鬼才・白石晃士監督の最新作『ある優しき殺人者の記録』に出演した葵つかささんにインタビュー。驚異の“86分間ワンカット”撮影の裏話などを語ってもらいました!
追いつめられて、いい緊張感が出ました
――脚本を読んだときの感想は?
いままでやったことがないような、自分とは真逆の役柄だったので、正直最初は動揺したというか、どうしようっていう不安がありました。結構声を張るシーンが多かったんですけど、家で練習していても難しくて…。
――“86分間ワンカット”の撮影は大変だったと思うんですが、いかがでしたか?
リハーサルはしたんですけど、密室ですし、暗くて寒い中でずっと撮っていたので、みんなが追いつめられて緊迫した中で撮っていたので怖かったです。
――リハーサルはけっこうされたんですか?
そうですね。監督のこだわりも強かったので、かなり練習しました。
――韓国での撮影はいかがでしたか?
まず、すごく寒くて。私はほとんど服を着ていない役柄だったので寒いし、電気も通っていないような廃虚だったので、凍えながら撮影しました。でも、いい意味で自分自身が追いつめられていって、いい緊張感みたいなものが出ました。
――撮影において日本との違いはありましたか?
スタッフさんがほとんど韓国の方だったんですけど、みんなが意見していたというか、監督だけじゃなくて、メイクさんやアシスタントさんも、みんなが「こうしたほうがいいんじゃないか」みたいなことを言い合っていましたね。監督も一緒に考えながら、何度も何度も練習しました。
――葵さんも提案しました?
ぜんぜんないです。まったくないです(笑)。私は自分がやることに精いっぱいだったんです。
――共演者の方たちとはお話されたりしましたか?
キム・コッビさんとはけっこうしゃべりましたね。彼女は日本語がしゃべれたので、通訳みたいな役割もしてくれて。メイクさんに「髪をこうしてほしい」みたいなことを伝えてもらったりして、すごく助けてもらいました。
――鬼才・白石監督の現場はいかがでしたか?
まず、監督自身が出演しているっていうのに驚いたんですけど、監督は韓国語を勉強してきていて、撮影の合間にも練習していたのですごいなって。
私が演じたツカサは強い役柄だったので、監督からは「もうちょっと強く言って」「もうちょっとかっこよく」と言われたりしましたね。米村亮太朗さん演じる凌太と深い結びつきがあって、お互いのためなら死ねるみたいな役だったので、あんまり表には出さないけど、お互いがつながっているみたいな表現の仕方のアドバイスをいただきました。
本当にビビってる顔なんです、あれは。
――本作では、アクションシーンにもすごくリアリティがありました。
刃物を向けられるシーンではコッビさんもすごく力が入ってるので、スレスレに来たりするんですよ。練習の時点でもう、かすってるみたいな。だから本当にビビってる顔なんです、あれは。
でもみんな役に入り込んでるから、あんまりそんなことも言えないし(笑)。
――そんな大変な思いをすることも多いでしょうが、演じるのは楽しいですか?それとも難しい?
両方ですね。全部が全部、手探りなので難しいなって思います。合っているのか合っていないのか分からないし。でも褒めてもらえて「あ、これでよかったんだ」っていうときがすごいうれしいですね。
――アダルトのジャンルで絶大な人気を誇る葵さんですが、ほかのジャンルの作品との違いはありますか?
今回の作品もそうですし、前回の『ゴッドタン キス我慢選手権』もそうですけど、アドリブというか、ずっと通して撮っているのはAVと似てるなっていうのは感じました。
――『キス我慢』もすごかったですよね。試されてるみたいなところがありますよね
ありますあります。すごく怖いです。でも楽しまなきゃ面白くないし、ハラハラドキドキしながらやらせていただきました。
――劇団ひとりさんもすごいですけど、一緒に出ている方もすごいです。
本当に強くなれます(笑)
――通しで撮影している部分はアダルトと似ているということですが、違う部分としてはどんなところがありますか?
AVでは切られることはないので、そこはちょっと違うのかな。今回の作品だと「切られちゃっても仕方ないな」みたいなところがちょっとあるじゃないですか。いいものを作るためなら。
――仕方なくはないと思いますけど(笑)
そういう緊迫感でいえば、こっちのほうがありますね。常に緊張してるっていう感じでした。
――見せ方というか、カメラへの映り方の違いがあるのかなと思ったのですが、いかがですか?ほかの人にカメラが向いているときにも演じていなきゃいけなかったり。
それ、すっごく困りました(笑)。もっとうなだれてなきゃいけないって言われたりとか。
ドキュメンタリーとか、人がしゃべっているものが好き
――本作はホラー、スリラーというジャンルになりますが、そういう作品は普段見ますか?
あんまり見たことがなくて、これを撮る前に白石監督の前の作品を見たり、人間の怖い部分を描いた作品などを見ました。
人間のドロドロしたところみたいなのも好きですね。
――プライベートの時間は映画を見たりして過ごされるんですか?
どっちかというとインドア派なんです。テレビを見たり。
ドキュメンタリーとか、人がしゃべっているものが好きなんです。
そういうのを見たりして過ごしてます。
――今後、どんな役柄を演じてみたいですか?
イザベル・アジャーニが出演した『ポゼッション』という映画を見たときにすごく衝撃的で。あんなにきれいな人がくずれる作品を見て、ギャップっていうか、振り幅がすごくて、ああいう演技ができたらかっこいいなって思いました。
演技に関してはぶつかっていくしかないので、それが伝わる女優になれたらいいなって思っています。
普段は服を脱いですべて演じたりするので、今回の作品に出演して、また全然違うなって思ったんです。服を着て演技をするのってすごく難しいなって。顔の表情だけとかですべてを読み取ってもらうのって本当に難しいんだなってすごく思いました。
――それでは、最後に本作をご覧になる人たちにメッセージを
驚くシーンもあったり、悲惨なシーンもあって、女の人だったら「わ~見られない」みたいなシーンもあるんですけど、見ようによっては泣けたりすると思うんです。人間の本性というか、愛というか、そんな生々しい部分を感じてもらえたらと思います。また、普段は絶対見られない葵つかさなので、そこも楽しんでもらいたいです。
PROFILE
葵つかさ
あおい・つかさ
17歳の現役高校生でグラビアデビュー。その後、AV業界へ転身し、絶大な人気を得る。
『ゴッドタン』(テレビ東京系)の人気コーナー「キス我慢選手権」でみひろに次いで2代目ヒロインに抜擢され、大ヒットを記録した映画『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』(2013)でもヒロイン役で出演。
オフィシャルサイト(http://aoitsukasa.com/)
作品情報
『ある優しき殺人者の記録』
Blu-ray&DVD 好評発売中
■キャスト
ヨン・ジェウク キム・コッビ 葵つかさ 米村亮太朗
■スタッフ
監督・脚本・撮影:白石晃士
製作総指揮:杉原晃史 イ・ウンギョン
プロデューサー:紀嘉久 チェ・ユリ
撮影監督:ソン・サンジュ
照明:イ・ソンファン
編集:キム・ムンビョ
製作:日活 ZOA FILMS
発売元:日活
販売元:ポニーキャニオン
(C)NIKKATSU、ZOA FILMS