◆また、映画「花束みたいな恋をした」の公開をきっかけに、きのこ帝国が2014年にリリースした「クロノスタシス」が再び注目を集めました。劇中で主人公の2人が「クロノスタシス」を歌うことはご存知でしたか?
事前にご連絡をいただいていたので知っていました。試写会も行かせていただいたんですけど、6年前にリリースした曲が映画館で流れているのはなんだか面白い感覚でした。どうやらここ数年、若者の間で“クロノスタシスごっこ”なるものがはやっていたらしく、それについても驚きました。
◆“クロノスタシスごっこ”とは?
缶ビールをコンビニで買って乾杯しながら歩いて、「クロノスタシスって知ってる?」「知らない」と言う会話をするまでの一連の流れのことで、それを面白がってやっている大学生くらいの子たちが結構いるそうなんです。
◆ご自身の作った楽曲が、若者の間でちょっとした現象になっているというのはどんな感覚ですか?
ちょっと照れますが面白いです。「クロノスタシス」はちょうど私が大学生のころに作った楽曲なんですが、お酒が飲めるようになって、夜遅くまで遊んだりデートしたりできる20代前半の若者にとってのテーマソングになっているのかもしれません。
◆このように昔の曲が時を越えて再び流行の的になる1つの要因として、サブスクの出現やネットの発達で、聴きたい音楽がすぐに手に届く環境が整ったことが挙げられると思います。今回「カタワレ」もデジタルリリースということですが、音楽の発信の仕方や聴き手の環境の変化について佐藤さんはどのように捉えていますか?
今はタイムレスに、そしてエイジレスに音楽が聴けるので、若い子たちのほうが音楽のライブラリーが大きいなというのはすごく感じていて。いろんなジャンルの音楽を縦横無尽に聴いているおかげで、各ジャンルへの凝り固まった偏見がないのはとても新鮮です。昔は洋楽派、邦楽派で分かれることも多かったと思うんですが、彼らはそこもシームレスに聴いてしまう世代なので、音楽作りの現場においてとても強いなと思います。音楽を作る側から見ると、才能ある若い世代のミュージシャンたちが持つ良い耳やセンスはサブスクから育まれているんだなと感じます。
◆作り手として、実際に制作現場ではどんな変化がありましたか?
ミックスチェックをする時は、サブスクに対応していくというところまで考えて、そこでの鳴りを意識するようになりました。音楽を聴く機器も、イヤホン、スピーカー、Bluetoothスピーカーなど多岐に渡るので、どこに標準を合わせるか、または逆にフラットにするのかなど、私だけでなくミュージシャンの皆さん全員が悩むポイントだと思うのですが、そこに難しさを感じることはあります。
◆佐藤さんご自身もサブスクは活用されていますか?
かなり活用しています。気になった曲を手軽に聴けるのは良いですよね。最近だと、King Gnuさんの「泡」はリリースされてからすぐ聴きましたし、コード解析をして楽しんでいました。
◆では最後にあらためて「カタワレ」を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
元気が湧いてくるような曲になったと思うので、背中を押してもらいたい時や落ち込んでいる時に聴いて、口ずさんでもらえたらうれしいです。ぜひたくさん聴いてください!
PROFILE
●さとう・ちあき…1988年9月20日生まれ。岩手県出身。B型。4人組バンド「きのこ帝国」(現在活動休止中)のVo/Gt/作詞作曲を担当。現在はソロ活動に専念する傍ら、ほかアーティストへの楽曲提供やプロデュースを手掛けるなど、多岐にわたって活動中。
リリース情報
Digital Single「カタワレ」
(フジテレビ系 木曜劇場『レンアイ漫画家』主題歌)
2021年4月8日(木)配信スタート
●photo/倉持涼 text/山村千晴 hari&make/SAKURA(まきうらオフィス) styling/入江陽子(TRON) 衣装協力/ネーム、ネペンテス
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