人に気を遣えるというのは本当にすごいことですよね。
命が関わるような状況なのにそれでも他人を思いやれる人に出会うと、この人たちの姿を残していきたいなと、こういう人がちゃんと実際に存在するんだということを、私は伝えたいと思うんです。人間の美しい面や清らかでかっこいい面をしっかり書き残そうという思いがあって、いつも物語を書いています。
◆だから夏川先生の作品では、人の優しさがたくさん描かれているんですね。
まさに。人と人が支え合うことが一番ものごとを良くしてくれると思ってるので。医者が患者を助けるだけじゃなく、患者も医者を助けている。人と人同士が支え合っている景色が、この作品を通してうまく伝わるとうれしいです。
◆医者として仕事をする傍ら作家として執筆作業をするのは大変なことだと思います。なぜ長年にわたって続けることができるのでしょうか。
やっぱりそう思いますよね(笑)。本当のことを言うと、私は常に医者で、作家であるという感覚はほとんどないんです。じゃあなぜ書き続けるのかというと、それは多分書くことが自分の支えになるからだと思うんですよね。
自分が行き詰まっている時に文章を書くと、自分が何に迷っているか気づくことができるんです。頭の中を整理することで次に出会う患者さんの役に立つことができる。私にとって執筆という作業は、車の片方の車輪ではなくて、医者という仕事を支えるためのリハビリみたいなものなんです。
◆それでも医者と作家を両立するのは大変なことだと思います。
よくいろんな人から二足の草鞋を、って言われることが多いのですが、私としては二足の草鞋を履いたつもりは一度もなくて。ずっと医者でやっていると思っています。だから今も取材していただいてますが、もしこのタイミングで電話が鳴って誰かが急変すれば、私は取材を中断して病院に行くんですよ。失礼なことだとは分かっていますが、自分の中での第一優先は患者さん。そこは作家を始める前から全然変わっていないです。
◆あくまでも夏川先生は医者、ということなんですね。
医者と作家という2種類の車輪で、私という車が回っているわけではないので。医者という車を動かすために、時々、作家業というガソリンを入れているような感覚ですね。
医療現場に立つ者として、『神様のカルテ』の原作者として、このコロナ禍のタイミングで人が支え合う景色をドラマを通して発信できるのだとしたら、今の大変な状況の世の中に少しでもプラスの変化をもたらせるんじゃないかと、そんな希望を持っています。
PROFILE
●なつかわ・そうすけ…1978年生まれ。大阪府出身。信州大学医学部卒。長野県で地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。同書で2010年本屋大賞第2位、映画化もされた。最新作に『始まりの木』がある。
番組情報
ドラマスペシャル『神様のカルテ』
テレビ東京系
2021年2月15日(月)スタート(全4回)
毎週(月)後8・00~9・54
原作:夏川草介「神様のカルテ」「神様のカルテ2」「神様のカルテ3」「新章 神様のカルテ」(小学館刊)
出演:福士蒼汰 清野菜名 上杉柊平 新山千春 伊原六花 上原実矩 村杉蝉之介・大倉孝二 渡辺いっけい/大島優子 イッセー尾形 北大路欣也ほか
第1夜ゲスト:風吹ジュン 岡山天音 宮澤エマ 平山祐介 小倉一郎
脚本:森下直
監督:村上正典(共同テレビジョン)、谷口正晃、橋本一
<イントロダクション>
栗原一止(福士蒼汰)は信州にある「24時間、365日対応」の病院で働く内科医。ここでは常に医師が不足している。専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事で、睡眠が3日取れないこともあるが、 妻・ハル(清野菜名)に支えられ日々の診療をなんとかこなしている。
そんな一止に、母校の医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば、休みが増えハルと過ごす時間も増える。最先端の医療を学ぶこともできる。だが、大学病院に「手遅れ」と見放された患者たちと、精いっぱい向き合う医者がいてもいいのではないか? “命”の現場で葛藤しながら生きる一止が出した答えとは…。
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kamisama_karte/
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©夏川草介/小学館
●text/山村千晴