4人組バンド・sumikaが3月3日(水)に待望の3rdフルアルバム「AMUSIC」をリリース。シングル8曲に加え、新曲8曲を収録した本作の魅力や、制作時の裏話などを聞きました。
◆まず「AMUSIC」というタイトルに込めた意味を教えてください。
片岡健太(Vo./Gt.):2020年にこのような状況下で思うように活動ができず、音楽の場や音楽から得られていた感情を失った時に「あ、本当に音楽がなくなってしまったな」という、“Amusia”(失音楽)の感覚に陥ってしまったんです。でも、オンラインでミーティングをしたりレコーディングをしたりと、メンバーとつながっていく中で「やっぱり音楽って楽しいな、自分たちにとっての音楽は“Amusement(娯楽)”なんだ」と思うことができたんです。さらに、好きな人たちと楽しく作り上げることができた音楽は、何とも比べる必要がなく、何にも似ていない唯一無二のものなので「これは1つの音楽(“A music”)だな」と思い、その3つの言葉を組み合わせて“AMUSIC”という造語を作りタイトルにしました。
◆本作はシングル8曲に加え、新曲8曲が収録された豪華な内容になりましたが、レコーディング作業は順調でしたか?
片岡:本来はデモを作ってから、プリプロと言ってレコーディングをする前に一旦スタジオで合わせてから本番のレコーディングを行うという流れがあるんですけど、昨年の夏ごろにアルバム用の曲作りをはじめて、レコーディングに入ったのが11月だったので、急ピッチで取り掛からないとリリースに間に合わないということになり、デモが上がってきたら、すぐレコーディングに入るという感じで、間の工程を省くことになったんです。
荒井智之(Dr./Cho.):そういうやり方は今回が初めてでしたね。
黒田隼之介(Gt./Cho.):昨年はライブツアーができなかったので、その分時間があると思っていたのですが、思ったよりも時間がなくてバタバタでした。
片岡:でも、みんなでアレンジを変えていったり、その場のひらめきを大事にしていたので、フラッシュアイデアの結晶みたいなものもたくさんあって、それもよかったのかなと。2020年はライブの本数が少なかっただけに、ここにちゃんとライブ感のあるものが生まれてきたということは、自分たちの欲求に対してもすごく正直に作れたアルバムなのかなと思います。
◆それだけに一音一音に生感、リアルさがあり、純粋に音を楽しめる上に、何よりいろんな感情に寄り添ってくれるアルバムだなと感じました。
片岡:食に例えて言うと、今日ハンバーグを食べたら、明日はラーメンが食べたい、とんかつが食べたいってなるじゃないですか。ある種バンドって、変わっちゃいけないような、とんかつ屋はとんかつだけ作っておくべきだろみたいな(笑)、そういったものと戦ってる節があったりするんですけど、その論でいくと僕らは違っていて、中華も洋食も和食も全部食べられるようなファミレスみたいなバンドなんです。だから、今回は大ボリュームになってしまったのですが、いい意味で16曲全てがバラバラですし似た楽曲が1曲もないんです。
◆バリエーション豊かな上に、全てがメインメニューですね。
片岡:今作では4人全員が作曲をしていることも大きいです。1つのテーマに沿って曲を作っても4通りあるわけですからね。
◆sumikaはお互いをリスペクトしあい、ファンの方から人格者バンドなどと称されていますが、皆さんはどのように捉えていますか?
片岡:メンバーそれぞれが前に組んでいたバンドが休止したり、解散したりして、今のsumikaがあるので、いわゆる失敗や挫折、人を失う悲しみをみんなが味わっているんです。その上でsumikaをやるという選択をしているから、メンバーが一緒に音楽をやってくれることは当たり前じゃないなということをものすごく感じています。
片岡以外:(大きく頷く)
片岡:メンバーで音楽を鳴らすと、いまだに結成した時のことやつらかった時の思い出が呼び起こされたりもするんですけど、ちゃんと思い出せる過去、失敗したことがあるというのは、ある意味バンドの武器だと思います。結成前からsumikaを結成するプロセスもそうですし、2015年に僕の声が出なくなってしまい7か月間活動を休止して戻ってきたり、昨年みたいに活動が急にストップしてしまうような時期もあったり…。どちらかというと順風満帆というよりは、一人ひとりが暗い気持ちになったり、闇と正しく向き合って乗り越えてっていうのを繰り返してきているバンドだと思うので、その経験から生み出せる曲もあると思います。
◆つらい過去を経験しているからこそ、もうどんな状況になろうとも逃げることはないと…。
片岡:いや~、逃げますよ。
全員:(笑)。
片岡:逃げたくなったら全員で逃げます。「何か嫌だ、怖い」と思ったら「じゃあ、一緒に逃げようぜ」って。わりと幼稚な理由で逃げたりしますね(笑)。でも、逃げたら逃げたで、4人が一緒ならその方向も楽しそうだなって思えるだろうし。だから、人格者バンドと言っていただくこともありますが、いわゆる品行方正ないい子たちではないです(笑)。
荒井:ダメなところもたくさんありますしね。
片岡:むしろみんな破綻してるところがあるから、分かり合えるというか。
黒田:似たもの同士的なね。
片岡:バンドだからいいけど、たぶん個々で生活していたら、まあまあやばい人たちの集まりだと思います(笑)。
小川貴之(Key./Cho.):僕、頭洗えないです。
小川以外:(笑)
片岡:えっ、頭は洗えるでしょ?
