松重:そもそも、みんな芝居をしているという感じではなかったですからね。先ほども言いましたが、自分の名前を背負っているので、演じているのが分かると逆に浮いちゃうし、自分でも恥ずかしくなっちゃうんです。それにトモロヲさんがおっしゃったように、現場では本番直前までずーっとみんなで病気とか親の介護の話をしていて、本番もその空気のまま、「じゃあ、ここに立って銃を撃ってください」「分かりました」で銃を撃って、「はい、OKです」みたいな感じなんです(笑)。それが成立するところが、この作品のみそでもあるので、共演者の芝居については本当に記憶がなくて。みんな元気そうでよかったなと思ったくらいでした(笑)。
光石:本当にそうでしたよね。ただ、僕が驚いたのは、若い共演者の皆さん方。お芝居の素晴らしさはもちろんですが、度胸がすごいなと思って。例えば、僕が濱田岳君くらいの年齢のころに60歳前後のおじさんの中に入った時は、もうガチガチでしたから。でも、岳君も(柄本)時生君も、すっと輪の中に入ってきて、楽しそうに芝居をして帰っていく。本当にすごいなと思いましたよ。そうした若い方たちの存在感といいますか、演技もぜひ見ていただきたいですね。
遠藤:僕だけちょっと質問の答えが異質になっちゃうんですが、いいですか? 僕はフィリピンのシーンが多くて、モニカ役のメラニーさんとよく一緒にお芝居をしていたんですけど、彼女とは僕が初めて三池崇史監督の映画(「天国から来た男たち」/2001年)に出た時にフィリピンで共演しているんです。
田口・松重・光石:えーっ!?
遠藤:その後、彼女は東京に来て女優を続けていて、偶然今回のオーディションを受けて選ばれたそうで。再会した時はびっくりしました。すっかりベテランの域に達していて、演技に対してものすごく細かい女優さんになってましたし。今回の映画の中で彼女に抱き着くシーンがあるんですが、本番の時、「遠藤、ちょっと早い」って怒られましたからね。「もうちょっとゆっくり来てくれたら、私、涙流すから」って(笑)。だから僕はもう言われたとおりに演じるだけでした(笑)。