湯川ひな「人生の先輩方から“表現すること”との向き合い方を学びました」『FM999 999WOMEN’S SONGS』

特集・インタビュー
2021年03月26日

WOWOWオリジナルドラマ『FM999 999WOMEN’S SONGS』で主人公・清美役に抜擢された湯川ひなさんは、「女って何?」をテーマにした本作で、連続ドラマ初主演を飾る。湯川さんが本作への思い、20歳の“女”のリアルな心境を語ってくれました。

◆本作は、湯川さん演じる主人公・清美が「女って何?」とつぶやくと、突如として脳内ラジオ“FM999”がスタートし、清美の悩みに応じてさまざまな女たちが “女のうた”を披露していくというユニークな設定。脚本を読んだ感想は?

清美がいろんな理由があって1人で頑張っちゃうところや普段から妄想するところに共感しました。“FM999”は清美の脳内という設定なので、このお話は清美の世界では“脳内”で完結しています。ただ彼女は“女たち”からパワーをもらってそれを共有していけるはずだから、私としては清美にこの作品を見てもらいたくなりました。もちろん視聴者の方も、そんな清美に感情移入できるんじゃないかなと。「女って何?」という答えがこの作品にあるというよりは、混沌としたものにいったん区切りをつけるような、すとんと腑に落ちるような感覚になると思います。

◆役作りについて教えてください。

まずドラマの撮影にあまり慣れてなくて、映像の中に清美がいて不自然じゃなくなるような表現ができればと思って演じていました。それから清美の気持ちを1つとっても、それを外に出すのか、内に秘めるのかということで迷うこともありましたし、経験値が追い付いていなくてうまく演技の抑揚をつけられないなど苦戦することがたくさんありました。ただ私が16歳の時も清美と同じように自分がどうしたらいいのか、自分は何なのかといった混沌としたものを内に秘めながらも外面はちゃんとしなきゃと思ってたなって。そんな自分の外に出ているものと内にあるものがあまりかみ合ってない感じは、清美と通ずることがあってキャラクターとしてはすんなり役に入れた気がします。

◆主演として心掛けたことは何かありますか?

とにかく私は自分のシーンで撮影時間が押してしまったり、現場がうまく回らなかったりしないようにと思っていました。ただ私はムードメーカーなタイプでもなく、1人でDJの声を聞きながら会話する演技が多くて(笑)。その分スタッフさんが私だけに集中している状態だったので気持ちをゆだねることもできたし、とてもぜいたくな時間だったなと思います。作品全体では1か月、清美の現実シーンは10日間ほどの撮影だったんですが、連日女たちを演じる女優さんがいらしてくださったこの期間は長かったのか、あっという間だったのかよく分からない時間感覚になっていました。

◆脚本、総監督、全楽曲の作詞を担当する長久允監督とは3度目のタッグです。

オーディションに受かったこと自体ももちろんうれしかったのですが、長久さんの作品が好きなのでまた面白いものに関わることができるんだなというわくわく感がありました。長久さんとのやりとりで印象に残っているのが、最後のシーンを撮る時に“清美はそんなに強くなくていいよね”とお互いに確認し合ったこと。私と長久さんの考える“清美像”にほとんどズレはなかったと思いますが、このシーンの撮影では“ちょっと違うんじゃないか”って思うところがあったので、そのことについてお話させていただいて。それまで長久さんとは役について話すことはあまりなかったので、あらためてそれぞれの考えをじっくり話すことって大事だなと実感しました。

◆宮沢りえさん、八代亜紀さんなど豪華ゲストが歌う“女のうた”も本作の見どころの1つですが、撮影はいかがでしたか?

台本で歌詞を読んだだけじゃ分からなかった曲調、メロディーを聴いて、驚きが大きかったです。そして人生の先輩の方々とたくさんお会いして、それぞれの“表現すること”との向き合い方を学ばせていただきました。実は、映像では “女たち”と清美は一緒には映らず、カメラが私の目線になっています。ただ現場で共演者の皆さんと会話するシーンの空き時間には“内臓宝石の女”の真矢ミキさんと私の大好きな宝塚のお話をすることもできて。“総理大臣の女”の八代亜紀さんはテレビのイメージそのままのとてもチャーミングな方で、私もお会いした時にパワーを頂きました。

◆中でも印象に残っている“女たち”からの言葉はありますか?

「知らないことは罪だよ」という清美のせりふがあるんですが、その前に“毛皮のコート着る女”(メイリン)が「無知なのは罪」って言うんです。そのシーンが好きで、私もはっとさせられた言葉でした。

◆そして物語では、TARAKOさんが声を担当した“FM999”のDJと清美のやりとりも重要なパートになっていますね。

清美にとっての“FM999”は誰でもきっと経験がある、頑張らなきゃいけない時に自分で自分を励ましたりする存在だったんだと思います。そしてラジオDJ役のTARAKOさんは本当に優しくて、その場にいるみんなが大好きになっちゃうようなすてきな方でした。私はTARAKOさんの仮収録した音源を聞きながらお芝居をしていたんですが、TARAKOさんの声を聞くだけで本当に気持ちが動くんです。声だけでこんな表現できるなんて素晴らしいなって感動しました。

◆作品のテーマにちなんで、湯川さんがなりたい“理想の女”とは?

少年、少女、大人っぽさもあって、おばさん、おじさんっぽさもある、いろんな要素を持った女になりたいかもしれないです。“今この人はこういうふうに見えるな~”っていうのが、次の瞬間には変わっているような、いろんな雰囲気が出せる人になりたいですね。女優としてはたくさんの人が共感できる社会においての暗黙の“普通さ”からあまり外れないような現実的な人でありたいなと思います。

◆湯川さんが最近「○○って何?」って思ったことは?

 「生きるって何?」かな(笑)。例えば大学受験に合格するぞ! とか、今までは目の前のことばかりにとらわれていたんですが、生きる上での大学受験って何? じゃあ生きるって何? と思うことがあって。もともと私がちゃんとした理由があってから動きたいタイプっていうのもあるんだと思います。でも何で生きているのかも分からないのに“生きている”状態の面白さも考えちゃったりするんですよね。

PROFILE

●ゆかわ・ひな…2001年2月26日生まれ。東京都出身。映画「あえかなる部屋内藤礼と、光たち」、マカロニえんぴつ「ヤングアダルト」のMVなどに出演。ショートムービー「そうして私たちはプールに金魚を、」(長久允監督)では主演を務めた。

番組紹介

WOWOWオリジナルドラマ『FM999 999WOMEN’S SONGS

WOWOWオンデマンドにて2021年326日(金)配信スタート
WOWOWプライム 2021年3月29日スタート 毎週(月)後9・301000

text/山下紗貴 hairmake/山下亜由美 styling/岡本さなみ 衣装協力/ritsuko karitacarat a

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