小川:いや……無理。
片岡:じゃあ、洗ってあげるよ、しょうがないな~。
小川:リンス少なめでお願いします。
片岡:注文が多いよ(笑)。もう、大人でしょ!?
小川:すみません。
全員:(笑)
片岡:まあ、こんな感じで補いあってますね(笑)。4人で1人の人間みたいなイメージで、sumikaというもので守られてるから、存在できてるっていうのはあります。
小川:間違いないです(笑)。
◆こういった普段の和やかなバンドの空気感がsumikaの楽曲に反映されているような気がします。
片岡:根詰めることも大事だと思いますし、実際に根詰めてる瞬間もありますけど、みんなと一緒に音楽をやれることが楽しいというのが一番にあるんです。僕は高校時代、軽音楽部だったんですけど、その延長戦みたいな感じで僕らは常にワイワイガヤガヤしてる。大人になってもあの時の空気と変わらずできているというのは、自分にとってもすごく特別で幸せな場所だなって思いますね。
◆皆さんにとっても最高のsumika(住処)なんですね。
全員:そうですね。
片岡:メンバーだけじゃなくて、僕らの音楽を聴いてくれるファンの方やsumikaを大事にしてくれてる方が、掃除をしてくれたり、なんか雑草生えてきたから抜いておいたよとか、花植えておいたよとか、ご飯持ってきたよというような感じで、みんなで一緒にsumikaを作ってきたと思ってるんです。長くsumikaを愛してくれる方に対してはもちろん感謝してますし、その気持ちはずっと変わらないですけど、新しく興味を持ってくださった方にもいつでもどこからでも入ってきてほしくて、常にドアを全開にしている状態です。よくライブでも言ってるんですが、ドアを開けっ放しでいられて、いつでも誰でも来てもらえて、いつでも帰ってこれる場所があるということを約束し続けられているのはうれしいことですし、そこが居心地がいいなと思ってきてくれる方がいるのは本当に幸せなことだなって思います。
◆sumikaの音楽は、自分の気持ちに素直に向き合える場所でもありますよね。
片岡:帰る場所がないとやりきれないじゃないですか。特にこのご時世、実家になかなか帰れない人も多いと思うんですけど、帰るところがないなと思ったときに、ふと思い出してもらえるようなバンドでいたいなと思いますね。今、明るい曲聴けないよっていう時に、この曲なら聴けるとか、逆に今暗い曲聴いたら余計に落ちちゃうよっていう時に聴ける曲とか、喜怒哀楽、365日、春夏秋冬、どのタイミングでも寄り添える楽曲を用意したつもりですし、この曲は好きだけど、この曲は別になぁと思ってもらっても全然構いません。その時々に自分の気持ちに合わせて僕らの音楽を楽しんでもらえたら、そこがちゃんと皆さんの帰る場所になってくれるはずなので、ぜひたくさんの方に「AMUSIC」を聞いてもらえたらうれしいです。
黒田:楽しみ方は無限大ですね。
◆では、バンドとしての今年の目標や挑戦したいことはありますか?
黒田&荒井&小川:一番はライブがしたいです!!
片岡:そうだね。アルバムが完成するとおのずとライブしたいな~という気持ちが生まれてくるんですけど、しばらくの間は通常のライブができなくても、今はオンラインだったり、人数の制限を設けてやったりと、表現の方法はたくさんあると思うので、何かしらの形で実現させられたらと思っています。出会いからはじまり、そこから生まれる感情というのはたくさんあると思うので、僕たちもいろいろ模索しながら皆さんと出会う機会を作っていきたいなと思っています。それまで頭の片隅でもいいのでsumikaのことを気にかけていてほしいです。
PROFILE
sumika
●すみか…川崎市出身の4人組バンド。さまざまな人にとっての“sumika(住処)”のような場所になってほしいとの願いを込めて、2013年5月に結成された。ロックとポップを融合した音楽を作り続けている。
リリース情報
sumika
3rd Full Album「AMUSIC」
2021年3月3日(水)発売
photo/大石隼士 text/星野彩乃 hair&make-up/URI styling/加藤将(IN THE FLIGHT inc.)